深圳在外研究メモ No.15 デザインウィーク見学編~ガラス工場をリノベーション。主会場はプロダクト展。別会場の青葉益輝のポスターを来場者はじっと見ていた

サプライチェーンを超えて、「デザインの都市」を目指す深圳。フィンランド・ヘルシンキとの共同デザインパークの開設が注目されましたが、今週現地では第一回「深圳デザインウィーク(Shenzhen Design Week)」が開催されていました。

最終日に数時間しか見れなかったのですが、主会場の蛇口・価値工廠(i-Factory)ではプロダクト系の展示がされており、市内の南山博物館ではポスターやイラストの展示会が開催されていました。ほかの世界的なデザインウィークには参加したことがないのでわかりませんが、正直今回の深圳の規模は大きくなかったと思います。それでもシンガポール国立大学デザインインキュベーションセンターの中山さんも見に来ていたので、国外から見に来た方もそれなりにいたようです。市内の各所で同時開催の展示がされていたようでしたが、回ることはできませんでした。

個人的に印象的だったのは、別会場で実施されていた青葉益輝です。しばらく観察していたのですが、なかなかポリティカルなポスターが多い中で、来場者が結構足を止めていたのは、1970年代に東京都のごみ問題を提起したポスター群です。深圳もまさに高度成長期を経て、都市の成熟の段階にも入っており、こうした問題意識が共有される土台のようなものがあるのだろうと感じました。見ている方に話しかけてみたのですが、「うん、日本語はわからないけど、意味はよくわかるよ」、と。1970年代の東京のごみ問題を風刺したポスターが、2017年の深圳の若者に伝わる、この事実はなかなか興味深いものです。

仕事柄、「いまの中国は日本の何年代に似ていると思いますか?」と聞かれることが多いのですが、正直この問題設定は不毛です。より正確に言えば、半分は有効で、半分は無効です。有効であるのは、やはり高度成長から安定成長を迎える中で生じる様々な構造転換(工業化から脱工業化、不足の経済から「豊かな社会」・大量消費社会化、不動産開発と資産価値の高騰、都市問題の噴出などなど)はかなりの程度、同じパターンを描きます。ただ、もう一方で、中国がいま直面している国際的な経済環境・政治環境と、日本が1970年代から1990年代に直面した環境は大きく異なります。

この限界を指摘したうえで、それでも東京都首都美化推進本部の1971年のポスターが、2017年の深圳の若者に伝わるのは、やはり共通の課題に直面しているという事実を、目の前で感じる機会になりました。おそらくよりキャッチ―というか、ノンポリで集客を得やすい日系のアーティストやデザイナーもいたと思うのですが、この展示を深圳で見ることができたのはラッキーでした。

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深圳市の西部、赤い矢印の場所が主会場の「価値工廠」。大まかに言うと、メモのno.10で紹介した、山を爆破して埋め立てた場所(地図は百度地図より)。

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会場は深圳市の西端、蛇口の港の近く、「価値工廠」。正直会場でて少し歩けばそこはまだコンテナが並ぶ場所でした。

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旧ガラス工場をリノベーションしてアート・ファッションイベントの会場に改装。

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このゾーンでは中国のデザインプロダクトを展示。

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さらに奥に進むと…

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香港との共同プロジェクト系の展示。

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ユネスコのデザイン都市からの展示物ゾーンには名古屋のものも。

 

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前身のガラス工場時代の様子。

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旧工場時代の原料倉庫。大型の設備をあえて残してありました。

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ちょっとした落書き風の壁画。

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青葉益輝展。

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20代が主な来場者でした。

 

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ごみの風刺はこのあたり。

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「東京都首都美化推進本部」、1971年の作品。

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反戦テーマのものもかなり展示されていました。

 

 

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