中国経済経営学会に参加しました

2019年11月16-17日、愛知大学で開催された中国経済経営学会に参加しました。

同時開催の研究会ではファーウェイが一大テーマでした。

また17日、増原広成さん(NIRA総合研究開発機構)との共同研究を報告しました。コメントいただいた渡邉真理子先生、ありがとうございました。

http://jacem.org/pdf/event/20191116sympo.pdf

以下は司会を務めたセッションメモです。

自由論題報告1「産業1:企業成長と産業集積」

 第一報告は徐涛会員による「中国自動車部品産業の集積」である。報告者は中国の産業集積研究には数多くの論文があるが、集積どう測るか、産業間の違い、MAUP(modifiable areal unit problem)の面で改善の余地があると指摘する。2004年と2008年の経済センサスデータをもとに自動車部品産業をジオコーディングし、10キロメートル四方のメッシュ化した独自の空間データベースを利用し、集積形成のメカニズムを空間プロビットモデルで推計した。その結果、国有企業が多いと、民営企業が少なくなる事等が報告された。討論者の日置史朗からは、独自の成果で高く評価されるべきであること、集積識別の方法、内生性への対処などの面で検討すべき課題があることが指摘された。フロアからは所有制の違いが他の要因に比べてどの程度効いているか、そして自動車産業の場合、実質的に外資企業が国有企業と合弁している点をどう考えるのか、といった点が指摘された。

 第二報告は三重野文健会員による「中国半導体産業の技術動向及びそれを妨げる米国動向」である。まず中国で開催される半導体国際会議(CSTIC2019)の研究発表動向から、引き続き米国から学習しようとする点が確認されること、ベルギーの研究機関が基調演説で存在感があること、製造工程面では中国のシェアが高いことが指摘された。続いて目下の米中摩擦の文脈のなかで、半導体企業買収への政府関与の動機が分析され、最後に日本産業への影響について、トヨタの自動運転の事例が検討された。討論者の中川涼司会員はIC Insight等の情報を見る限り、中国の半導体産業は市場規模としては拡大を続けているが、引き続き自給率は低いことを指摘した。また米中摩擦については米国側の規制は安全保障上の理由となっているが、産業政策的な含意がどこまであるのか、そして日本の自律型ロボットの可能性を強調した理由について論点が提起された。

 第三報告は曽根英秋会員による「トヨタの中国進出 中国自動車発展期におけるトヨタの戦略」である。トヨタ自動車は世界シェアに対して中国におけるシェアが低く、この理由について通俗的に指摘される「進出の遅れ」の背景および前後の事業展開が検討された。トヨタ自動車の本格的な海外市場開拓が進むのは1985年以降で、また日米摩擦も背景としつつ中国への進出が遅れた。ただし同時に販売会社、運転教習所、技能学校の設立といった様々な関連業務は展開していた。討論者の丸川知雄会員からはまずより論点を絞ったほうが良いと指摘があり、そのうえで中国進出への遅れが論点であろうと指摘された。1980年代に台湾で生産開始していたこと、これも一因だったのか、そして米国での拠点立ち上げと同時に中国事業に着手できなかった理由として、工場立ち上げへの人材面の負荷の大きさに対する説明も必要だと指摘された。またフロアからは理論面でのより適切なフレームの必要性が指摘され、またトヨタについては進出後のキャッチアップは迅速であった点、また進出検討時の政府によるサポートの有無が指摘された。

 3つの報告を通じて、フロアからも積極的な質問が提起された。日本の中国経済経営研究では産業分析が大きな柱となっている。今回のような活発な議論によって新たな論点が開拓されていくことが引き続き望まれる。