Aseiito.net

ホーム » 未分類

カテゴリー別アーカイブ: 未分類

深圳在外研究メモ No.39 11月後半はイベント尽くし編~Maker Faire派生イベント、David Liとお茶、Hightech-Faire, Huawei訪問…

11月はイベントが盛りだくさんでした。忘れないように主だったものを列挙しておくとだいたい下記のとおりでした。

1) 11/10-12 Maker Faire Shenzhen

2) 11/13 & 11/15  TakasuさんツアーおよびSeeedツアーの一環でSEGMAKERにてイベント

3) 11/16 久しぶりにSZOIL(Shenzhen Open Innovation Lab)のDavid Liに会いに行く

4) 11/17 東京大学松尾豊研究室、YodayodaのYuichiさんがSEGMAKERご来訪

5) 11/18-19 Shenzhen Hightech-Faireに参加

6) 11/21 香港にてBelt & Road Forum: Digital Belt & Road Opportunities Unleashedに参加

7) 11/21-23 慶應義塾大学駒形哲哉研究会来訪、Huawei、Jenesisなど訪問

8) 11/24 テクノセンターの年一回のBBQ大会参加

 

1)Maker Faireとその派生イベント

なんといっても11月11日に白石洲で、Takasuさんの声かけのもと開催されたミートアップは100人くらいは来ていて、歴史的なイベントになったと思います。この日の様子の一部始終はNaomi WuさんのYoutube360度動画としてアップロードされています。

圧倒的熱気があったわけですが、個人的には朝2時までAndrew Bunnie Huangさん(著名なエンジニアで、なおかつHardware HackerとかThe Essential Guide to Electronics in Shenzhenの著者)と話せたことは貴重でした。ずいぶん踏み込んだ話もしましたが、私が彼に「深圳経済を研究している」というと、彼ほど詳しい人が”I’m small”、「今の深圳経済をどう見ているか教えてくれ」というのには驚きました。深夜の白石洲で彼と南山の未来について語ったことは忘れないようにします。

IMG_20171111_202044_1.jpg

ミートアップの様子。お祭り騒ぎで、日本人だけでなく、ドイツ人も、中国人(Elecrowの人とか)も参加。

IMG_20171111_201605.jpg

ミートアップに来てくれたAndrew Bunnie Huangさん。

IMG_20171113_160109.jpg

Maker Faire公式ツアー落選者向けのTakasuさんのツアーで、Segmakerで講演会(11/13)。私もレクチャーしました。この日の様子はTakasuさんのブログにて動画込みで公開されています。参加者にシリコンバレーやマレーシアや中国やオランダからの参加者も含まれていたので、Takasuさんと私で基本英語で報告、質疑応答は場合によっては日本語でも対応。このスタイルがいいね、という話になりました。

IMG_20171113_182013.jpg

オランダからの参加者だったVictor Mazonさん。東方教会系のアートをPCBA基板上に描く端末の試作と量産をしに来ているとのことでした。最高の笑顔。

IMG_20171115_183831_1.jpg

11/15にはMaker Faireの公式ツアーでもSegmakerでワークショップ開催。インドとマレーシアから来た方がめちゃめちゃ質問してくれて大いに盛り上がりました。このツアーの様子はMaker Faire Shenzhenの記事にて言及されています。この日は別組でHIU(堀江貴文イノベーション大学)もSEGMAKERを来訪しました。

 

3)久しぶりにDavid Liと会う

DavidとはよくFacebook上で交流しているのですが、彼も出張が多く、会うのは数か月ぶりでした。彼にはMaker Movementについて、そして深圳経済の現状を議論しました。この日はいつにも増してテンションが高く、私が使っているPPTのスライドをいくつも批判してくれて、David節全開という感じでした。Davidの批判に感謝します。ポイントは以下でした。

①Maker Movementは第一段階が終わった。様々なプロジェクトが立ち上がったが、本当に社会的インパクトをもたらしたものは少ない。今後はそのプロジェクトが、どう社会を変えたのかが問われる。

②深圳経済の現状を担っているのは、いわゆるR&D型の企業ではなく、アフリカや途上国に格安スマホを提供しているような企業だ。彼らは十分儲かっていて、メディアにもでないし目立たないから注目されないが、実際にはDJIよりもずっと規模が大きい。

IMG_20171116_164013.jpg

茂田カツノリさんと一緒にDavidに会い行きました。じっくり話をするのは久しぶりでした。

IMG_20171116_153543_1.jpg

すでにプレスリリースがかかっていますが、Airbusが深センに研究拠点を開設するということで、この日はAirbusの人たちが20人くらいDavidからレクチャーを受けていました。

 

5) 11/18-19 Shenzhen Hightech-Faireに参加

IMG_20171118_120517.jpg

まあ巨大な展示会でした。会展中心全体を使い、なおかつ1階廊下にまで出展ブースがならぶ状況でした。おそらく年間を通しても最大級のイベントでしょう。

 

 

IMG_20171118_111311.jpg

リリースが予想されていた360度カメラ付きスマホ。

 

IMG_20171118_115229.jpg

下肢リハビリ用ロボットを開発しているMileBotのYeさん。

 

IMG_20171118_144857.jpg

ARグラスのプロトタイプをみせてくれたRobin Wu.

IMG_20171118_170808.jpg

ドローンも6月の展示会には出展していない会社まで出ていました。

ドローン関連では、ウェブメディア『ドローンジャーナル』の連載記事として「第4回 中国発の水中ドローンベンチャーが続々登場~「水中のDJI」は現れるのか?」を書きました。水中ドローンについてのまとまった記事は少ないのですが、この領域でも中国企業は台頭が進んでいます。

 

7) 11/21-23 慶應義塾大学駒形哲哉研究会来訪、Huawei、Jenesisなど訪問

私の出身ゼミでもある慶應義塾大学の駒形哲哉ゼミが深圳に来たのに合わせて、HuaweiやJenesisを訪問させていただきました。

Huaweiの本社を訪問するのは初めてでしたが、スマートシティに関する展示ルーム、そしてキャリアビジネス向けの展示ルーム、そして会議室での議論でした。ケニアでの長年の通信インフラ事業の蓄積のうえで、セーフシティのインフラ整備事業に進出したという解説は、泥臭い新興国での営業のうえに、最先端のスマートシティインフラの受注が成り立っているという興味深い話でした。

IMG_20171123_091956.jpg

Huaweiを訪問、Andrew Williamsonさんにご案内頂き、議論する機会を得ました。写真はスマートシティの中枢、政府部門が将来的にみることになるであろうリアルタイムの情報統括ステーション。交通渋滞、大規模イベント会場の状況などが瞬時に把握可能で、警察・消防に即時対応できることを強調していました。

IMG_20171123_125352.jpg

Huaweiの人材教育センター、Huawei University.

研究会の最後の訪問先となったJenesis. 繁忙期直前にも関わらずご対応いただいた藤岡さんに感謝いたします。藤岡さんは著書『ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム』を出版されており、華南と深圳の製造現場で直面した困難と挫折を紹介しています。

IMG_20171123_160107.jpg

サプライチェーンのリアルな事例、とくに同一スペックとされる部品にどのような違いがあり、どう使い分けるか、など毎回新たな学びがあり、勉強になります。

IMG_20171123_163858.jpg

Jenesisにて藤岡さんからレクチャーを受ける学生。

深圳在外研究メモ No.37 深圳大学で深圳経済についてプレゼンしてみた編~ゲリラ産業と城中村は深圳にもう不要なのか?

10月25日に深圳大学の学部生、大学院生、若手研究者向けのセミナーで報告をしました。報告タイトルは”Shenzhen as Innovative City: Hardware ecosystem and beyond manufacturing”で、資料はここにアップロードしておきます。基本は、私がSEGMAKERにて報告している内容ですが、現地の学生向けの資料なので、若干アレンジはしてあります。40人くらいの学生が来てくれたのですが、深圳大学一年生との交流もできたのは貴重でした。

質疑応答ででた質問を列挙しておきます。全部で10の質問がありました。

1)深圳は確かに中国国内でも活力ある都市だが、第二の深圳というのは生まれる可能性はあるのか?あり得るとすればどこか?雄安新区は可能性あるか?

2)いま大学二年生で、深圳南山生まれの南山育ちだ。でも大学院は海外にでて勉強したり経験したりすることも考えている?どうすればいいか?

3)香港はサービス産業化が進んでいるが、深圳もサービス産業化が今後進むと考えればいいか?

4)コスト増に従って、サプライチェーンの競争力は落ちてきている。山寨(ゲリラ産業)のような世界はやがて無くなると考えればよいか?

5)深圳はこれまでの高度成長を今後も続けられるだろうか?HUAWEI、TENCENTのような企業はまずは中国国内市場で成長した。他の企業のなかには輸出で規模化した企業もある。特に需要面で今後の更なる成長をもたらしうる、新領域はあるだろうか?それに他の都市も成長を続けている。深圳の独自なポジションは維持可能だろうか?

6)いま大学一年生だが、ゲームを沢山やっている。Tencentは世界一のゲーム企業になれるだろうか?

7)空間経済学を研究しているが、珠江デルタと長江デルタの産業集積の最大の違いはなんだろうか?

8)大湾区(Big Bay Area)計画について、東京湾岸開発からどのような示唆を得られるだろうか?

9)80-90年代にはMade in Japanが世界を席巻したが、いまはMade in Chinaが地位を挙げており、Made in Japanは地位を下げているようにも思う。どう思うか?

10)人民銀行の周行長は中国経済の「系統的リスク(システミックリスク)」について先日言及した。このようなリスクについてどう思うか?

一応すべて答えたのですが、報告の本論との関係が深い質問についていうと、博士課程の方が質問してくれた第四は重要だと思います。質問してくれた方の指導教授とも議論したことがあるのですが、これまで「山寨(ゲリラ産業)」と「城中村(Urban Village)」は深圳のサプライチェーンと活力の基盤でありました。しかし城中村の再開発が進み、経済成長のみならず特許制度への保護が強まるにしたがっていわゆるゲリラ産業の生存空間は狭まっているようにも思います。ゲリラ産業と城中村は新しい深圳にもう不要なのか、この点についてはまだまだ議論が必要な気がしています。

あとはだいたい以下のように答えています。第一の雄安新区については、基本は政府部門と中央国有企業のための場所だと思うので、民間企業が活躍する場所になるとは現時点では思えない、と答えました。方向性がちがう、と。第二の学生には国外へ一度出ることをお薦めしましたが、あなたは深圳南山に戻ってくるような気がする、と答えました。第七の珠江デルタと長江デルタの違いについては、その場でうまく回答できなかったのですが、思えば、費孝通さんの1980年代の議論のような、産業集積の歴史的な成り立ち(経路依存性)ゆえに生じるビジネスモデルの違いを指摘すればよかったなと反省しています。

11月はMaker Faire Shenzhenもありますし、日本に限らず多くのビジターの方に深圳で会えそうです。

WeChat Image_20171029133934.jpg

小さな会議室でしたが、おかげさまで満員でした。

WeChat Image_20171029133946.jpg

中国語で60分の講義と30分の議論はなかなか骨が折れましたが、もっと慣れなければなりません。

WeChat Image_20171029133941.jpg

サプライチェーンのスライド。大学院生やポスドクも含めて、具体的な工場やアクセラレーター、コワーキングスペースへの訪問経験を持つ方は少なかったようでした。距離的な近さが深圳のベンチャーコミュニティの理解に直結しないことをこの日も強く感じました。

WeChat Image_20171029133738.jpg

レクチャー後に集合写真。

 

WeChat Image_20171029133327.jpg

学内ポスター資料。

深圳在外研究メモ No.36 南山ソフトウェア産業基地のRocketspaceでVRとAIベンチャーに出会う編~「深圳市南山区的なスタートアップ」とはたぶんこんな感じ

深圳市のベンチャー企業の新たな集積地が南山区に生まれており、その中でもソフトウェア産業基地が一つの拠点となってきたことをはすでに何回か取り上げてきました。メイカーフェアー西安の主催者であるKevin率いるMakerNetが、9月に福田区のコワーキングスペースから南山区ソフトウェア産業基地のRocketspace Shenzhenに移転したこともあり、Rocketspaceに最近時々お邪魔しています。

Rocketspaceはサンフランシスコに本拠を置くコワーキングスペース運営会社で、Uberをインキュベートしたという実績を誇り、現在深圳を皮切りに中国国内での拠点拡張を進めています。今回Rocketspace Shenzhenのキーパーソン、Leoの好意もあって、日本のスタートアップやVCの訪問に合わせて小さなイベントを開催してくれました。Rocketspace Shenzhenのスタッフで、今後はRocketspace Beijingの運営を担当するIphieさんが最初にスペースの概況を案内してくれたあとに、5社の関連ベンチャーがプレゼンをしてくれました。

以下はその様子です。

IMG_20171020_160813.jpg

訪問団の様子。オープンスペースでやっているのでだんだん人も増えていきました。

IMG_20171020_161002.jpg

はじめにIphieさんからRocketspaceについての簡単な説明。出張直前にも関わらず企画を受けてくれてありがとうございました。彼女は早稲田大学で4年学んだ方で、英語がとても達者です。

IMG_20171020_161112.jpg

おそらくすごく大事なスライド。”Global Ecosystem”の一言。世界に横展開して、スタートアップをインキュベートする、という方針。Shenzhen Campusは今年6月にオープン。現在19のスタートアップが入居。8か国の出身者、15の産業というダイバーシティがあり、最近は沢山のイベントも開催しています。日本からの入居チームまだない状況で、絶賛募集中とのこと。入居費だいたいいくら、と聞いたら「へへ、それは内緒だな、君たちがどれだけcoolか次第だね!笑」と言われました。Coolな人は是非どうぞ。

IMG_20171020_162623.jpg

最初にプレゼンしてくれたフランスのVRベンチャーⅩⅩⅡ(Twentytwo)のJuian。本国に60名の従業員がおり、深圳には6名。VRを活用したメディア/エンターテイメント系のサービスを提供しており、とくにフランスのテレビ局のVoiceという番組では最大100万人が同時にVRによる歌唱審査員を体験したとのこと。

IMG_20171020_165150.jpg

二社目のMalong TechnologiesのNoraさん。めちゃめちゃ盛り上がりました。6月頃に世界的な画像認識AIコンテストで深圳のスタートアップがグランプリをとったというニュースがあり、その会社には興味があったのですが、話を聞いていくとこの会社でした。画像認識を中心としたAIの開発とそれによるオーダーメイドソリューションの提供を行っており、「AI×EC」、「AI×ファッション」といった切り口で、BtoBのAIソリューションを提供。この写真は画像認識技術を使って、清明上河図を認識した画面で、「人」、「動物」、「乗り物」をそれぞれサークルで囲んで認識していることがわかります。

IMG_20171020_170119.jpg

もう一つ盛り上がったのは、売れている服の画像を処理することで、どの色が過去に流行ってきたかをはっきり示すこの図。「今年は赤が来ています」というトレンドを具体的なデータ、さらには顧客属性ごとに示すことが可能になっています。データベース次第ではこのような処理がすでに可能になっていることを初めて知りました…。

IMG_20171020_171048.jpg

三社目の66iFuelのCuiさんとRocketspaceのLeo。66iFuelは電気自動車向けのパワーステーションのビジネスを行っており、どの車種、どの支払いプラットフォームにも対応するシステムを開発しているベンチャー。CuiさんはTencentで有力なエンジニアであったとのこと。

IMG_20171020_172732.jpg

四社目のMaybeのMengさん。スタンフォード大学、清華大学などの卒業生が立ち上げたディープラーニング用チップセットの開発ベンチャー。MengさんはサンフランシスコのYcombinatorにもいたとのことで、ハイプロファイルな開発陣営で、今後ニーズが見込まれるローカル端末内、しかもスマホではないスマートデバイス端末におけるディープラーニング用チップの開発を行っているとのこと。製造はTSMCと協力しているらしく、あふれ出る自信が印象的でした。

IMG_20171020_173915.jpg

5社目は、360度カメラのKANDAOのLionelさん。かなり時間を押してしまったのであまりじっくりお話を伺えなかったのですが、6つカメラがついた360度カメラで、デプスが取れ、さらにステッチの精度も高いというプレゼンでした。

IMG_20171020_174405.jpg

3社の処理を見比べて、ステッチの精度が高いことを示すLionelさん。

南山区に集まるVR、AI、EV関連スタートアップの一端をRocketspaceで見たわけですが、グローバルなエコシステムのなかで、とくにハードウェアのサプライチェーンに近いことを活かしながら深圳でベンチャーが生まれていることが確認できたと思います。彼らを引き続き追いかけていこうと考えています。

深圳在外研究メモ No.35 深圳エレクトロニクス産業と自動車産業はどうつながるか編~スマートバックミラーから曲面ダッシュボード、そしてBYTONによれば車はスマートデバイスへ

中国南方の経済の中心、珠江デルタ地域には、デルタ東南には深圳市を中心としたエレクトロニクス製品のサプライチェーンがあり、一方で北の広州市には自動車産業のサプライチェーンがあります。企業訪問をしていると、感じることは、現状では広州と深圳のサプライチェーンの間には大きな壁があり、相互の間には直接的な連関が薄いのが実情です。この背景には自動車部品の特に機能部品の場合には人命にかかわるために極めてハードルが高く、サプライチェーンの管理も厳しく新規参入が困難であるという事情があります。深圳には電気自動車を生産するBYDがありますが、まだその生産台数は限られています。深圳の間にある東莞市では、企業によってはエレクトロニクス製品にくわえて自動車関連部品を、とくに非機能部品分野で担っており、この意味で面白い地域になっています。

ただ、深圳市と自動車産業との関係が無いか、といえば、自動車産業の電子化に伴って徐々に見える形での融合が始まっているようにも思います。一番簡単な事例は、スマートバックミラーです。日本では搭載不能かもしれませんが、深圳ではバックミラーにアンドロイド端末が内蔵され、SIMカード内蔵して地図上に現在地を表示し、言語認識で行先指定などができ、端末背面にあるカメラで撮影された映像を内蔵SDカードに録画するドライブレコーダー機能がついた端末をよく見ます。現物の写真はこの投稿の下記に掲載しておきます。

よりハイエンドかつ組み付け部品の事例も挙げることができます。BYDの秦100にはすでに12.8インチのディスプレイが搭載されており、Teslaにかなり近いダッシュボードとなっています。このブログでも何回か言及している通称「山賊王」ロビンの工場でも、ダッシュボード用のタブレット端末を生産しており、組み付けサプライヤーとしての納入と、アフターサービス段階での内装変更市場の両方に納入をしていました。また世界で開発競争が進んでいるフレキシブルディスプレイ分野では、深圳で注目されている柔宇(ROYOLE)が開発を進めている曲面ダッシュボードを挙げることができます(CES2016にて発表)。

加えて、現地の報道によればEMS大手のFoxconnはすでにTeslaの128部品を製造していると言われています。Foxconnは江蘇省昆山市にバッテリー工場の建設に250億元の投資を行うことを発表しているほか、Tencentと共同で電気自動車ベンチャーである和諧汽車に出資しており、この分野を探っていることが明確です。

FoxconnとTencentがからむプロジェクトで興味深い事例は、電動車スタートアップ、Future Mobility社のコンセプトカーBYTONです。BMWで電動車プロジェクトに携わっていたCarsten Breitfeld氏がCEOを務め、このほかにもTOYOTAの製造とTeslaの購買担当を経験したMark Duchesne氏も合流しています。Crunchbaseの情報によればFuture Mobility社はTencent, Foxconn, Suning(蘇寧)等から合計2億ドルの出資を得て、南京に本社を構え、工場も南京への建設が決まっています。本拠が南京であるので、深圳とは関係ないとも言えそうですが、TecentとFoxconnが絡む点は今後注目が必要でしょう。

BYTON社の動画を見ると、タイトルが“It’s not a car, it’s a smart device(車ではなくスマートデバイス)“、中身を見てもスマートフォンからシームレスな自動車、というよりもモビリティを目指しているようです。Face Recognitionによる開錠、他のスマートウェアラブル端末との同期、ハンドモーションによる操作・・・。ダッシュボードは存在せず、ハンドルの奥が全面ディスプレイとなっています。そして自動車としての乗り心地などには一切言及していません・・・。そうこれは「自動車ではなくスマートデバイス」だからです

これまで自動車とエレクトロニクス産業、別言すれば珠江デルタでは広州と深圳は少し遠い別産業というのが実情だったかもしれません。しかし2020年代には、この両者が融合していく可能性もあるかもしれません。南京に本拠置き、世界6拠点立ち上げ、元BMWの人が創設、FoxconnとTencentとSuningから2億ドルの出資を得て、電動車ベンチャーが生まれる。そんな時代に我々は生きています。

 

IMG_20171019_155015.jpg

電気街華強北の賽格(SEG)ビル二階の様子。国慶節も明けて活気が戻ってきました。

IMG_20171019_153017.jpg

電気街の数か所で配布されているフリーペーパーの中に「汽車電子」という冊子があります。中を見ると・・・

IMG_20171019_161625.jpg

スマートハードウェアの製造メーカーのなかで、特に車載系のハードウェアを開発製造しているメーカーの広告が掲載されています。

IMG_20171019_161636.jpg

スマートバックミラー、スマートダッシュボードが並んでいます。

IMG_20171019_153757.jpg

実際に市場に並んでいるスマートバックミラー。要するにアンドロイド携帯が入っているので、電話も、地図も、通信料の支払いも、ビデオ録画も、WeChatもできます。

IMG_20171019_154354.jpg

地図の表示画面。地図アプリの言語認識機能を使えば「○×ビル」と言えば、そこまでのナビゲーションが始まります。

 

 

深圳在外研究メモ No.34 深圳開催のWTOグローバルバリューチェーンコンファレンス2017に参加してみた編~サプライチェーンにDigitalizationとChina Effectを入れたらどうなるのか?

10月12-13日に深圳市にてWTOが主催したコンファレンス、2017 Global Value Chain Innovation Development Summitにパネリストとして参加しました。2015年から開催されており、今年はWTOのチーフエコノミスト、Robert Koopman教授が呼びかけ人となっていました。テーマは国際価値連鎖(グローバリューチェーン, いわゆるGVCs) で、私の理解では既存のバリューチェーンに、(1)中国の影響(China Effect)、(2)デジタル化(Digitalization)を入れると何が起きるのか、という点に議論が集中していたと思います。

登壇者は投稿の末尾に載せておきますが、Robert B. Koopman (Chief Economist, WTO)、Gary Gereffi (Duke University)は付加価値貿易論や国際価値連鎖の大家ですし、Pankaj Ghemawat(New York University)は国際ビジネスの議論で著名です。これらのメンバーとGVCsの未来を議論できた、とても贅沢な二日間でした。私はこの分野で全く成果を挙げていないので、たまたま深圳にいたから声がかかったわけで、ラッキーでした。

1.セッションの構成

セッションの構成は、以下の通りです。

(1) NEW TRENDS IN GLOBAL ECONOMY, GLOBALIZATION AND GVCS

(2) SESSION 2: THE GOVERNANCE OF GLOBAL VALUE CHAINS

(3) SESSION 3: HOW TECHNOLOGICAL INNOVATIONS, SUCH AS AI, ROBOTICS AND BIG DATA CAN HELP GVC UPGRADING?

(4) SESSION 4: REGULATORY FRAMEWORKS FOR GVC UPGRADING AND ECONOMIC AND INNOVATION CLUSTERS

最初にセッション1でグローバル化そのものを議論し、セッション2でそのガバナンスの議論をGereffi先生を中心にして、セッション3で技術、とくにAI、自動化、ビッグデータがGVCsにもたらす影響を、そしてセッション4で政府の役割を議論するという流れです。私はセッション3にパネリストとして参加しましたが、当初声がかかった時点でのセッション3は「イノベーションと政府の役割」のようなテーマだったのですが、しばらくしてからAIとビッグデータの役割という点に焦点が変わり、驚いたのですが、結果的には非常に刺激的なセッションになりました。

2.全体を通じた重要な論点

 2日間の中で論点となっていたのは以下の4点だと思います。

論点1. Globalizationが逆流しているようにも見えるがどう考えるべきか?

この論点についてはいくらでもすでに研究があると思うのですが、学者に加えて政策担当者や企業家も登壇したことで、米国トランプ政権の影響やその背景、グローバリゼーションによる受益のあり方の不均一性が論点となっていました。

基調講演をしたPankaj Ghemawat教授は、いくつかのデータから見て、グローバリゼーションが退潮しているとは言えず、特にこの数年間に国境を越えたデータのやり取りが急激に伸びている点を重視していました。従来の貿易や投資関係に加えて、データのやり取りが新たなトピックになっている、ということになります。

論点2.DigitalizationはGVCsにどのような影響を与えるか?

第二の、そして2日間を通して最も頻繁に議論されたのは、経済のデジタル化、そしてAI、ビッグデータ(およびそのプラットフォーマー)、ロボティクス/自動化といった要因が世界の価値連鎖に与える影響でした。明確な議論の方向性が見えなかったことも事実ですが、それだけ様々な意見が提出されていたとも振り返ることができます。Koopman教授が基調講演で、3Dプリンターの発展が、中間財生産のローカル化を通じて、世界の貿易量を大きく減らす可能性があるという研究を紹介していたのは面白かったです。

この論点を特に議論したはセッション3でした。セッション3の論点提供者だったJeongmin Seong(Senior Fellow, McKinsey Global Institute Asia)は、むしろ新しいレベルのグローバリゼーション、とくにデータのやり取りとAI/機械化の影響の広がりが起きると指摘していました。とくにAIの影響は、仕事の性質によって影響を受け、判断が必要ない単純作業ほど自動化されていくため、その影響は特に今後新興国ほど現れるだろうと述べていました。中国におけるイノベーションのパターンについても指摘していたのですが、とても密度の高い報告だったと思います。

この他に印象的だったのは、James K. Lockett(Vice-President and Head of Trade Facilitation and Market Access, Huawei Technologies)が「DigitalからIntelligentへと進む。Smart PhoneはIntelligent Phoneになるだろう。今までは人間がスマートフォンの使い方を学習してきたが、今後はスマートフォンがあなたを学習するようになる(now you learn your phone, but in the future, your phone will learn you)。これは不可避の方向性だ」といった指摘をしたことでした。your phone will learn youは結構なパワーワードで、昼食の時も話題になりました。あとは「データは新しい石油だ」説を皆どう見ているか、などというざっくばらんな議論もありました。HUAWEIのJamesが「石油じゃないよ、適当な比喩じゃない。そもそもデータは物じゃないし。」と言って、それに対してビッグデータ屋さんのBarcoが「データの種類と掘り方(アルゴリズム)次第でしょ。意味のないデータも多いし、整理されていないデータはまあ価値は引き出しにくいけど、腕次第でもある」みたいなやり取りがあって、この議論はもっとじっくりしたかったと感じました。PankajやJeonmingが指摘した「越境データフローの増加」についてはIvanとご飯を食べているときに、「データフローの中心は動画だろうから、ぶっちゃけみんながYoutube見ているだけなのでは」という議論もなかなか面白かったし、このあたりはすこしデータを探してみたいところです。

私はセッション3のパネルセッションでは(1)会議全体の論点の整理をしたうえで(2)日本におけるIndustry4.0を巡る議論の進展(トヨタ生産方式との異同を巡る話など)、(3)深圳まわりで、工場内での自動化やシステムの効率化は見られているが、個別工場を越えたサプライチェーンレベルでのデジタルな同期化は、自分が見た中ではあまり感じられていないこと、を指摘しました。

論点3.China EffectはGVCsにどのような影響を与えるか?

もう一つの重要な論点は、中国の影響で、その中には(1)中国の国内市場から育ってきたAlibabaをはじめとする巨大なプラットフォーマーが与えうる影響、(2)一帯一路の影響も含めて、中国から世界への貿易投資の動きが今度どうなり、何が起きるか、(3)深圳はこの新しい時代にどのような役割を果たすことができる、が含まれていました。正直GVCsのコンファレンスで一帯一路がでてくるとは想像していなかったのですが、OECDの研究所でも議論がされているようです。

論点4.国際機関、政府(地方政府を含む)の役割はどう変わるか?

最後の論点は、Digitalizationの時代にWTOのような国際機関、そして政府はどのような論点に直面し、どのような政策を実施すべきか、という点です。直面する課題の筆頭は、データの管理の問題で、データ利用について規制をすべきか、データ利用による企業の応用をどこまで見守っていくべきか、という点です。そしてデジタル化の時代に、政府はどのようなイノベーション政策や関連政策を実施すべきか、という論点も含みます。深圳市政府は広域地域開発計画(ビッグベイ)によって、サプライチェーンの広域化を図りながらも、人材への優遇政策を実施することで、そして企業のニーズを掘り起こしていくことを重視しているようでした。

Zheng Yanlingさんが総括の挨拶で、「アリババはプラットフォーマーとかエコシステムというけど、結局閉鎖的で、強引にベンチャー企業を買収しているようにも見える。でもアリババが好きな人も、アリババが嫌いな人も、アリババがやっていることを恨むことはできない、なぜなら彼らは技術によって発展を追求しているだけで、彼らには責任はないからだ。好きでも嫌いでもデジタル化、技術の進歩は止まらない。」という趣旨の発言をしていて、中国の現場で、体験している人ならではの切迫した言葉ゆえの説得感がありました。閉会の挨拶のなかでKoopman教授が来年も開催すると言っていたので、また声をかけてもらえるように努力したいと思います。

以下は会議の様子です。

IMG_20171012_100516.jpg

IMG_20171012_105227.jpg

Pankaj Ghemawat教授によるプレゼン。このタイトルの本がでているらしいです。

 

 

越境データフローが増えていることを強調。

IMG_20171012_113144.jpg

Koopman教授による、分類別付加価値貿易額の推移の解説。

IMG_20171012_113702.jpg

Koopman教授が紹介した3Dプリンターが世界の貿易に与えうる影響の図。

IMG_20171012_143953.jpg

Gereffi教授のプレゼンの目次。DigitalizationがGVCsにどのような影響を与えるかを正面から取り上げて議論をしようとしていたのが印象的でした。

IMG_20171013_100917.jpg

マッキンゼーのJeongmingさんの報告。個人的に一番刺激的なプレゼンだったと思います。

IMG_20171013_101657.jpg

自動化って新興国に一番影響与えるんじゃないの、というスライド。単純労働ほど自動化されやすいということを単純に適用したのか、労賃の安さ(相対的な自動化コストの高さ)までを考慮したものなのか気になります。

mmexport1507977367305.jpg

セッション3の様子。JamesがHuaweiを紹介しているところ。

 

登壇者は次の通りでした。

2017 Global Value Chain Innovation Development Summit(SHENZHEN)

 

Yi Xiaozhun, Deputy Director-General, World Trade Organization

GU Xueming, President, Chinese Academy of International Trade and Economic Cooperation, MOFCOM

Zheng Yanling, Secretary-General, Shenzhen Logistics and Supply Chain Management Association (SLSCMA)

Session 1:

Robert B. Koopman, Chief Economist, World Trade Organization

Pankaj Ghemawat, Global Professor of Management and Strategy and Director of the Center for the Globalization of Education and Management at the Stern School of Business at New York University and Anselmo Rubiralta Professor of Global Strategy at IESE Business School

Marion Jansen, Chief Economist, International Trade Centre (ITC)

Hubert Escaith, Visiting Scholar at Shanghai University of International Business and Economics (SUIBE) – WTO Chair Programme

Eric Thun, Peter Moores Associate Professor in Chinese Business Studies at Saїd Business School, University of Oxford

Xiao Feng, Vice President, Onetouch Alibaba

Session 2:

Gary Gereffi, Professor and Director of the Center on Globalization, Governance & Competitiveness at Duke University

Deborah Elms, Executive Director, Asian Trade Centre

Hubert Escaith, Visiting Scholar at Shanghai University of International Business and Economics (SUIBE) – WTO Chair Programme

Eric Thun, Peter Moores Associate Professor in Chinese Business Studies at Saїd Business School, University of Oxford

Li Guanghui, Vice President of Chinese Academy of International Trade and Economic Cooperation, MOFCOM

Feng Xiangyang, Director, Futian District Enterprise Development Service Center

Gao Wei, Chairman, Shenzhen Run In-time Supply Chain Management Co. Ltd.

Marion Jansen, Chief Economist, International Trade Centre (ITC)

Session 3:

Zhongxiu Zhao, Founding Dean of Research Institute for Global Value Chains, Vice‑President, University of International Business and Economics, China

James K. Lockett, Vice-President and Head of Trade Facilitation and Market Access, Huawei Technologies

Jeongmin Seong, Senior Fellow, McKinsey Global Institute Asia

Asei Ito, Associate Professor, University of Tokyo

Barco You, CEO Founder Dasudian Technologies

Ivan Uemlianin, Cheif Scientist & Co-founder Dasudian Technologies

Zhang Ye, CEO, AEE Technology

Mia Mikic, Director of Trade and Investment Division, United Nations Economic and Social Commission for the Asia and the Pacific (UNESCAP)

Session 4:

Rihong Liu, Deputy Director General, Policy Research Department, MOFCOM, China

Qu Jian, Vice President of China Development Institute (CDI)

Annalisa Primi, Head of Structural Policies and Innovation Unit & OECD Initiative on GVCs, Production Transformation and Development, Development Centre, Organization for Economic Co-operation and Development (OECD)

Deborah Elms, Executive Director, Asian Trade Centre

Helmut Kergel, Director, European Secretariat for Cluster Analysis

Qiu Pu, Senior Vice President, Eternal Asia

Lu Wenrong, Chairman Assitant, YH Global

 

現地メディア報道:

http://sz.people.com.cn/n2/2017/1013/c202846-30826234.html