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深圳在外研究メモ No.48 番外編~米国ベイエリア出張でシリコンバレーを垣間見た、そして同時に社会実装での新興国の可能性を感じた

シリコンバレーと呼ばれる場所に初めて行きました。以下、その際のメモですが、誰が読むんだよ、というくらい長くなってしまったのですが、一応記録として残しておきます。

1.現地Plug and Playで講演しました

訪問の目的は現地の見学とワークショップ「ハードウェアのシリコンバレー深圳の今~シリコンバレーとのコラボレーションの可能性」での講演です。主催は現地邦人コミュニティSUKIYAKIと雑誌J weeklyでした。なので現地邦人向けのイベントです。

企画者の森俊彦さん(パナソニック)は、有志グループD-Labのメンバーで、同グループは経済産業省HPにて「シリコンバレーD-Labプロジェクト 」という自動車産業の未来についてレポートを公表しています。自動車のEV化、ネットワーク化、シェアリング、自動運転化の変化がもたらすインパクトを、シリコンバレーから伝えたレポートとして大きな反響があったものです。森さんが2017年秋に深圳に来た際に、JENESISの藤岡さんを訪ね、そこの食事に私も参加することができて、シリコンバレーで何かやろうという話になり、2018年2月に今回のワークショップ開催となりました。

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会場となったPlug and Play。

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ずいぶんたくさんの日本の大企業がメンバー(松竹梅あるらしい)になって、設備の利用、マッチングを行っているそうです。

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ワークショップの様子。100名ほどの方に参加していただきました。ありがとうございました。

講演内容としてはまず私伊藤から中国の経済とイノベーションの概況、そしてなぜ深圳に注目が集まり、どのような新ビジネス創出のメカニズムがあるのかを説明しました(私がよく深圳まわりで講演している内容で、次回2月28日はMIT HK Innovation Nodeで講演をします)。次に深圳でEMSを経営されているJENESISの藤岡さんが、サプライチェーンのリアルな実態について講演をしました。藤岡さんは昨年書籍『「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム』を刊行しており、サプライチェーンの最前線を肉眼で見ている方です。モジュール化された分業のエコシステム、それにともなう開発時間の短縮とその代価、現地での支払い・回収や検品の実態についてリアルな話が連発でした。

以下、ベイエリア訪問の間で感じたことのメモです。

2.東アジアの集積地とシリコンバレーは、その空間構成が全く違う

正直4日間の滞在ではシリコンバレー・ベイエリアについてわかるわけがないのですが、シリコンバレーに関する歴史についても学べましたし、インキュベーションセンターも見れたし、ある程度現地の雰囲気は感じられました。サンフランシスコ市内を回る時間があまりなかったのが残念だったのですが、これはまたの機会に見に行きたいと思います。

まず「ベイエリア」は東アジアの集積とは全く異なるので、全容が良くつかめなかったというのが正直なところです。「サンフランシスコ・ベイエリア」と一口に言っても、①半導体およびIT系の大企業が立地する「シリコンバレー地域」、②スタートアップ・ユニコーン企業が密集するサンフランシスコ地区、③上記二地域に更に周辺地域を含めた「ベイエリア全域」に分けることができます。(シリコンバレー地域よりサンフランシスコにユニコーン企業が多い点は文末資料の1,2を参照)。

このうちで、サンフランシスコ市を除くと、人口密度は低くて広々としています。シリコンバレーには地図(資料2)で見ると多くの企業が集中していますが、広大な面積で、街道沿いに走っていると「あ、Teslaがあるね」とか「へぇ、ここがGoogleか」という感じで、「大田区蒲田」とか、「バンコク郊外のイースタンシーボード」とか、「深圳市南山区」などといった集積地とは密度がちがい、全体像がなかなか見えてこない、というのが正直なところでした。むしろサンフランシスコのスタートアップ集積地域の方が、よりアジアの都市的な集積地に近いかもしれません。

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写真は夕方に撮影したPlug and Playの2階の屋外雑談エリア。昼食はここで食べられそうでしたし、2階でこの空のひらけ方は、中国の都市ではほぼないと思います。圧倒的に広い空間のなかに、ぽつぽつとテック企業が立地している、という感じです。

 

Join Venture Silicon Valleyのレポート(資料4)では、「シリコンバレー」をサンタクララ郡全域、サンマテオ郡全域およびサンフランシスコ市、そして近隣のアラメダとサンタクルズの一部で定義しており、その面積は4801平方キロメートル、人口は307万人なので、平方キロ当たりの人口密度は639人。深圳、東京、サンフランシスコが人口密度6000-7000人/平方キロなので、同639人の「シリコンバレー」がいかに広々とした地域なのかがわかります

面積
(平方キロ)
人口
(万人)
人口密度
(平方キロ当たり人)
データ出所
「シリコンバレー」

(注:サンフランシスコ市を含む)

4801 307 639 Silicon Index 2018
サンフランシスコ市 121 85 7,025 Wikipedia(2014年データ)
サンフランシスコ・ベイエリア全域 18000 756 420 Wikipedia(2014年データ)
深圳市 1996 1190 5,962 Baidu(2017年データ)
「大湾区」 43300 6520 1,506 Baidu(2016年データ)
東京都 2190 1374 6,274 Wikipedia(2017年データ)
関東地方 32423 4328 1,335 Wikipedia(2017年データ)
注:「シリコンバレー」の定義はJoin Venture Silicon ValleyのSilicon Index 2018の定義により、サンタクララ郡全域、サンマテオ郡全域およびサンフランシスコ市、そして近隣のアラメダとサンタクルズの一部。「サンフランシスコ・ベイエリア」は、アラメダ郡、コントラコスタ郡、サンタクララ郡、サンフランシスコ郡、サンマテオ郡、ソノマ郡、ソラノ郡、ナパ郡、マリン郡を含む。深圳市は同市の行政区画をそのまま指し、「大湾区」は広州、佛山、肇慶、深圳、東莞、恵州、珠海、中山、江門の大陸9市に香港、マカオを加えた地域を指す。

出所:筆者作成。

もう一点指摘できるのは、ベイエリアの人口面での人の少なさと、もう一方での多様性(およびその分断)です。ベイエリア全体の人口は800万人弱です。これは世界最高の密度を誇る中国沿海部や東京に慣れている感覚からして、なので、そこと比較するなという話なのかもしれませんが、100万人都市が100個あるような中国を研究している身からすると、平日のカリフォルニア大学バークレー校を歩いていても、「なんだか人少ないよなぁ」と感じました。

ただ、人々の多様性は明らかで、Silicon Valley Index 2018(文末資料4)によれば、「シリコンバレー地域」の人口の34%が白人、33%がアジア系(中国とインドを含む)、そして26%がヒスパニックラテン系、黒人・アフリカ系が2%となっています。ベイエリア南部(South Bay)のあたりではアジア系がとても多く、インド系、中国系と思われるエンジニアをよく見かけました。もう一方で、「シリコンバレー地域」には含まれていないオークランド周辺には黒人・アフリカ系が多く、まったく「シリコンバレー地域」とは異なる雰囲気でした。

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ベイエリアの電車であるBARTの路線図。しかし現状の「シリコンバレー」のコアエリアの一つであるPalo AltoのあたりにはBARTは通っておらず、とくに東部側の電車には「シリコンバレーの中の人」がほとんど乗っていないのではないか、と感じました。まったく別コミュニティのための交通手段というのが現地での印象でした。

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BART。Oakland周辺で乗っていると、車内でマリファナ(カリフォルニア州では合法)を吸い始めるお兄さんがいて、その人に対してほかの乗客が中指を立てるというような車内の雰囲気でした。そこは「ベイエリア」であっても、Silicon Valley Indexの定義する「シリコンバレー地域」ではないところでした。

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カリフォルニア大学バークレー校のキャンパス。

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Old Palo AltoにあるSteve Jobsが住んでいた家(記事ですぐ見つかります)。すぐ近くにMark ZuckerbergやLarry Pageも住んでいるらしく、今でもこのエリアに世界トップテンの億万長者が数人住んでいるようです。

 

3.Computer History MuseumがほぼInnovation History Museumだった

シリコンバレーのコア地域の一つ、Mountain Viewにある、Computer History Museumでは、シリコンバレーがいま筆者が滞在する深圳とは根本的に成り立ちが異なる点は改めて強く感じました。シリコンバレーの成り立ちはその初期段階から最先端技術の開発で始まっており、①第二次戦時期からの通信技術の研究開発、②Stanford Research Parkに代表されるスタンフォード大学からの創業、そして③Shockley SemiconductorやFairchild Semiconductorといった半導体開発製造への発展、④ベンチャー投資の集中化とパーソナルコンピューター産業の形成、⑤インターネットの台頭といった段階に分けることができそうです。①の通信技術・計算機器の開発(通信の傍受やロケット・ミサイルの弾道の算出等)から、世界最先端を行く技術開発でした。さらにさかのぼって、スタンフォード大学の創設者Leland Stanfordのゴールドラッシュ時期の鉄道事業まで戻ると、未開の地の開拓という、ちょっと深圳ぽい話にはなりますが…。

まさに通信技術、計算機器、ストレージ、プログラミング言語、インターネット技術といったコンピューターを巡る技術革新の歴史を展示しており、イノベーション博物館とも言えそうな内容でした。そして、日本は東芝のフラッシュメモリーの開発やSonyの端末などで少し顔を出すのですが、中国は中華系の技術者を除くと一切登場しません。これは如何にコンピューターを巡るこれまでの開発が米国と欧州で先行したかを示していると思います。ただ、今日これだけ大量の電子製品の製造を実際に行っているアジア地域に一切言及がないことは、「開発者以外が言及に値しない」ということは頭では理解できても、すこしの寂しさを感じました。

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まずはそろばんや計算機(Calculator)から展示が始まりました。

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軍事施設用の弾道の計算・表示機器。こういった軍事産業との関係でのコンピューター産業の発展がよくわかりました。

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Fairchild Semiconductor、そしてIntelで活躍したMooreによる半導体性能向上の予測「ムーアの法則」に関する展示。

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パーソナルコンピューターも、Appleなどだけでなく、いかに多くの企業が試作をしていたのかがよくわかりました。

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プログラミング言語の分岐と継承を示すツリー。

 

4.シリコンバレー・ベイエリアと深圳は別物、「ハードウェアの」という限定付けはけっこう重い言葉

深圳は最近では「ハードウェアのシリコンバレー」とも呼ばれるわけですが、深圳は40年前の改革開放によって産声をあげ、一貫して委託加工貿易を基礎にして成長を遂げてきました。このブログでも盛んに取り上げて来たとおり、近年ではエレクトロニクス産業やニューエコノミーの成長は著しく、HuaweiによるKirinチップの開発や5G通信設備の開発、TencentによるスーパーアプリWeChatを中心とするプラットフォームビジネスの展開、そしてBGIのような世界最大規模のゲノム解析ビジネス、DJIに代表される新セグメントを切り拓く世代企業の台頭など、驚くべきスピードで街全体が変化しつつあります。下請け加工から、徐々に開発と販売まで現地企業が担うようになってきたわけです。しかしながら、現状では引き続き、深圳市を支えるのはスマホ・タブレットを中心とする電子製品サプライチェーンを核とするハードウェアのビジネス創出・加速メカニズム(エコシステム)です。シリコンバレー・ベイエリアにも深圳にも、VCは存在し、アクセラレーターは存在し、コワーキングスペースが存在し、似たようなレイヤー(例えばAI)のスタートアップも存在するわけですが、企業の成り立ちとエコシステム全体を特徴づけるビジネスは大きく異なるといわざるを得ません。

「ハードウェアのシリコンバレー・深圳」はWIREDの動画によって広がった名称で、ラスベガスのCESに深圳の企業が大挙して出展していることを見るだけでも、ハードウェアスタートアップがこの街から大量に創出されていることを示しています。「ハードウェアのシリコンバレー・深圳」は、とても便利な言葉ではありますが、「ハードウェアの」という限定付けが想像以上に重い言葉なのだ、という点を今回のベイエリア訪問で感じました。安易にシリコンバレーと並置してわかった気になるのは危険なので、もしかしたら、こう呼ぶのはやめたほうがいいかもしれません。

 

 

5.「社会実装先進地域」はどこになるか?~深圳とシリコンバレーの比較、そしてそれを超えて考えたいこと

ただ、同時に深圳はハードウェアから半歩は踏み出しています。この点は大事だと思います。踏み出しているというのには2つの面が含まれていて、第一がTencent, BGI, Malongのような非製造業系企業の台頭をどう評価するのかという点、第二が以下に書く「社会実装」における先進性です。

たかだか四日間のベイエリア滞在だったので誤認もありそうですが、現時点で以下のように感じています。それは、正直、新サービスの開発はさておき、その導入と社会実装では中国や深圳のほうが普及度が速いのではないか、という疑問です。シリコンバレー・ベイエリアはたしかに言うまでもなくApple, Google, Facebookがある時点で突出した開発地域なのですが、ただ、正直新サービスの社会実装はあまり進んでいないのではないか?深圳、中国、場合によっては新興国の方がこの面で進むことはありえるのではないか?、という疑問です。

1)前提:新アーキテクチャーが導入された方がサービスが向上する

まず大事なことは、ウェブを活用したシェアリングエコノミーといった新サービスがもたらす新たなアーキテクチャーは、サービスの質を向上させる、ということです。

アーキテクチャーの意義については、高須正和さんがすでに記事「中国の自転車シェアブームの裏には社会の「実験と激動」があった」でレッシグの議論を引用して、規範とルールに対して、中国ではアーキテクチャーと損得での人(およびサービス)のコントロールが進んでいると議論しています。

私は今回、Uberを発祥の地であるベイエリアで17回合計400ドル弱乗ったのですが、とても快適でした。車内に「☆5つお願いします。☆4つをつけられるともう運転手としてやっていけません」といった張り紙していたりして、評価システムによってサービスの質が向上していることを感じられました。

現地でも議論したことですが、一昔前までは「日本のタクシーはサービスがいいね!」と言われていましたが、いまはもしかしたら日本の街で拾ったタクシーと、海外で普及したUberを比較した場合、日本のタクシーの方がサービスが悪いということはあり得ることだと思います。中国の場合にはDIDI(滴滴出行)が圧倒的シェア1位としてライドシェアを普及させています。Uberと同様にドライバーの評価システムのアークテクチャーが入ることで機会主義的行動を抑制し、行先を先に入力することで意思疎通の問題点を解消し(場合によっては言語的にも)、そして決済もプラットフォーム経由にすることにより降車時のタイムロスもありません。今や中国でもDIDIで車を呼んで対応がひどいということはほぼないわけで、今回Uberも同様の効果があると体感できました。

マッチングの仕組みができて、評価のアークテクチャーが入ると、サービスの質が良くなるということです。したがって、マッチングプラットフォームを導入するスピードが速い地域で、特定のサービスの質が向上するということになります。なお、アークテクチャーが入ってないところはまったく変わりません。アメリカでも中国でも、電車内マナーなど、アーキテクチャーが入っていないところでは、どうしようもないことも起きます(ベイエリアのBART車内でマリファナとか、中国の地下鉄のなかで子供が小便とか)。あくまでもアーキテクチャー圏内でサービスの質が向上するのであって、「地域のマナー」とかが上がるわけではありません

 

社会実装先進地域(あるいは都市)という概念があり得るとすると、こういったアークテクチャーがより速くより多く入った地域の方が、いいサービスになります。少なくとも消費者の満足(効用)があがります。

 

2)比較:各地を歩いて感じたこと

今年度に主要都市で言うと深圳と中国以外では、東京、バンコク、ベルリン、ワシントン、サンフランシスコ・ベイエリアを訪問できました。電子決済、ライドシェア、宅配サービス、その他のシェアリングエコノミーの各面で、むしろ中国のほうが少なくとも普及は早いことは感じられました。WeChat PayやAlipayがもたらしているのは、プラットフォーマーの側への決済情報の集中だけでなく、小売り店側としてもNFCやRFIDの読み取り機といった設備が不要にもかかわらず電子決済ができるという新たな商環境です。自転車のシェアリングはいまだに赤字体質で、今後どのような展開になるか予断をゆるしませんが、黄色いOfoの自転車の端末にはHuaweiのNB-IoT端末が導入されることで低消費電力での通信を実現しており、新たな技術の社会への導入という面でも注目ができます。

これらのシェアリングエコノミーの大前提となる技術や端末の多くは先進国で開発されてきたもので、スマホにしろ、クラウドにしろ、新興国で開発されたものではありません。ただ新興国にベンチャーエコシステムができると、社会実装はむしろ新興国で加速する、という可能性はあり得るのではないでしょうか。若い人口構造、一定のベンチャー企業とエコシステムがある場合、Digital Leapflogともいえる新興国でのIoT技術の急普及がいま起きているのかもしれません。

3)追記

Sequoia CapitalのチェアマンであるMichael Moritzが1月18日にFinancial Timesに”Silicon Valley would be wise to follow China’s lead”(シリコンバレーは中国をやり方を参考にすべきだ)という記事を書いていて、そのなかで中国のスタートアップにおける激しい働き方について言及しています。これに対してHAXのBenjamin Joffeが2月11日に”What Sequoia’s Mike Moritz doesn’t understand about startups in China”というレスポンス記事を書いてて、「中国はもともと成長経済なので楽観的であるし、また人材の供給も多くて、競争も激しいからこういった状況が生まれている」という指摘をしていて面白いですね。Moritz氏の議論にはベイエリアでは小さいスタートアップのときは厳しい労働環境を要求できても規模が大きくなるとすぐにそれは不可能になるとのことで、日本のベンチャーの社長さんからもそれに近い話は聞いたことがあります。米国で、そして中国でも盛んなベンチャー投資をしているSequioaの代表が中国のスタートアップベンチャーの激しい働き方をある意味で賞賛しているのですが、たしかに深圳のエンジニアの働き方をみても、それははげしく、今後5-10年で何らかの差が現れてくるかもしれません。

 

 

参考サイト・資料:

1)Freshtrax記事「驚きの真実 〜その多くが実はシリコンバレー発ではない〜」:

http://blog.btrax.com/jp/2015/01/27/sf-sv/

2)Silicon Vallet map:

http://www.siliconvalleymap.org/

3)Silicon Valley: The History in Pictures:

https://www.amazon.com/Silicon-Valley-Pictures-Mary-Wadden/dp/1467572454

4)Silicon Valley Index 2018:

https://jointventure.org/images/stories/pdf/index2018.pdf

5)高須正和氏記事「中国の自転車シェアブームの裏には社会の「実験と激動」があった」:

http://diamond.jp/articles/-/133742?page=2

6)Michael Moritz, “Silicon Valley would be wise to follow China’s lead”:

https://www.ft.com/content/42daca9e-facc-11e7-9bfc-052cbba03425

7)Benjamin Joffe, “What Sequoia’s Mike Moritz doesn’t understand about startups in China”:

https://venturebeat.com/2018/02/11/what-sequoias-mike-moritz-doesnt-understand-about-startups-in-china/

 

 

深圳在外研究メモ No.47 番外編~ベルリン出張で東西冷戦と重い現代史を感じる

いくつか出張に行ってきましたので、忘れないようにメモしておきます。今回はベルリン出張編。

1月にベルリンにあるSWP(英語ではGerman Insititute of International Politics and Security)にて「一帯一路」に関する会議が開催され、発表してきました。東アジアの多くの国々から、それぞれ一人ずつ呼んで、各国の一帯一路への反応や対応について報告しあうというワークショップです。

各国が、それぞれ置かれてきたより長期的な外交関係のもとで、新しいイニシアティブである「一帯一路」が入ってきたときに、カンボジアにように積極的に組むところ、インドネシアのように警戒感もありながらも協力するところ(インドネシアはかつて共産党によるクーデーター未遂という過去がある)、フィリピンのように特定のリーダーシップのもとで劇的な方針転換が進むところ、ベトナムのように海洋問題を警戒しながらも協力は否定しないところ、などなど色々なパターンが観察されていることがよくわかりました。

私は日本について”China’s Belt and Road Initiative and Japan’s Response:From disregard to conditional engagement”と題して報告しました。下記の図は国会(衆議院、参議院)のデータベースからAIIB(アジアインフラ投資銀行)、一帯一路に言及している委員会の数をカウントしたものです。2015年3月にAIIB参加を巡る議論が白熱した後に、国会閉会の影響もあって、一度落ち着き、2016年以降には徐々にAIIBだけでなく「一帯一路」も含めて議論がされるようになっています。議論の中身とともに、2017年後半以降、日本政府は一帯一路に条件付きで協力を表明し、同時にインド太平洋戦略が重点化しているので、そのあたりについてはとくに重点的に報告しました。現地や参加者の関心も高かったと思います。

図 衆参両院におけるAIIBと一帯一路に言及した委員会の数

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出所: 国会データベース(http://kokkai.ndl.go.jp/)より筆者作成。

 

以下は現地での写真。

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SWPはベルリンの西南部、東西冷戦の時期には米国が統治していた地域にあります。2000年代に首都機能がベルリンに移転してきたときに、ミュンヘンからベルリンに移転してきたそうです。すばらしいホスピタリティでした。

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東西冷戦時代の壁にグラフィティが書かれたイーストサイドギャラリー。1989-1990年の壁崩壊後に描かれ、最近再度修復されたとのこと。あいにくの寒波で、凍える天気だったので、あまり観光はできませんでした。

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壁があった当時、壁を越えようとして死亡した136名を追悼する壁画。このほかにも数千名が逃亡を試み、逮捕されていたそうです。

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東西冷戦時には、西ベルリンと東ベルリンをつなぐターミナル駅であり、厳重な監視体制がしかれていたというFriedrich street駅。いまは風通しの良い構造になっていますが、当時の写真や模型を見ると、要塞のような構造になっていました。

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森鴎外の舞姫で出てきてイメージできなかった「ウンター・デン・リンデン」の意義がようやくわかりました。ブランデンブルグ門に接するベルリンのメインストリート。いま最も巨大で目立つ建物がロシア大使館であるという事実にもまた驚きました。

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メインストリート、ウンター・デン・リンデンのドイツ歴史博物館。重い重い現代史を、多くの人が子供を連れて、家族連れで見ていました。ヒトラーの死亡記事、そしてソビエト連邦旗がベルリンに翻ったときに写真。出張中に大英博物館館長だったNeil MacGregorさんが書いたGermany: Memories of a Nationを読んでみたのですが、冒頭でドイツについて「偉大な栄光と深いトラウマを両方抱えている国は少ない」と指摘して始まり、とても勉強になりました。ホロコーストに関する展示ももちろんありました。

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ウンター・デン・リンデンにあったマイクロソフトカフェ。スタートアップの街・ベルリンの雰囲気がすこしだけ感じられました。

深圳在外研究メモ No.46 TEDx珠江新城で大湾区(ビッグベイ)の個性的なストーリーを聞いた編 ~シャンザイ王、名創優品(メイソー)、広州富力…

2018114日、広州市のグランドハイアットホテルで開催されたTEDx珠江新城に高須正和さん(ニコ技深圳観察会/スイッチサイエンス)と一緒に参加しました。

公式サイトはこちら

テーマは「湾区製造 City Future City Now」。英語に直訳するとMade in Bay Areaになるはずです。広東省の中核地域はこれまで珠江デルタと呼ばれてきましたが、昨年来、「大湾区」という構想が胎動しています。サンフランシスコ・ベイエリア、東京ベイエリアに匹敵する経済都市、とくにイノベーション活動を内包する都市圏をつくる構想で、中央政府も同構想を認可しています。中山大学の友人から何年か前から「東京ベイエリアについて教えてほしい」という話があったので、数年前から構想があった計画のはずです。TEDxもこの政策的トレンドにそったテーマ設定をしているように見せていますが、中身は相当オリジナルな話ばかりでした

自分はTEDx初参加だったのですが、高須さんは「エンターテイメントとしてのTED」という記事も過去に書いているくらいTEDに詳しかったので、色々教えてもらいながら参加しました。

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ポスターの中でも圧倒的な存在感を放つ「中国山寨王(中国コピー王)」のロビン。

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1.会場の外にも展示~Mobike, NIO, スマートゴルフ練習場…

TEDxのイベントに参加するのは初めてだったので、比較できないのですが、まず会場の外の展示もキャラが濃かったです。Mobikeが、これまた城中村の駐車ステーションプロジェクトを、そしてEVベンチャーのNIOが実車をホテル1階に展示していました。あとはいつつぶれるかわからないけど、クラブにしか見えないスマートゴルフ練習場とかもありました。

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2.登壇者の話も面白かった、特にシャンザイ王とメイソウ

 登壇者と話の概略は次の通りでした。

1)婷(刺繍職人。広東語でプレゼン)

 広州の「戏服」という京劇(正確には広東では粤剧という)用の刺繍衣装を、1990年代生まれの登壇者が作り、それをさらに若者に広めていったという話。アニメフェスにいって、普通のコスプレをしている若者から「え~この刺繍すごーい」と言われたというあたりの話が面白かったです。1000人に見てもらったら、ひとりくらい本当に興味を持ってくれて、伝統的刺繍を学んでくれるようになったとのこと。

 

2)梁玉成(広州アフリカ村研究者、中山大学)

 広州にあるアフリカ人集住地区(小北)の研究者である梁先生。データから、白人に対して寛容なひとは、黒人に対しても寛容なこと、そして経済発展にともなって海外から移民が来るようになることを提示。そのうえで、「我々は先進国になったにも関わらず、途上国のメンタリティのままだ。ビッグベイエリアがニューヨークのような活力のある地域になるためには、移民を受け入れるようにならねばならない」、と強い言葉で訴えていたのが印象的でした。

実証研究を引用して、一人当たりGDPが2万ドルを超えると、地域から出ていく人よりも、中に入ってくる移民が増えることを紹介。広州はすでにこの段階を超えている、と指摘して、聴衆に移民がくるのは不可避だと提示。

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結論的なスライド、「先進国の特性と途上国の国民メンタリティを調整するのが急務」。

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3)(駐車場・シェアリングサービス)

 中国ではシェアリングビジネスが盛んだが、シェアサイクルも新たな自転車を大量に撒き、同時に大量の浪費ももたらしていると指摘。「本物のシェアリングサービスは既存のストック資産を有効活用することになる」、貴重な資産であるにもかかわらず十分にマッチングされていない駐車場のシェアリングプラットフォームを開発し、運用した実績を話していました。大きなビルの運営会社は、収入の増加になりえるので、データを示せば徐々に説得ができたそうです。

 特に面白かったのは、サービスを展開する上で、駐車場の入り口にいる「保安大」、ようするに保安員が、パーキングしたい自動車からリベートをもらえなくなるために抵抗した、という話でした。どう解消したかというと、自動車をこのサービスに誘導したら、QRコードで把握して、1台を誘導する度に5元をボーナスとして提供するというもの。ある保安員は一か月に8000元を稼いだそう。 

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4)彬(シャンザイ王。Meegoo PadCTO

 シャンザイ王(コピー製品王)・ロビンの登場。すでに前にこのメモで書いたことに近い内容でしたが、「シャンザイ王って呼ばれ、正直、嫌だなと思う気持ちがあった。最初は海外のメディアにいわれたんだ。でも彼らが見つけた、アイパッドのシャンジャイ(コピー製品)は、ぶっちゃけ自分が作ってきたジャンザイ製品のうちの一つに過ぎないんだよ。シャンザイは一つのスピリットだ。草の根で奮闘するということを示していて、日本だって、韓国だって、コピーして発展してきた。発展するためには必要な段階なのだ。でも単純な製造で食っていける時代は終わった。エンジニアをUberのようにマッチングするようなことも始めたし、それから海外のメイカーをサポートすることも始めている。アフリカにも行って、製造をし始めている。一帯一路という「対外投資ボーナス」があるこのタイミングで、外にでて、民族産業を発展させなければならない」という、ならではのストーリーを話していました。

 当然、会場も一番の盛り上がりになって、プレゼンが終わったときには歓声があがっていました。 

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ロビンと高須さんとの写真。Ideas worth spreadingで#中国山寨王#って、もうパワーワード過ぎて何も言えません。

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5)成金名創優品、ブランディングマネージャー)

 これがまた濃かったです。メイソウ、知る人はすでに知っている、なんというかユニクロのような店舗デザインなんだけど、ポップな日用品を開発製造している名創のブランディングマネージャーによるトーク。ロケットニュース曰く「名前がダイソーのもじりに見え、ロゴはユニクロのよう、品揃えは無印良品を彷彿」。

 プレゼンによると、すでに全世界60か国に展開し、今では売上は120億元に達しているそう…。その背景には、当然成功の要因がある。彼女が最も強調したのは、研究開発部隊が300人いて、デザインとしては「日本式+北欧式」の融合、そして製造の面では中国のサプライチェーンをダイレクトにコントロールすることでコストダウンする、と言う話でした。

設計理念は「日本式美学+北欧風」。「シンプルで、自然で、生活の本質に帰る」設計とのこと。

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うまく取れていないのですが、日本設計チーム、韓国設計チーム、北欧設計チーム、そして中国設計チームの合計300人で、1億元(17億円)を投入して設計開発しているそうです。

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曰く、「80%の企業は販売ルートのことを考えている。でも成功の要因は製品の開発にある。広告費なんて基本的にゼロだ。製品が良くて、有名なショッピングモールに入っていれば、自然に人の目に触れるし、消費者は良いものは良いものだとわかる」。 

 

スライド。60か国に進出、グローバル2600店舗、毎月80-100店舗増、2017年の売り上げ120億元(2040億円)。あとで話しかけて聞いたら、グローバルで従業員数が店舗こみで3万人、本社に3000人いるとのこと。このあたりのデータ、とくに売り上げはさすがに盛っているような気もするのですが、公式HPにも同等のデータが掲載されていますね。どうなんでしょうか…。

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設計開発にずいぶん時間をかけて作り上げたと紹介されていた水ボトル。これは買って飲んでみたい。

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コストカットの事例を紹介したスライド。それほど特別なことを言っているわけではなく、買い付け量を確保することで買い付け価格を抑え、そして中間ディーラーをカットする。他社では29元のものが、10元で提供できる。

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(ちょうどメイソウのモバイルバッテリーを持っていたので、登壇者の成ブランディングマネージャーに声をかけて連絡先を交換しました)

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6)伟聪(新材料開発者)

  すいません、たぶんすごい話だったと思うのですが、寝てしまいました。

7)LED関連材料の開発者およびサプライチェーンマネージャー)

 LEDのバリューチェーンの改善の話。  

8)王存川(外科医、肥満対策の手術を中国で一番実施)

中国の肥満患者向けの外科医によるトーク。もちろん面白かった。

9)黄盛(広州・富力サッカーチーム 、副総裁。広東語。)

  広州の有力サッカーチーム、富力の幹部。いかに人材を中で育てているか、そしてファンとのコミュニケーションを大事にしているか、を語っていました。足が不自由な子供ファンのためにバリアフリーの設備を導入した話はとてもいい話でした。

 

3.個性的で、なおかつグローカルなストーリー

正直、シャンザイ王やメイソウのブランドマネージャーのプレゼンが聞けるイベントはなかなか無いので、興奮しながら一日過ごしました。この大湾区には、それこそイノベーションならTENCENTでもHUAWEIでもいくらでも有名企業があるなかで、「あえてシャンザイ王とメイソウを選ぶ」キュレーターの嗅覚はなかなかチャレンジングだと思います。メイソウもユニクロやダイソーのシャンザイだと呼ばれてきたわけで、「シャンザイ王ロビン→メイソウ・ブランディングマネージャー」という流れは強烈でした。

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しかしこういった企業家がいることは事実だし、また大湾区から生まれて来た草の根のビジネスの姿を伝えています。また、メイソウの製品はモバイルバッテリーですら、品質が信頼でき、なりふり構わない量的な成長だけではない、品質管理や設計開発の面での脱皮が内在していることは否定できないと思います。そしてシャンザイ王ロビンは製品を輸出するだけでなく、エチオピアに工場を建て、メイソウは60か国に進出。「大湾区」という地域から国外に打って出ているわけです。

たしかに、この地域でよく開催される展示会やベンチャーイベントでは、「有力企業のプレゼン」を聞くことはできるのですが、基本的にはそれは企業の宣伝です。それに対してシャンザイ王ロビンのプレゼンタイトルが、「中国はシャンザイから何を学んだか」だったことに現れているように、より広い論点に言及していたのが、個性的でした。

話者の選択も、バラエティに富んでいて、大湾区で起きつつあるちょっといい話をざっと聞けたので、行く価値があったイベントだったと思います。TEDというと、かっこいいプレゼンをする場所というイメージが先行していたのですが、実際に参加してみるとまた新たな発見があるものです。東京大学でもTEDxをやっているので、次回はぜひ見に行ってみようと思います。

深圳在外研究メモ No.45 深圳建築ビエンナーレで城中村・南頭古城を訪問編 ~「共生する都市」、開発業者、タオバオ村の未来図

2017年12月15日から2018年3月15日の会期で、深圳建築ビエンナーレが開催されています。テーマは「城市共生」(Cities Grow in Difference)、訳すとすれば「共生する都市」でしょうか。

正式名称は「2017 深港城市/建築双城双年展(深圳)」2017 Bi-City Shenzhen Biennale of Urbanism / Architecture (Shenzhen)です。すでに7回目の開催で、日本語でも調べると過去の見学レポートが見られます。

2008年のレポート(第1回):月刊旧建築trystero.exblog.jp

2009年のレポート:アジアと建築ビエンナーレを考える五十嵐太郎(東北大学教授/建築史、建築批評)

2014年のレポート:AXIS 深圳 都市と建築のビエンナーレ

いずれも建築関係の専門家によるレポートで、自分は全く建築はわからないですし、そもそもビエンナーレが「2年に1回開かれる美術展覧会のこと」ということすら知りませんでした。建築は門外漢ですが、Learning from Shenzhenを編集しているMaryさんのワークショップに参加するために現地に二度足を運び、中国研究している人間から見て、非常に面白かったので、つらつらとメモしておきます。

 

1.会場が歴史もある「城中村(Urban Village)」

会場は南山区の南頭古城。SNS大手のテンセントの現状の本社ビルから西に20分くらい歩いたところです。歴史的には晋の時代にまでさかのぼれる城壁のある小さな街です。下の写真は南頭古鎮の南側城門です。

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深圳市では1970年代末の改革開放以降に経済特区に指定されて急激に移民人口が増えました。深圳にかぎらず、1980年から1990年をピークとして、移民たちは都市の周辺部に自らの生活を成り立たせるための集住地区を作りました。北京には「新疆村」や「浙江村」といった特定地域から出稼ぎ移民が集住した「村」が生まれたことが知られています。

実は私の卒業論文は北京の浙江村を題材としたものでした。参考文献としたのは中国の社会科学院の王春光先生の本で、北京の天安門広場から南にいったところにある大紅門エリア(浙江村)になぜ温州人が集まり、そしてどのような生業で暮らしているのかを資料と現地訪問から調べた、というようなものでした。正直当時は中国語がろくにできなかったこともあり、フィールドワークといっても、街を歩くくらいでした。浙江村の場合には浙江省の温州市という商業精神の強い地域の人が、お互いに集まり、ときに北京市の強制的な「整理整頓」に遭いながらも、アパレル産業を発展させ、一時期は北京でも有数のアパレル製品の生産流通拠点を作り上げていました。

中国の都市化のなかで生まれた、立地としては都市にあるけれども、なかの住民の大多数は田舎から出てきて、農村戸籍を持ち、人的ネットワークもいわゆる都市とは異なる空間。都市の中の「村」が「城中村」です。

 

2.なぜ「城中村」でビエンナーレなのか?

ではなぜ建築ビエンナーレが「城中村」で開催されているのでしょうか?公式HPには中国語と英語でその狙いがずいぶん書かれているのですが、多少飛ばしながら訳すると以下のようなことが書かれています。

今回の深圳ビエンナーレは「共生する都市」を主題としています。「共生する都市」という問題を提起しているのは、単に今の世界や中国の都市化の現実を批判的に解読するのではなく、同時に一種の異なる未来都市の景色を提起するという試みでもあります。

我々がいま生活しているのは、危機に直面し、そして不確実性に満ちた世界です。経済発展の不均衡、文化の衝突、価値の行き違い、矛盾の叢生。当時にグローバリズム、消費主義、メディアの覇権は既存の秩序と生活を不断に再構築しています。

中国を振り返ると、現代の都市化の進展は権力と資本の間で30年余りの高度発展を遂げました。もともと存在したソビエトロシア式の現代主義と市場に主導された徹底的功利主義の二重モデルの駆動のもとで、我々の生活する都市は例外なく単一のものへと変化していきました

中国の一線都市(注:北京、上海、広州、深圳を指す)、それから二線、三線都市でも、さらには郷鎮でもますますその傾向は明らかです。生活品質を高める「都市の更新」は往々にして、これまで蓄層されてきた豊富な歴史的街区や多様で雑柔な都市生活を清掃し、グローバル化と商業化の標準的配置に置き換えました。都市の紳士化は、光沢ある表面のしたで社会的分化、そして生活の味に欠ける都市の病状を作り出しました。

このような現実の直面し、我々は一種の多元的な「共生」の都市モデルを呼び越したい。

我々は自覚的に、単一で理想化された未来図に反抗すべきだと考えます。なぜならば、都市そのものとは、高度に複雑な生態系であるからです。今日の都市は、多元的な価値体系の均衡の結果であるべきだし、人々が身を寄せる世界であるべきだし、心の中にある異なる夢の高度な異質性と差異化の文明的共同体であるべきです。都市は本来、あらゆるものを包容し、和して同じないものであるべきです。都市の生存と繁栄は最大限の「差異性」、「異類」、「他者」の包容と文化的理解に基づくはずです。

我々は”Cities, Grow in Difference”、(「都市は、異なるから生まれる」)の中国語訳を「城市共生」として、都市の中の複雑な文化、社会、空間と日常生活の多層的な共生を強調します。都市とは多重な身分と視角の重なりであります。「混雑と共生」をもって、我々は都市概念の多元、差異、攪拌、そして抵抗へ向かうべきだと強調します。

(省略)

クリエイティビティと想像力は、都市の中で不断に新たな居場所を探します。今回、彼らは展覧会の主会場に来ました。「南頭古城」です。南頭古城の管轄区域は晋の時代から今日の香港、マカオ、東莞、珠海などの広大な地域を含みました。1840年のアヘン戦争以降、香港は新安県から切り離されました。100年の間、この古城は不断に消滅し、そのかわりにまわりの村が膨張しました。深圳の都市化の加速に伴って、最終的には都市が村を包囲し、そして村がまた古城を包含するという、都市と村の入れ子構造になりました。古城は時に隠れ、時に現れるという複雑な構造、つまり「城の中に村があり、村の中に城がある」という状況をつくりました。

南頭古城は現代の「城中村(アーバンレッジ)」と歴史的な古城の高度な融合であり、1700年の歴史を持つ遺跡でもあり、なおかつ都市化のなかで自発性と異類性を持つ現代的空間でもあります。ビエンナーレの主会場として、このまちの全貌は、近代から足元の都市と村の変化を示す豊富な空間的サンプルです。

中国と西洋の共生、古今の共栄。

全世界で唯一の「都市と建築」を主題とし、都市と都市化の使命に注目してきたビエンナーレとして、本展示はいまの中国の一人一人が注目する幸福と災い(注:原文で「休戚」、うまく訳せない…)に関わる都市を議題にします。

世界の他のビエンナーレと異なるのは、会場で展示するのみならず、同時に20世紀と21世紀で最も激烈な都市化が進んだ現場に身を置くことにあります。深圳から珠江デルタへ、都市そのものが最大の展示会場であり、同時に事件の発生現場です。ビエンナーレは最も緊迫した都市問題の交流のプラットフォームであり、同時に都市建築と日常生活の実質的な改善の実験場でもあります。

城中村は現代都市の一モデルとして、特殊なやりかたで都市の長期的な変化が未完成であることを体現しています。それは外部からの圧迫の中で自発的かつ持続的に変化してきました。自己増殖と自己の更新は城中村の本領でしょう。

城中村は深圳都市化が内に向かって深掘りする最新のフロンティアであり、また同時に都市の均衡発展の最後のボトムラインです。経済特区都市として、深圳はまさに「ポスト城中村」の時代を迎え、二度にわたる都市化の波を経験し、高まる空間密度は城中村の生存と未来を拷問にかけています。ビエンナーレの介入は、まさに時を得たものです。

加速発展する都市化のなかで、都市は上から下へ(注:トップダウンの)の都市計画もあれば、下から上への(注:ボトムアップの)自発的推進力もあり、「城中村」はまさにこの二種の力の間にあります。「城中村」は、また中国の市場経済のもとでの高速都市化と、計画経済の衝突による矛盾の産物であり、もっかでは自発的に爆発な成長を遂げる都市への新移民の「入り口の都市」となっています。

城中村の面積は、深圳の総面積の六分の一で、2000万人をこえる人口のうちの約900万人がそこに住んでいます。つまり16.7%の空間が、深圳の人口45%を受け入れているのです。

(省略)

我々はこの展示のあとで、深圳城中村の発展のために豊富な記録を残し、また都市問題の議論をより広い範囲に導きたいと考えています。城中村という特殊な空間を起点として、今日の都市を顧みて、未来都市のプランを議論したいと思います。城中村は「共生する都市」の起点にすぎません。合法的で、周辺化された、そして表現されることのない空間と社会的グループを展示するすること、この展示とこれからの都市改造の試みを通して、共存と共生を試します。「2017 深港城市/建築双城双年展(深圳)」は、一つの展覧会であるだけでなく、同時に一つの介入計画であり、また一つの都市づくりの行為でもあるのです

ビエンナーレキュレーター:

侯瀚如、刘晓都、孟岩

 

3.メイン会場の風景

入り口にはこのような看板。

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歩き進むと、城壁の中に住宅が密集しています。

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広場が作られていて、子供たちが遊んでいます。

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Maryさんのワークショップ。

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デザイナーが住み込んでリノベーションし、デザインハウスを作っていました。

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下の写真がメイン会場。元工場だったと思われる建物を利用。

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中国の城中村、そして出稼ぎに関する写真展。展示枚数は少なめでしたが、印象的なものが多かったです。

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深圳市白石洲と思われる写真。これも城中村として有名な地区です。

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4.インテリ/デザイナー、住民、開発業者

ここを見に行くのは実は2回目だったのですが、英語でのワークショップをやっていると、近所の子供が遊びにきたり、また現地の保安関係者が見て、好奇と景観の眼でインテリたちが英語で討論しているのを見るという風景をたびたび目にしました。

住民と、来場者の間には明らかな壁があります。それ自体を体感させているともいえるのですが、案内してくれた方が「このような城中村のなかでの展示がされることに対して、反感をもつ住民もいる」ということでした。確かに、自分が住んでいる街が展示会会場になり、その生活空間に多くの外部の人がくることを嫌がる気持ちはありえることでしょう。城中村の生活空間に、とってつけたようなアートやデザインハウスを作ることにも、個人的には若干の違和感を感じたことも事実です。しかし「このイベント無かったら、お前はここに足を踏み入れもしなかったではないか」と言われると、返す言葉がありません。結局は、自分も含めて、きれいな、あるいはファッショナブルなデコレーションをされたりして、初めて行こうかな、と思う、それが一つの現実です。

さらに問題を複雑にさせるのは、この展示会のスペシャルサポーターが「深業集団」という深圳市が100%出資するディベロッパーで、この地区の再開発を手掛けている業者であるということです。現地で聞いたのは、深業集団はこのビエンナーレのあとには、この地域の立地の良さを生かして、より若い人たちが住む場所にしたいということでした。ある意味当然ではあるのですが、テンセントやハイテク企業で働く人が住みたいと思う街にすることで不動産価値を高める、という思惑がここにはありそうです。

単一的な都市開発に批判的であろうとする展示会すらも都市開発に利用されかねない生々しい現実があります。それとも単なるディベロッパー主導とは異なる開発がここから胎動するのでしょうか。深圳の有力ディベロッパーVanke(万科)集団も城中村の改造に着手しており、城中村の「昇級改造」を通じて深圳に新たにくる若者の住居を確保しようとする方向性が見えています。深圳市内の城中村の雰囲気がこの展示会以降、大きく変わっていくのかもしれません。

城中村と開発、都市の成長と都市の記憶をめぐる、問題そのものを突き付けてくる展示と街がここにあります。この意味でこのビエンナーレは一つの衝撃を与えうるものです

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(英語での路上ワークショップの光景を、住民は後ろから写真を撮るくらいの好奇あるいは警戒の目で見ていました)

 

5.衝撃を受けた「タオバオ村」が極限まで進化した姿を示したアート

個人的に一番衝撃を受けたのは、オーストラリアの建築家であるLiam YoungによるNew Cityという映像作品です。

壁一面にプロジェクターで投影されていたものです。

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中国の農村の風景ですが、レールが敷かれており、段ボールが高速で動いています。

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作品右をよく見ると「農村淘宝 いるものはなんでもある」と書いてあります。そう、この作品は、Eコマースの農村タオバオが極限まで進化した未来をデフォルメして描いています。

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作品左にも、中国タオバオ村 ○○村(よく読めない)と書いてあります。山肌は段ボールによって埋め尽くされています。

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高速で動くベルトコンベアー。そしてBGMには若干不気味な音楽が流れています。

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更に不気味なのは作品をよく見ると、屋根がかかっていることです。巨大な倉庫のような空間を思わせます。

 

Liam Young氏はDistopia系の作品をずいぶん作っているようで、このシリーズの中国版だったようです。

 

その他参考資料

http://www.sznews.com/news/content/2017-12/22/content_18080008.htm

http://www.oeeee.com/html/201712/18/525272.html

http://money.163.com/17/1223/10/D6B87UK2002580S6.html

http://money.163.com/18/0104/05/D79JNT6A002580S6.html#from=keyscan

http://news.sina.com.cn/c/2018-01-09/doc-ifyqiwuw8382912.shtml

http://money.163.com/18/0106/09/D7F7C0EC002580S6.html

http://news.sz.fang.com/open/27494919.html

深圳在外研究メモ No.44 2017年大晦日編 ~手前みそだけどメディアカバレッジをまとめておく

深圳在外研究中のメディアカバレッジをまとめておきます。

1.自分で書いた記事

割と研究よりの成果は置いておいて、メディアにおける言及としては下記のようなものがありました。2018年1-2月に掲載されるものも含めて書いておきます。

1)『日本経済新聞』2017720日付朝刊 経済教室「中国「一帯一路」どう見る()アジア投資銀通じ関与を 個別事業は進展に濃淡も」(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO18998440Z10C17A7KE8000/)

この記事は、はっきり言えば、AIIBを通じて制度的に「一帯一路」に関与するのがいいのでないか、という趣旨で書きました。より本質的には、日本自らが、方針をたてて「一帯一路」に対応することが望ましいという論旨です。

結果的には、2017年後半以降、日本政府は「一帯一路」に対して協力的な対応を取り始めたので、この意味では提言と近い展開ですが、同時に、その内容としては特定領域での協力と言うことになっているので、内容とは異なる点もあるのも事実です。

(中国『参考消息』2017721日に中国語版要約が掲載、http://column.cankaoxiaoxi.com/2017/0721/2205315.shtml)

中国語に翻訳されていますが、部分訳です。やっぱり選択的に翻訳されますね。

 

2)『聯合早報(シンガポール)』20171016日「如何与一帯一路相処」(http://www.zaobao.com.sg/forum/views/opinion/story20171016-803271)

上記記事の要旨と、シンガポールのリーシェンロンさんの講演などに触れた内容です。

 

3)『ドローンジャーナル』201767日記事「加速都市・深圳から見るドローンの未来」(https://www.watch.impress.co.jp/headline/docs/extra/drone/1063832.html

深圳で目撃したドローン開発業者の動向を書いてみました。

 

4)『ドローンジャーナル』20171124日記事「中国発の水中ドローンベンチャーが続々登場~「水中のDJI」は現れるのか?」(https://www.watch.impress.co.jp/headline/docs/extra/drone/1092800.html

色々なベンチャーを回る中で見つけた、「水中ドローン」のベンチャーについて書きました。いわゆる深海探査をするようなROVとは異なり、ドローンベンチャーの延長線上にある業界の誕生、とくに中国のベンチャーの動向としては日本語では初めてのレポートだったと思います。

5)『文春オンライン』2018年1月1日記事「中国の新しい経済地図 動き出した「デジタル一帯一路」」

http://bunshun.jp/articles/-/5608

なぜか文春さんから「新しい地図」なるテーマでお声がけいただいたので、中国が描こうとする世界地図と、中国で塗り替わる国内地図という観点でちょっと書いてみました。

 

 

2.インタビューによるコメント掲載などの報道

1)『朝日新聞』2017118日朝刊「耕論 中国の夢と足元」(https://www.asahi.com/articles/DA3S13218100.html)。

一九大党大会のタイミングで受けたインタビュー記事です。私は中国のイノベーションの動向について答えています。

 

 

2)『朝日新聞 Globe』201712月3日記事「[Part2]世界最先端の都市を見たければ、深圳だ」

(http://globe.asahi.com/feature/article/2017112800007.html?page=2)

インタビューを受けて一言掲載されています。

 

)『Wedge』20181月号

メールと現地で取材を受けましたので、なにか一言でるらしいです。

 

4)『日本経済新聞』2018年1月5日「米中ITの「二都物語」 本社コメンテーター 中山淳史  」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25318780U8A100C1TCR000/

一言掲載されています。ちょっと内容的に違和感があるところもあります(ユニコーン企業の数は北京のほうが圧倒的に多い)。

 

NHK20171018日「クローズアップ現代+ シリーズ 習近平の中国② 加速する“創新(イノベーション)”経済」にてコメント(https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4048/index.html)

コワーキングスペースSEGMAKERにてインタビューを受けた部分がコメントに使われています。

 

NHK20171026日、おはよう日本「“習一強”中国の経済戦略 カギはイノベーション」にてコメント。

ドローンパイロットがどの程度ニューエコノミーとして意味を持っているかについてコメントをしています。

 

)新華社通信20171126日記事「善学者!感受全球野下的深圳奇迹」にコメント掲載。(http://xhpfmapi.zhongguowangshi.com/share/index.html?docid=2611829&from=timeline&isappinstalled=0)

深圳のメイカースペースSEGMAKERにいたときに、たまたま新華社の記者さんが来て、インタビューを受けたときの記事です。この記者さんは実は演劇の台本まで書いている知識人で、別途お茶をした時にはずいぶん色んな話ができて勉強になりました。

 (加筆予定)