南山区の位置する深圳大学。北はTencentの本社ビルに接し、南は深圳市ソフトウェア産業基地に接しています。このエリアには、Tencentの新社屋(移転するのではなく、拡張するらしい…)、Baiduビル、Mangoビルなどの大きなオフィスがあり、さらに関連投資機関やアクセラレーターが設置されています。ソフトウェア産業基地は、昨年10月の深圳イノベーションウィークの会場となった場所でもあり、深圳におけるソフトウェア系企業の集積地となりつつあるようです。現時点での印象としては、「中国国内市場を念頭に置いたビジネスを展開しているソフトウェア、そしてハードウェアのベンチャーのインキュベーションをしている」ように見えました(もちろんTencent, Baiduは除く)。
このあたりが面白いのは、歩いていると「メイカーカフェ」のようなお店が立ち並んでいることで、これらの店の内部にはピッチスペースがあります。何度か現地に足を運んでいるのですが、平日でもだいたい何かしらのイベントを開催しています。多くのイベントは中国語で開催されており、このエリアには外国人は少ない印象です。3W Coffeeというお店では、今日はTencentのイベントが、となりのJDミルクティカフェでは韓国のNAVERのプレゼン、さらに近くのTCLスペースでは恵州の政府系機関がきて、プロジェクトの報告会を開催していました。
この一角に、Stargeekというスマートハードウェアのアクセラレーターがあるのですが、ここがなかなか面白い場所でした。4~5人ほどのチームが30ほど入居し、このほかにより規模の大きい会社も入居しているとのことでしたが、ほぼ全プロジェクトが中国国内のもので、過去の分を含めて外国系のプロジェクトは2つのみということでした。華強北のHAXのパターン、すなわち海外のチームが来て、深圳でプロトタイピングをするものの、市場は米国を筆頭とする国外というパターンとは大きく異なり、Stargeekは「中国人による、中国市場を向いたハードウェアスタートアップ」を育てていました。
Stargeekのもう一つの特徴は、スペース内にCNCを置くだけでなく、4~5名の専属エンジニア(元工場出身)が所属し、構造設計、電子設計、機械加工、外注加工まで含めたサービスを提供し、プロトタイプ製作から量産のための準備までを行うことができる点です。彼らはこれを「供应链服务(サプライチェーンサービス)」と呼んでいたのですが、私らが利用しているSegMakerよりも、さらに踏み込んだサービスを現場で提供していました。PCBボードの製作やマウントも、そうした専用の協力企業がいるので、1~2日のスピードで試作ができるそうです。
さらにJDカフェに行くと、オープンスペースでなんだか少人数でのプレゼン会がスタート。なんだろうと思っていると韓国語で、話を聞いてみると、「深圳に興味を持っている韓国の投資家や企業家を連れてきて、ツアーをしている」とのこと。プレゼンターは韓国最大手の検索エンジン、NAVERの研究部門だと思われるNAVER LABの深圳支社長。面白いと思ったので、韓国語のプレゼンを一通り聞いてみました。正直わからない部分もあったのですが、Shanzhaiとか、Prototypeとか、AIとかでてきました。そして最も時間を割いていたのは、AMICAというAIの話。今度お話を伺いに行ってみようと思いますが、少なくともNAVERの研究拠点が深圳の南山にある、という事実に若干驚きました。もしかしたらAIの研究もやっているのかもしれません。
NAVER LABのプレゼンで結構強調していたAIのプロジェクト。Siriとかコルタナみたいな感じだろうか。
Tencentの「濱海」新社屋。いったい何人入るんだろうか…。
深圳市ソフトウェア産業基地の模型。この周りにTencent, Baidu, 中国航天, Mango, 創投ビルが並ぶ。
地図。
ざっと数えて15のメイカースペースというか、創業促進系の機関が入居しています。
「深圳湾創業広場」、そのまま直球の名前です。
建設中のビル。手前にはバスケットボールのコートが。試合をすることもあるのでしょうか。
Stargeek入り口。
Stargeekの内部。一階には4~5人レベルのチームが入居しており、机一つがひと月800元ということだった。ただし、入居プロジェクトは、基本的にはAI、スマートハードウェア関連で、実際中では家庭用ロボット、ドローン、IoT家電が目についた。
CNCがバリバリに動いていた。試作のサンプルも見せてもらいましたが、プロトタイプ用の金属の加工もここでしていました。金型の設計もここで委託できるらしい。
360度カメラのプロトタイプ。3Dプリンターかと思ったら、切削で作ったとのこと。まさに今流行の製品を作りつつある様子でした。
ラボ。卓上3Dプリンター2台、レーザーカッター1台、あとはもろもろの工具が並ぶ。
家庭用ロボット、億家智宝。
小型ドローン。パロットのビーバップに似ているのは気のせいでしょうか。
網膜スキャンでロックする金庫。
NAVER LABの方のプレゼン。Why Shenzhen for Naver Labs China Office?というタイトル。まさに聞いてみたタイトルだったのですが、韓国語だったのであまり理解できませんでした。
結構ベーシックなことから解説して、最後はAIの話をしていたようでした。
3Wカフェで飲んだ、「総理コーヒー」。李首相が飲んだのでしょうか…。
華強北も面白いのですが、ここ1~2年で急激に開発が進んでいる深圳湾エリアもなかなか面白い動きがあります。現時点での印象では、「中国国内市場を念頭に置いたビジネスを展開しているソフトウェア、そしてハードウェアのベンチャーのインキュベーションをしている」というのが仮説ですが、学校のすぐ隣ですので、時間を見つけてインタビューをしていこうと思います。
「深圳在外研究メモ No.11 深圳市ソフトウェア産業基地(深圳湾)が意識高い編~Tencent新社屋、Stargeek, NAVER, そして総理コーヒー。だいたいいつ行っても何かやってる面白さ」への2件のフィードバック
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