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深圳在外研究メモ No.10 深圳博物館で体感する改革開放編~蛇口爆破、「深圳スピード」の由来、そして圧倒的鄧小平推し

深圳市の中心部、駅で言うと市民中心から徒歩圏内にある、深圳博物館。初めて行ってみたのですが、「鄧小平の改革開放」を体当たりで展示している、非常に面白い博物館だと思いました。無料で開放されているので、関心のある方にはお勧めします。

深圳博物館には特設展のほかに、次の常設展があります。①野生動物の剥製エリア、②深圳の古代史エリア(石器時代から清代初期まで)、③深圳の近代史エリア(アヘン戦争から抗日戦争、国共内戦まで)、④深圳民俗展示エリア(水上生活漁民、タンミン等)、⑤改革開放エリア(1949年~)、です。このうち、特設展では私が訪問した時にはチベット仏教展が開催されており、特にラサのNorbulingkaに所蔵されている仏像群の圧倒的な存在感には驚かされました。

ただもちろん、この博物館の独自な所蔵物は、深圳に関する展示です。古代史エリアでは現地で出土した石器が並べられており、約1万年前から人類が住んでいたことがわかります。深圳に特徴的な展示としては、「海防」、つまり海上交易にともなって生じた紛争に如何に対応したのか、という展示でしょう。近代史エリアではアヘン戦争の結果、大英帝国に割譲された香港・九龍・新界に関する展示、抗日戦争と現地共産党の組織化過程、キリスト教の伝播の様子、広州から香港(ティムシャーツイ)までの鉄道の建設などが展示されています。

続いて、1949年から1970年代までの計画経済期のエリアは照明も暗く、特に文化大革命期の混乱の様子が写真で展示されています。当時、深圳と香港との間には、農民のレベルで10倍の収入格差があったため、「逃港」と呼ばれる、不法移民が続いていました。文革期の写真で、この「逃港」をまさにつるし上げている場面や、強制退去処分になった農民の写真が展示されており、計画期の苦境が垣間見えます

そしてこの博物館の展示の白眉というか、目玉は何といっても改革開放エリアです。この展示は、改革開放を体感できるように、映像、現物、ジオラマが総動員されており、明らかにほかのエリアとは力の入れようが違います。無料で見れるので、改革開放期以降の中国経済に興味を持つすべての方にお勧めしたいと思います。

まず当時の最高権力者鄧小平が経済特区の設置を認めた経緯が説明されます。「中央政府にはお金がないから、地方は自力でやりなさい」、「特区と呼んで構わない」といった鄧小平の言葉が紹介されています。展示として目を引くのは、第一には深圳蛇口の開拓の風景で、ダイナマイトで山を破壊し、海を埋めていく様子が大きなディスプレイで展示されます。第二に、大きなジオラマで再現されているのは、国貿ビルの建設現場です。当時、3日で1階分を建設し、これが「深圳スピード」という言葉の由来となった、というお話が紹介されています。わざわざこのジオラマつくるあたり、気合の入り方が違います…。

このあたりの展示には現物の展示も多いです。例えば、①中国ではじめて土地使用権の入札が行われた際に使われたハンマーや、②香港資本の進出によって始まった加工貿易で生産していたものの現物、そしてなによりも③鄧小平が来た時に植樹したスコップ、乗った車、泊まった部屋(!)が移設されて展示されています。1980年代と1990年代の展示は圧倒的に「鄧小平推し」が明確で、その後の1990年代以降は江沢民と香港返還、胡錦涛時期の社会福祉の拡充といった論点が強調されますが、前半の迫力に比べると一般的な展示という印象はぬぐえません。そして展示の最後の部屋には習近平総書記が前海を視察した際の様子を巨大ディスプレイで放映して、展示は終了です。

南方での交易史は広州の方が展示が豊富でしょうし、香港の割譲などについては当然香港歴史博物館の展示が勝ると思うのですが、深圳博物館は「改革開放」を知るのにはベストの博物館かもしれません。

 

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入り口。

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チベット展に出展されていた「仏母像」。それほど大きなものではありませんが、一見して、仏像の前からしばらく動けなくなるくらいひきつけられました。

 

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文革期、香港逃げる「逃港」を扇動したとして打倒される「階級の敵」。

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「改革開放の第一の号砲」とも呼ばれている、蛇口の山を爆破して埋め立てているようす。

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「深圳スピード」の由来になった国貿ビルの建設の様子。このあたりの展示は気合の入り方が違う。

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中華人民共和国成立以降で、初めて土地使用権の入札が行われた際に使われたハンマー。

 

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香港系企業の進出。下は現在のKonka。

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鄧小平が植樹したスコップ。

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鄧小平の1992年、「南巡講和」で深圳を訪れた際に乗った車。

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1980年代初め、加工貿易の生産品目。

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90年代後半、徐々に電子製品も生産開始。

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2000年代後半以降、携帯電話から徐々にスマートフォンへと移行。

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福田地区の1995年からの変化。この博物館があった場所も全くの更地だったことがわかる。

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深圳の「10大概念」、これが面白い。

1)時は金なり、効率は命なり

2)無駄な議論は国を誤り、実践が国を興す

3)天下の先を競う

4)改革とイノベーションは深圳の根であり、魂である

5)本を愛読することで、尊重される都市になろう

6)イノベーションを激励して、失敗に寛容になろう

7)市民の文化的権利を実現しよう

8)人にばらを送ったら、手元には香りが残る

9)深圳、ここは世界と距離がない

10)来たら、すなわち深圳人

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最後はやはり習近平総書記の前海視察。展示は蛇口の爆破からスタートし、前海の視察で終わる。


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