「新興国×テック」の時代はあり得るか?①~南アフリカでベンチャー企業を回る編

新興国におけるスタートアップとベンチャーをどう見るか?
8月6日から8日まで南アフリカのケープタウンとヨハネスブルグを訪問し、現地のスタートアップ企業でインタビューをする機会を得ました。今回の調査はグローバルなスタートアップムーブメントが、新興国でいかに広がりがあるのかを探るもので、JETROの支援を得て調査をしています。

前提となる問題意識は「先進国以外でのデジタルエコノミー、スタートアップの広がりが生まれているように見える。これは広く新興国経済を考えるうえで新しい論点となっているのではないか?」というものです。

筆者はここ数年、中国のスタートアップを追いかけてきました。特に2017年度はイノベーション都市として注目を集めつつある深圳市に滞在し、現地のエコシステムの形成を分析してきました。HUAWEIのような製造業分野の大企業から、テンセントに筆頭されるIT企業、さらにベンチャーの領域ではDJIやInsta360のような新興企業が成長しています。率直に言って、ハードウェアの領域では、中国のサプライチェーンを前提としたエコシステムが強力にベンチャー企業の立ち上げからスケール化までを支えているので、このようなハードウェアのスタートアップの大成功事例が中国に集中しているというのは否定できないでしょう。

また新興国ブームのなかで注目された国々のなかには資源価格の下落以降に経済の低迷にあえぐ国もあり、こうした国々の株式を対象として組成された投資ファンドも、パフォーマンスが低迷しているものが目立ちます。いわゆるニューエコノミーが、新興国のマクロ経済を救うのか、と聞かれれば、いまだにその貢献は限定的かもしれません。例えば中国経済の中に占める戦略的新興産業を2020年に15%とすることを中国政府は目標として掲げていますが、仮にこうした分類を用いた場合には、依然として経済全体に占める新興産業の規模は1割程度ということになります。

このような限定性もありますが、中国に加えてインドネシアでのGo-Jek、ケニアでのMPESAに代表されるように、分野としてはモバイル決済、シェアリングエコノミーの領域は新興国でも広がりを見せています。そして仕組みとしてはコワーキングスペースやアクセラレーター、VCといったベンチャー企業を育てるエコシステムも新興国の主要都市部に広がっています。ここから果たしてどれだけ、現地経済を変えていくようなスタートアップが生まれてくるのか、いまだに評価は定まっていないように思います。
知り合いの日本人スタートアップの動きを見ていても、国境を超えた協業や受注を見聞きします。東京に拠点を置くAIソリューションの会社がベトナムのエンジニアを活用する事例、バンコクのスタートアップが、ロシアのテックイベントに参加し、現地企業と協業する事例、そしてドローンを使ったソリューション企業がアフリカで事業を受注するなどを見聞きしてきました。

「デジタル化のパラドクス」?
新興国でのデジタルエコノミーやシェアリングエコノミーの加速を、どのように理解できるでしょうか?前提として携帯電話とそれを支える通信インフラ、クラウドインフラが普及したこと、そのような環境を活かそうとするベンチャー企業が生まれたこと指摘できるでしょう。日本でのUberやAirbnbに対する規制や反発をしり目に、むしろ新興国でシェアリングエコノミーが拡大しているわけです。

このような状況を、筆者は「デジタル化のパラドクス」あるいは「社会実装のパラドクス」と呼んでいます。もう少しはっきりいえば、「一人当たりGDPとデジタルエコノミーの普及度合いは、あまり相関しないのではないか?」という仮説です。メカニズムとして想定されるのは、例えば「後発性の優位(Advantage of backwardness)」や「イノベーションのジレンマ(とくに共食い)」といった現象です。「後発性の優位」は、おもに工業化の文脈で議論されることが多かったと思いますが、後ろからキャッチアップする経済のほうが、ある時点でもっとも成熟した技術や設備を先進国から導入できるために、成長が加速するという議論です。もう少し産業内のプレーヤーの視点を含んだ議論として考えられるのは、「イノベーションのジレンマ」で、先進国では既存の産業インフラで事業を展開する企業が多いために最新設備への導入が遅れる、という可能性があるでしょう(この点については伊神満さんの著作が、先進企業が優位を維持するような「駆け抜け」といった可能性も考慮して、より綿密な整理と分析を加えています)。

現状、デジタルエコノミーに関する統計はあまり充実していないのですが、例えば世界銀行のGlobal Findex Dataには、過去1年間に携帯電話またはインターネットを通じた金融機関口座にアクセスした人の比率」といったデータが含まれており、たたき台として、上記の「デジタル化と社会実装のパラドクス」に接近することができます。

下記の図は、横軸に国レベルの一人当たりGDPを、そして縦軸に「過去1年間に携帯電話またはインターネットを通じた金融機関口座にアクセスした人の比率」をとったものです。見ての通り、おおむね右肩上がりの傾向が見て取れ、一人当たりGDPの上昇につれて、携帯・インターネットを通じた口座へのアクセスの比率が高まります。先進国のほうが、普及が進んでいるといえ、筆者が考えているような「パラドクス」、とくに下記の図が右肩下がりになるような強いパラドクスは観察されず、否定された、と言わざるを得ないでしょう。おおむねベースラインの傾向としては、デジタルエコノミーも経済発展水準と相関するわけです。

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注:横軸が一人当たりGDP,縦軸が「過去1年間に携帯電話またはインターネットを通じた金融機関口座にアクセスした人の比率(金融機関口座を持っている15歳以上に占める比率)」。
出所:世界銀行のGlobal Findex DataおよびWorld Development Indicatorsより筆者作成。

ただ、上記の図でいえば縦軸の普及度40~60%のエリアに、かなりのバリエーションがあることも指摘できます。これらのバリエーションをどのような変数やメカニズムによって説明できるのか、今後より踏み込んだ実証分析を加えてみたいと考えています(エンジニアの数、教育水準と普及度、金融業の発達の度合い、若年人口の比率、制度の成熟の度合いといった要因がもしかしたら効いているかもしれません)。
モバイル決済の普及がさらにスコアリング、小口融資、そしてさらに様々なO2O(Online to Offline)のサービスの発展につながることを考える必要もあります。

新興国経済論の新段階はありえるか?
新興国の、少なくとも一部で、デジタルエコノミーが急激に発達しつつある現象に着目してみると、途上国、新興国経済を巡る新たな論点が浮かび上がっていると考えられます。振り返ってみれば、2000年代のBRICs論は多分に資源、そして中間層市場を論点とした議論でした。「新興国×資源」、「新興国×市場」という問題設定をする議論であったわけです。通商白書でも中間層の取り込みを目指した議論がありましたし、そしてBoP市場論もこうした系譜に位置づけられるでしょう。

さかのぼれば、1970年代から1990年代の新興工業化経済(Newly Industrialized Economies, NIEs)に関する議論は、「新興国×工業化」という側面に着目したものであり、それ以前の途上国論は多分に貧困を問題視した「途上国×貧困」の議論だったはずです(アジア経済の過去の議論については、筆者も執筆した『現代アジア経済論 「アジアの世紀」を学ぶ』の第一章で整理しています)。

これに対して、上記で議論したような新興国でのデジタルエコノミーの発展は、「新興国×テック」とも言いうるような新しい現象を提示しているのではないでしょうか。ここで言う「テック」とは、いわゆる科学技術の基礎研究に根差したイノベーションではなく、むしろ既存の技術インフラ(プログラミング言語を含むグローバルな開発環境、プラットフォーム、クラウドに筆答されるインフラ)を活用して、課題を解決していくような領域です。科学技術の基礎研究に根差した領域を「ハードテック」と呼ぶとしたら、より市場で普及が進みつつある「ソフトテック」の領域でのサービスの広がりです。

「新興国×テック」という課題設定は多分に仮説的なものです。しかし言語化してみる、そして過去の議論との対比をしてみることで、新たな領域が可視化されることもあります。このように考えて、議論としてはまだまだ未熟ですが、筆者があえて提起してみています。

途上国/新興国を巡る議論の系譜

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出所:筆者作成。
南アフリカのスタートアップコミュニティで見たもの~先進国を目指す方向性と新興国を目指す方向性、コワーキングスペースでの熱気、エンパワーメントの取り組み~
今回南アフリカにきて、ケープタウンとヨハネスブルグで、合計9か所を訪問し、現地のスタートアップ、インキュベーション施設、投資家について聞き取りができました。

詳しいレポートは後日、JETROのHPに掲載されると思いますが、以下の表ではひとまずの概況をまとめておきました。

南アフリカでの訪問先

訪問先 概要 URL
Data Prophet (ケープタウン) 工場の生産性向上のためのAIソリューション企業。ケープタウン大学出身者が2014年創業、現在30人。Python/Tensflowを使い、工場内の生産工程データを分析、改善のためのソリューションを提案。トラックエンジンの事例では、製造工程に関わる1万以上の変数を機械学習で分析、不良品率を劇的に削減した。大規模かつハイレベルな工場が顧客となるため、目下欧州をはじめとした先進国市場の開拓を目指している。 https://dataprophet.com/
Aerobotics(ケープタウン) ドローンを使ったソリューション企業。農業のなかでも木の生育状況を管理する精密農業ソリューションに目下、特化しており、画像認識技術を使って、個別の木レベルで600万本分のデータを蓄積。南アの市場の限定性ゆえに、欧州、オーストラリア市場の開拓を目指している。共同創業者がMIT出身のメカニカルエンジニアであったこともあり、創業当初はハードウェアも開発していたが、DJIの製品で十分なため、ソフトウェアソリューション領域へ特化。 https://www.aerobotics.io/
JUMO(ケープタウン) モバイル金融システムのバックヤードシステムを開発するスタートアップ。アフリカ7か国で、通信キャリアと組み、スコアリングアルゴリズムを提供。中東、アジア地域への進出も進める見込み。 https://www.jumo.world/
GirlCode 若年女性のエンジニアによる創業を支援するためのコーディングコンペ。南アのヨハネスブルグ、ケープタウン、ダーバンで予選を開催し、代表1チームをWomen in Techのイベントに送る。見学したイベントの際の参加者は30名ほどで、全員が黒人女性で、大学生が多かった。 https://girlcode.co.za/
Siliconcape ケープタウン、そして南アのベンチャーエコシステムの情報収集と発信、マッチングを行う。 http://www.siliconcape.com
Investec(ケープタウン) 南ア大手銀行のベンチャー投資部門責任者と面会。ボストンでVCに勤務経験のある人で、昨年来、南アでの投資案件を開拓中 https://www.investec.com/en_za.html
CROSSFIN(ケープタウン) 投資会社。2022にアフリカ最大のFintechの投資機構になることを目標に、各種モバイルサービスに投資 http://www.crossfin.co.za/
Aerial Monitoring System(ヨハネスブルグ) ドローン製造メーカー。アフリカ地場のニーズに対応するための森林モニタリング用、2万ドル以下かつ固定翼ドローン(4時間飛行、内燃機)を開発。製造部品は汎用品を活用して徹底的にコストダウン。 https://www.aerialmonitoringsolutions.co.za/who-we-are
EmptyTrips(ヨハネスブルグ) 物流のキャリア間のマッチングテック企業。アフリカ、中東での物流ロスを解消することを目指し、BCG出身者が立ち上げ。現在ユーザーの拡大、新製品の開発、次ラウンドの資金調達を目指して活動中。 www.emptytrips.com
Tshimologong Precinct(ヨハネスブルグ) インキュベーション施設。Wits大学、政府機関、テック企業が出資し、デジタルエコノミーの領域での起業を支援。ブートキャンプやミートアップを開催。訪問時はJ.P.Morganのブートキャンプ(12週)の開催中だった。道を挟んだところにメイカースペースもある。 www.tshimologong.joburg

先進国市場狙いの事例1:Data Prophet 
製造業向けAIソリューションを提供するData Prophetの創業者、Frans Cronje氏、28歳。機械学習を活用したサービスは色々ある得るわけですが、「現状で顧客に価値を提供できるのは、工場内の効率化だ」と考え、もっぱら工場内のソリューションに特化し、先進国市場の開拓を目指していました。

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先進国市場狙いの事例2:Aerobotics 
ドローンソリューション企業、AeroboticsのCTO、Benjamin Meltzer氏。ソフトウェアエンジニアで、「ドローン飛ばすの?何持っているの?」と聞いてみたら「いや、僕はソフト専門なんだよね」というやり取りがありました。部屋の中に一角、黒人系のスタッフが多い場所があり、聞いてみると「顧客である農家とのやり取りは黒人が主にやっているんだ」と、南アのリアリティある現状についても教えてくれました。

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新興国市場のデジタルエコノミー市場を開拓:JUMO
新興国の通信キャリアに対して、小口金融のためのスコアリングのサービスを提供しちえるのがJUMOです。2014年創業で、現在340人を超える企業に成長しており、すでにアフリカではザンビア、ガーナで市場を展開さらにパキスタン、バングラデッシュといったアジア地域でも事業展開を準備しているとのことでした。アフリカでは、MPESAを筆頭に、通信キャリアのシステム内にデポジットを預ける形でのモバイル決済が広がっているため、通信キャリアが強い顧客ネットワークに加えて各種の支払い情報を持っているたま、このデータを活用した信用スコアリングと小口融資サービスが展開できます。しかし通信キャリア側にはこうしたデータ分析の技術はない点に着目し、南アのこのスタートアップがソリューションを提供しています。南アに立地することで高いレベルのエンジニアを確保する一方で、先進国市場はむしろ見ておらず、アフリカ、アジアの新興国市場への拡大を目指している点が、南アフリカに立地するスタートアップらしい特徴だと感じました。

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インキュベーション施設の事例:Tshimologong Precinct
ヨハネスブルグのインキュベーションセンター、Tshimologong Precinct内のようす。訪問時に開催されていたJ.P.Morganのブートキャンプは「黒人スタートアップ40社を生み出すこと」を目標に、12週にわたってメンタリングが行われるプロジェクトで、オフィス内は多くの黒人企業家たちでにぎわっていました。南アではめずらしいFree Wifiを提供しており、これを目当てに、表通りには車まで集まることもあるとのこと。

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コワーキングスペースでのイベントの事例:GirlCode
ちょうど「女性月間」ということもあり、期せずして女性のエンパワーメントの文脈でのスタートアップイベントを複数見ることができました。
そのうちの一つ、GirlCodeは若年女性エンジニア向けのコーディングイベントで、南アの主要都市で予選を開催し、最終的に南ア代表1チームを、今年はアムステルダムで開催されるWomen in Techのイベントに送る、という取り組みでした。見学したのはケープタウンのお台場のような場所、ウォーターフロントにできているコワーキングスペース、Workshop17 でした。とてもファッショナブルな場所で、30名ほどの主に学生が、それぞれ3-4名のチーム分かれてアプリの開発案を練っていました。ただ依然として南アでは女性企業家、とくにテック業界ではまだまだ少数ということも事実だそうです。

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BRICs会議での議論、そして南アフリカの政策的イニシアティブ
政策的にも南ア政府はデジタルエコノミーを重視する姿勢を見せています。
筆者の訪問直前に、BRICS首脳会議が南ア・ヨハネスブルグで開催されていました(2018年7月25-27日)。
今回のテーマは「アフリカにおけるBRICS:第四次産業革命による包摂的成長と共栄のための協力」。第四次産業革命がタイトルに入っており、南アフリカのラマポーザ大統領は演説でデジタルという言葉に3回言及し、強調しています。

“Our task is to give practical expression to an economic partnership that will catapult the industrialisation of our respective economies beyond the digital age”

(July 25th, 2018, BRICS Business Forum, http://www.thedti.gov.za/brics_president.jsp)

このほかにも産業発展計画のIndustrial Policy Action Plan(2018/19-2020/21)でも“Digital Industrial Revolution(DIR)”が強調されています(http://www.thedti.gov.za/DownloadFileAction?id=1245)。

現地のベンチャー企業への聞き取りでは、政府の汚職を含む効率性の低さから、こうした政策の効果に対して懐疑的な声も多く聞かれ、むしろ民間ベースでの創業が続きそうだ、というのが現地で感じられた肌感覚でした。

期せずして感じられた中国の存在感

もう一つ、中国研究者として興味深かったのは、各所で中国に関する話がこちらから振ってもいないのにでてきたことです。BRICS会議の直後ということもあり、中国とのMOUをきっかけに、南アのハイテク産業への中国からの投資案件が立ち上がる可能性がある、という話や、ある企業では「今度ジャック・マー財団の人が会いに来る」という話も聞きました。

筆者は中国のテック企業の対東南アジア投資の状況について調べてみたことがあるのですが(「中国のデジタルエコノミーはアジアをどう変えるか?」『 タイ国情報 』2018年5月号)、どうも今後そのフロンティアはアフリカを含むものになりそうです。

「新興国×テック」の時代はあり得るか?あり得るとすれば日本企業はなにをできるのか?
「新興国×テック」の時代が来ているのか?筆者は中国ばかりを研究している人間なので、まわりの様子は見えておらず、まだ確信はありません。ヨハネスブルグでも、密集した住宅地や、公園で寝そべる若い男性をたびたび目撃し、またまともに街中を歩くことすらままならない治安状況も体験しました。テクノロジー、ベンチャー企業、ニューエコノミーといった言葉が特に空虚に感じられるような現実もまた厳然として存在しているわけです。

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ただ、また新興国経済を語る上での新しい問題群として、デジタル化が新たな論点となっていることはすでに否定できないでしょう。今後、新興国のインフォーマルセクターを、農業を、製造業を、サービス業を、女性のエンパワーメントを、開発計画を、権威主義体制を、議論する上でデジタル化が新たな論点を提起しています。

このような状況は、日本企業にも新たな課題を提起することになります。製造業を念頭に置き、そしてコストの差があるというスマイルカーブ的なフレームワークを考えると、「自国で研究開発とマーケティング、新興国で製造と販売」という分業が成り立たなくなってくるからです。

中国の深圳で生じつつある変化はまさにそうです。いままでスマイルカーブの真ん中の、付加価値の低い製造工程を担ってきた場所から、自ら開発し、自ら営業する企業が生まれてきたからです。こうした新たな状況に日本企業も対応を進めています。一歩踏み込んだカスタム化開発を中国企業と実施する事例や、ベンチャーキャピタルやアクセラレーターに出資して情報収集するような取り組みが観察されます。これまでの分業パターンとは大きくことなる取り組みです。

南アの事例で言えば、Data ProphetのようなAIソリューション企業は、先進国の製造業領域を目指していて、ソリューションプロバイダーとして候補になるかもしれません(さすがに南アだと遠いかもしれませんが)。一方でJUMOのようなアフリカと新興国に独自の営業ネットワークを持つ企業は、新興市場のモバイル決済周りの動向を把握しており、この領域に食い込んでいく上では面白い協業パートナーになるかもしれません。

筆者は、仮説としての「デジタル化と社会実装のパラドクス」、そして「新興国×テック」という問いかけは、問題設定としては、投げかけてみるに値するものだと考えています。とくに昨今の日本で、新たなテクノロジーの普及と実装が、「ソサエティ5.0」という言葉があるにもかかわらず、進みそうであまり進んでいないこの状況も念頭においています。むしろ新興国でデジタルエコノミーやそれを活用した社会実装が加速する、そのような現象があり得るのか、あるとすればなぜなのか、どのような対応が考えられるのか、引き続き検討を深めていきたいと思います。

※謝辞
この記事は、2018年8月7日、JETROヨハネスブルグ事務所で筆者が講演した「「新興国×テック」の時代が到来したのか?」の内容をもとに執筆しています。現地では根本裕之所長、高橋史さん、とりわけ高崎早和香さんに大変お世話になりました(というか引き続きエチオピアでもお世話になります)、記して御礼を申し上げます。

※記録
2018年8月8日、Version1.0. ヨハネスブルグからアディスアベバへ向かう飛行機の中で執筆。

2018年8月12日、Version1.01 誤字脱字修正。

なお、関連する着想は下記の中国について検討したものにも書いています。

「イノベーション加速都市・深圳 「新興国×テック」の時代に日本はどう取り組むのか?」『日立総研』Vol.13-1 特集「新興国に拡がるイノベーション・ホットスポット」

『電子書籍 加速都市深圳 (β版)』

関連資料:

2018年8月9日Bloomberg「アリババ会長:アフリカと「テクノロジー共有するために何でもする」」

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-09/PD6HEM6TTDS201

2018年7月31日JETRO「BRICS首脳会議が南アで開催、保護主義への反対で一致」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/07/cf7ea06120cee06e.html

Aug 24th, 2016, The World Bank, “The Importance of Mapping Tech Hubs in Africa, and beyond”

http://blogs.worldbank.org/ic4d/importance-mapping-tech-hubs-africa-and-beyond

Sep 2nd, 2015, “Is Nairobi no longer the innovation hub of Africa?”

http://www.theeastafrican.co.ke/news/Is-Nairobi-no-longer-the-innovation-hub-of-Africa/2558-2854354-view-printVersion-1olj67z/index.html

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