『週刊東洋経済』にDJI、そしてドローンについて寄稿しました。書き足りなかったこと。そして『中国ドローン産業報告書2017』出します(送付希望受付中)

『週刊東洋経済』に寄稿しました

先週から『週刊東洋経済』にて、深圳に関する特集「メイカー革命」が始まっています。第一回は同誌記者の杉本さんによるHuawei、そしてゲリラ産業についての記事テカナリエ・清水さんによるスマートウォッチ解体記事

そして今週号に私はドローンの最大手、DJIの経営戦略、そして創業者フランク・ワンの思想について書きました。ぜひご一読いただければ幸いです。来週はアジア経済研究所・木村さん、そして再来週はチームラボの高須さんが寄稿します。

『週刊東洋経済』「飛来するユニコーン DJIの深層」

私の記事を要約して言えば、DJIは垂直統合化しつつあって、川上は半導体・カメラ部門への進出、そして川下はマーケティングの上手さだけではなく、ロボコンまで開催していることを述べています。いわゆるDJIの「アップル化」と呼ばれる状況ですが、DJIが自らを中心とした、ドローン産業の生態系の形成を進めていると表現できると思います。その背後には企業家のビジョンとエンジニアの奮闘があること、とくに創業者フランク・ワンの強烈な発言やリーダーシップも強調しました。ひょっとしたら将来的にはDJIはドローンからもはみ出していくかもしれないですね。

週刊誌でも把握不能なDJIのスピード

記事を補足する形で書きたいことがあります。記事にも書きましたが、DJIのスピード感覚についてです。記事を書き上げたと思ったら、さらに次々とリリースがでてきて、修正を余儀なくされました。たとえば、カメラメーカー・ハッセルブラッドを買収したニュースが1月にでていて、これは当初の記事に織り込み済みだったのですが、1億画素のカメラを搭載したドローンが2月23日リリース、さらにGS PROのアプリでの産業用途の制御も1月に拡充、そして産業用の耐久性を持つドローンMatrice 200シリーズが2月27日にリリース。トレンドとして、カメラ機能の向上、産業用途の拡充・新セグメント開拓というのは明らかだったのですが、具現化のスピードが尋常ではありません。

フランク・ワンの言葉

この背後には、DJIの企業組織、そして従業員の方のモチベーションも大きくかかわっていると思います。正直、会社の中の話は今後もっと検討が必要です。ただ、私の記事でも紹介したのですが、創業者フランク・ワンの言葉はなかなか個性的だと思います。記事ではごく一部しか掲載できなかったので、DJIのHP中国語版にのみ掲載されている文章を日本語翻訳して掲載しておきます。おそらく日本語訳、全訳は他にはないと思います。グローバルに活躍する企業家ってこうゆうものだと言われればそれまでなのですが、36歳の中国人企業家がこんなことを言っているということに注目しています。

 私は常々思う、皇帝がいわゆる最も美しく新しい服を着て街で遊ぶとき、子供だけが真実を指摘する勇気がある。しかし現在、こんなにも多くの社会問題があるが、大声でそれを責める子供すらもいなくなってしまった。事実上、苦悩なくして得られる成功など無く、PPTのみに頼って得られる富も無く、また天から降ってくるハイテクもない。卓越したものを追及するためには、無数の苦しく思索に耽る深夜を過ごし、72時間連続で働く執着心が必要であり、また真相を大声で言う勇気が必要だ。真に美しいものは極端な感染力を備えているが、我々はめったに世界を突き動かす科学技術製品や文学や芸術作品を持っておらず、文化的価値観の輸出が欠けており、舶来文化に従うばかりだ。

DJIはその真実を話す子供です。ここには、妥協せず、洞察力に満ち、夢を持ち続ける人が集まる。我々はかたくなに実業を行って投機はせず、功利主義ではなく夢を信じる。我々は全く新しい文化的価値観と思考方法論を堅持しており、これは創業から今まで変わらない。 DJIは一つのイノベーションのユートピアで、我々は夢を尊重する舞台を建て、純粋な企業環境を構築し、卓越して独自な製品の道と企業文化を探る。DJIのような企業は一社もなく、真実を求め正直さをもつ製品という理念ですべての細部を貫徹し、これを我々は誇りに思う。 10年間、DJIは業界のトップに立ち、グローバルな空撮の新時代を切り開き、世界を改造する無限の可能性を示してきた。我々の経歴が証明するのは、駆け出しの若者が他者に迎合せず、日和見的に投機せず、ただまじめに物事を行えば、必ず成功できる、ということだ。我々は常識に回帰し、奮闘を尊重する人が、最後には時代の機会を見抜き、最終的には世界を変えると信じる。 大きな道には限りはなく、イノベーションは無限だ。もしもあなたの志が高遠で、夢をもち、決心をして物事を行い、価値を創造し、このゆがんだ現実のなかで自ら疑い、放浪してやっていられないのならば、DJIに加わろう!ここで真実を知り、そして見通す人と会い、より多くの志を同じくする者と歩もう!未来には、不可能はない!

フランク・ワン

 

http://www.dji.com/cn/company より)

 業界関係者も認める製品の実績と完成度

今朝までドローン業界関係者との泊り込みのミーティング(慶応大学ドローンコンソーシアム・合宿)に参加していたので、実際に測量や撮影に使っている方々のお話もきけたのですが、今度発売されるMatrice 200は真上にも撮影できて、ズームも高倍率、しかも環境態勢も高いようです。6月発売とのことですが、いよいよ産業用ドローンのセグメントでもDJIが競争力を発揮してくる段階に入ったようです。

『中国ドローン産業報告書2017』書きました

ということで色々書いているわけですが、DJIだけを理解すれば中国ドローン産業がわかるとは思いません。法律、政策、DJIやその他の企業、業界団体などについて書いた報告書、『中国ドローン産業報告書2017 動き出した「新興国発の新興産業」』を、月末に所属研究所から刊行します。

研究費の成果なので無料で送付します。

こちらより、送付予約を受け付けています

(https://goo.gl/forms/qKkmJvnticpMxXe73)

正直、個別の論点についてはそれほど書き込めていないのですが、ざっとは業界のことがわかると思います。月末に研究所HPにてPDF形式でも公開しますので、そちらをご覧いただくことも可能です。お読みいただけましたら幸いです。