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深圳在外研究メモ No.13 深圳大学北側の麻雀嶺工業園区付近を歩く編~元工業団地には ロボットスタートアップ、木工工房、コワーキング、メイカースペースが入居。「工場」からの脱皮を体感できる場所になっていた。

No.11の「 深圳市ソフトウェア産業基地(深圳湾)が意識高い編~Tencent新社屋、Stargeek, NAVER, そして総理コーヒー」では深圳大学のキャンパスの南側を紹介しました。今回は北側です。

北側は深圳の大通り、深南大道に面しており、そのランドマークは何といってもTencentの本社ビルです。Wechatの部隊が入居していると言われており、まさに中核的業務がここで担われているようです。メモNo.6で、TencentのVR部門を訪問した際にも紹介しましたが、ビルの下にはテンセントのキャラクターショップもあります。

ともかく、Tencentビルの東側の一角に麻雀嶺工業園区と呼ばれる区画があります。徒歩でも15分ほどで外周を歩けてしまうほどの小さい団地ですが、ここあたりにはほぼ工場はなくなっています。いまでは主にメーカーの本社機能やデザインハウスや貿易会社が入居しているようなのですが、歩いてみると「メイカー」的な側面も生まれていて、とても面白い地区になっていました

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深圳市博物館にあった、1980年代の深南大道の写真。文字通り何もなかった…。

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現在の深圳大学の北端部分。手前左が深圳大学の文科楼で筆者の所属研究所があるところです。そして奥がTencentビル。右手の建設中のビルは何ビルなのか不明。これらのビル沿いに深南大道が走っています。

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網掛けになっている箇所が麻雀嶺工業園区と呼ばれる工業団地、南側の緑色の場所が深圳大学です。(百度地図より)

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あるビルの入居企業。一見、普通というか、貿易会社やネット系の会社が多く入っている印象。

 

1)Ufactory~ロボットアームスタートアップ

例えばこの団地の中の雑居ビルのワンフロアには、ロボットアームのスタートアップ、Ufactoryが入居しています。2013年5月に創業し、Kickstarterを皮切りにクラウドファンディングで成功、現在では従業員30名(製造部門を除く)のロボットスタートアップになっています。創業者のTonyに話を聞けたのですが、彼は1989年生まれで、北京の地質大学を卒業、大学院在籍の2012年に深圳にきて、Makeblockで半年ほど働いたそうです。当時はMakeblockは従業員10名ほどだったそう。先週Makeblock創業者のJasenが言っていた情報では400人に達していたので、かなり初期のMakeblockの中で働いていたそうです。そして彼もロボットアームのスタートアップとして、Kickstarterに製品を出し、これまでに4世代の製品をリリースしています。第一世代の製品の初出荷が2014年5月ですから、それ以降ほぼ毎年製品がアップグレードされていることになります。

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Ufactoryはこのビルの二階に入居しています。

Indiegogoに出品された最新モデル。

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プロトタイプが展示されていました。

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創業者のTonyと。

 

2)LitcheeLab~メイカースペース

この団地の一角にはLitchee LabというFab Labがあります。私のメモに何回も登場しているLukeがここでUnityのワークショップをしていたことから知ったのですが、おもにSTEM教育系のワークショップが頻繁に開催されているようです。

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LukeのUnity講座。

 

3)忘言手作~台湾系木工工房

さらにその横には本格的な木工工房があり、家具や小物を講座形式で学ぶことができます。創業者の一人は台湾出身の職人だそうです。趣味で習いに来る人向けの授業と、制作した製品の販売も行っていました。中で働いている方に少し話を伺ったのですが、四川省成都市でデザインを学んだ方が深圳に来て、この工房で働いていました。

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ギター、家具など、比較的大きなものもここで加工していました。小物に特化した工房も深圳の別の場所に開設したそうです。

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小物の制作例。ひとつひとつのものに工夫やユーモアが感じられました。

 

4)方塘(Fun Town)~DIYカフェ

階段を上がると、なにやら面白そうなカフェが。入ってみると、ここも台湾出身の方が3年前に開いたカフェで、手作り石鹸の工房を備えていました。ここでも週1~2回のペースでDIY講座が開催されているそうです。

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ここで手作りされた石鹸。写真のものは保湿用に成分を調整しているもの。

 

5)思微(Simply Work)~深圳コワーキングスペースの大御所

同じく団地内には、深圳市内ですでに7か所にコワーキングスペースを展開している思微(Simply Work)もありました。別の場所の思微を訪問したこともあるのですが、超おしゃれで驚きました。内部の写真はあまりとれなかったのですが、オフィス内はほぼ満員状態で、20代の若者が、個人やチームでデスクまたは部屋を借り、プロジェクトを進めていました。フリーアドレスの机は月625元、フィックスアドレスは月1000元、4~5人向けの部屋が付き6000元でした。

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入居プロジェクトの事例。ハードウェアも少なくないようでした。

 

ここで取り上げたのは、この団地内で”Maker”寄りの場所だけで、もちろん、通常のオフィスとして利用されている区画が大部分です。ただ、このように小さな団地の内部にも、これだけ面白いスペースが生まれている、かなり”Make”な場所になっているのは感じられると思います。おそらく10年前、あるいは5年前の2012年には上に取り上げたものは一つも無かったでしょう。10年前には製造をしていたと思いますし、5年前にはまだこうした新しい動きはなかったと思います。この意味で、この団地一つを取り上げるだけでも、いかに深圳が「工業団地」から新たなニューエコノミーへの移行しつつあるかを感じられると思います。ともかく面白い場所がたくさんあるのですが、少しずつ深掘りしていこうと思います。

※参考サイトのメモ

China’s Creative Communities: Making Value and The Value(s) of Making

“Maker”をどう訳すのか問題。日本は「メイカー」、台湾は「自造者」、そして大陸中国では「創客」。大した問題じゃないかもしれないし、結構大事な問題かもしれない。

Ted Hungさんが感じた違和感

台湾のFablab TaipeiのTed Hungさんに先週会って、要約すると「大陸中国と台湾ではメイカーカルチャー結構違うんですよ」というお話を聞きました。とくにTedさんが「Maker Faire Shenzhenに行ったけど、退屈で、お金儲けのことばかり考えていて、違和感を感じた」と語っていた点、そして「中国大陸でメイカーを意味する「創客」は、よりスタートアップに近い発想だ」と指摘した点が面白く、それからこの問題について、少しだけ調べてみたので、メモしておきます。

本来一番知りたい問題は、各国のメイカーカルチャーがどれくらいローカルなもので、どれくらいユニバーサルなものなのか、そしてそれぞれの地域でローカルであることがどういった意味を持っているのか、という点です。この問題については、私なんかより、高須正和さんがハッカースペースについてのCodeZineの連載でたくさんの指摘をしていると思います。そこで高須さんは「おまいら」という言葉で、ハッカーたち、あるいはメイカーたちの共通する属性をとらえているのですが、一方でフランスではメイカーたちからより政治的な匂いもしたりして、この「おまいら」はどこまでユニバーサルな「おまいら」なのか、興味が湧くところです。

アンダーソンのMakerをどう訳すか

この点について自分は全然蓄積がないので、ここでは、ごくごく簡単に、メイカーズムーブメントの火付け役となったChris AndersonのMakers: The New Industrial Revolutionのタイトルが、どのように訳されているのか、という点を取り上げてみたいと思います。

日本では、上記のクリス・アンダーソンの書籍は、『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』(2012年、NHK出版)です。タイトルでは、あえて翻訳をしない、そのままアルファベットを記すという選択がされています。そして本文では、”Maker”は基本的に「メイカー」とされていますが、場所によっては次のような書かれ方をしています。

僕らはみんな作り手(メイカーズ)だ。人間は生まれながらのメイカーズで(お絵かきや積み木やレゴや手作りおもちゃに夢中になる子供を見るといい)、もの作りへの愛情は、多くの人々の趣味や情熱の中に生きている。

(邦訳版、p.20)

いま、世界中におよそ1000カ所の「工作(メイカー)スペース」――みんなで共有する工作施設――が存在し、驚くべき速さでその数は増えている。

(邦訳版、p.28)

つまり、”Maker”は、「作り手」、「工作」などといった日本語に翻訳され、それ自体はとても自然なことです。ただ、ここで「メイカー」というカタカナの表現は、いわゆる製造業企業を指す「メーカー」と差別化するために、意図的に「イ」が挿入されていることです。当然ですが、一般的製造業企業としての「メーカー」は、「メイカー」とは全く異なる、というわけです。2006年、日本語版のMake誌の第一号でのデール・ダハティ(Dale Dougherty)の「Make創刊に寄せて」では、カタカナにも訳さず、「Maker」と表記していたので、クリス・アンダーソンの議論が登場するタイミングで「メイカーズ」という表現が定着したのかもしれません。

日本では”Maker”の翻訳をカタカナとし、また「メーカー」と区別することで、誤解やあるいは何らかの解釈を加えることを避けた、と言えそうです。ただ、この場合にも、一般の読者や会話の中では「メーカー」と「メイカー」の区別が曖昧になってしまうという課題も抱えているように思います。本当に「メイカー」でいいのか、という点は考えねばならないような気がします。

台湾と大陸中国の差異

興味深いのは、台湾と大陸中国の間の差です。

台湾、あるいは繁体字圏での、アンダーソンの書籍のタイトルは、『自造者時代:啟動人人製造的第三次工業革命』(2013年5月、天下文化出版社)となっています。「自造者(Zizaozhe)」、自ら造る人、たしかに”Maker”として適切な言葉のように感じます。したがって、”maker space”は、「自造者空間」となります。

一方、大陸中国でのタイトルは『创客:新工业革命』(2012年12月、中信出版社)です。日本語の漢字に直すならば、「創客」、発音はChuangkeです。Eric Panのメイカースペースの名前も、「柴火創客空間」です。では「創客」とはどのような意味でしょうか?まずBaidu 百科の定義を引用しておきましょう。

原文:指不以赢利为目标,把创意转变为现实的人。(中略)在中国,“创客”与“大众创业,万众创新”联系在了一起,特指具有创新理念、自主创业的人。

訳文:利益を目標とせず、創意を現実へと変える人を指す。(中略)中国では、「創客」と「大衆創業、万衆イノベーション」政策はセットになっており、とくにイノベーションの理念を持ち、自ら創業する人を指す

Baidu百科より)

上記のBaiduでは、とくに創業が強調されていることが一つの特徴でしょう。さらに面白いのは、「創客」の事例として、孔子、スティーブ・ウォズニアック、Adrian Bowyer、クリスアンダーソンが同列に紹介されているのですが、この点にはここではあまり踏み込まないことにします。

一方、Wikipediaにおける「創客」の解説は次の通りです。

原文:创客(Maker,又譯為「自造者」)概念来源于英文Maker和Hacker两词的综合释义,它是指一群酷爱科技、热衷实践的人群,他们以分享技术、交流思想为乐,以创客为主体的社区(Hackerspace)则成了创客文化的载体。

訳文:創客(Maker, または「自造者」)という概念は英文のMakerとHackerの二つの単語の総合的な解釈で、科学技術を熱愛し、実践に熱中する人々を指し、彼らは技術の共有とコミュニケーションをとる思想を喜びとし、創客を主体とするコミュニティー(Hackerspace)が創客文化のゆりかごである。

Wikipediaより)

「創客」という言葉が創造された

ここで指摘されている興味深い事実は、「創客」が、MakerとHackerが融合した訳文となっているという指摘です。中国語で、Hackerは「黒客(Heike」なので、やはり「創客」にはHackerに含まれない意味が込められているということになります。文字面からすると、「創客」は、「イノベーションを行う人」または「イノベーションをするハッカー」というようなニュアンスが感じられます。

いずれにしても、”Maker”の大陸中国語への翻訳のプロセスにおいて、新たな概念が作り出されたという点が重要な意味を持っていると感じています。Fablab TaipeiのTed Hungさんと、上海のXinchejianのDavid Liさん(台湾の高雄出身)にもこの点を聞いてみたのですが、やはり、台湾では当初は「自造者」を使っていたが、徐々に「創客」も使うようになったとのことです。台湾や香港で用いられている繁体字のWikipediaでは、「創客」の項目が存在しないという点もこのことを表していると思います。David曰く、そのうち台湾でも「創客」が使われるようになるんじゃないか、とのことです。

大陸中国でも「自造者」が使われていないわけではありません。例えばMaker Faire Shenzhenのトークセッションの名前は、「自造談(Zao Talks)」だったわけです。ただ、Baiduで「自造者」を検索すると3810件、それに対して「創客」では5670万件ヒットするわけです。大陸では「創客」が「自造者」を圧倒しています。Eric Panに一度、なんで「創客」になったのか、一度伺ってみたいです。

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Zao TalksでのEric Pan

実は中国大陸では、アンダーソンのMAKERとは異なる概念や文脈で、メイカーズムーブメントが語られているのではないか…、このように感じるわけです。ここから先は、印象論なのですが、Ted Hungさんが感じていたようなDIYに近い概念がやはり「自造者」で、大陸中国における創業やビジネスマインドがより濃く反映された言葉が「創客」なのかもしれません。メイカーズムーブメントはそれぞれの地域のローカルな状況によって、その内容が少しずつ違うようなのですが、同じ中国語圏内で、二つの訳文が存在するという事実は、両地域におけるローカルな文化や雰囲気を反映しているのかもしれません。

台北訪問記(2016年11月), No.2, Meet Taipei観覧: 台北イノベーションウィークの目玉会場「花博」はあの甲子園予選が行われた場所だった…

コンファレンスに呼ばれて台湾にいったのですが、ちょうど「臺北國際創業週」を開催中でした。10月に大陸中国の側で「全国大衆創業・万衆創新活動ウィーク」があって、各地で関連の展示会が開催されていたのは知っていたのですが、台北でもこうしたイベントがあったとは知りませんでしたし、調べてみるととても考えさせられることばかりでした。

実際に訪問したのは2016 Meet Taipeiという展示会で、スタートアップ企業が数多く出店していました。その会場は、台北市北部の中山区、MRTの圓山駅の横にある、サッカースタジアム中山足球場を改造した場所です。Wikipediaで調べてみると、この元サッカー場は、1923年、日本統治時代に建設された圓山運動場(まるやまうんどうじょう)で、映画『KANO~1931海の向こうの甲子園~』で有名な、甲子園大会の台湾予選が行われた場所だそうです。その後、1989年にサッカー専用スタジアムに変更され、2008年には運動場としては閉鎖、その後「台北国際花の博覧会」の会場として使われ、現在でも、現地での会場の通称は「花博」でした。さらに現在ではアートやデザイン、そしてイノベーションにかかわる複合的な施設群となっています。

もう少しググってみると、大西正紀さんがブログ「台北の花博会場が、タレント&デザイナーにより音楽×食×芸術の商業施設に!」で書いていますね。そこでも「古いモノをリスペクトしつつ、きちんとその時代時代に求められていることを取り入れながら、常に変わり続けていくという視点」を台湾の人が持っていると指摘していますが、まさにそうですね。「台湾の人たちは、レガシーとは何かを知っている」。大西さんの指摘にまったく同意します。

 

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圓山駅駅舎、このすぐ横に会場がありました

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建物の外郭。塗装を塗りなおしていありますが、かなり古いことが感じられました。

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Meet Taipei受付

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会場の端からとった写真です

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会場を出た中庭からは、そこがスタジアムだったことがすぐにわかります

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展示場の裏に行ってみると、まさに昔の客席が残っています

写真をご覧になればすぐわかると思いますが、一見して建物の外郭は、かなり老朽化が進んでいました。スタジアムの外郭はほぼそのままで、スタジアムのグラウンド部分に展示会場を建設し、外郭の1階部分はお店やテナント(Fablab Taipeiなど)が入居していました。現地で、「なぜこれほど古いスタジアムを壊して再建設しなかったのか」と疑問に思ったのですが、単に私が歴史を知らないだけだったのでした。もっと勉強して、再訪問せねばなりません。

いずれにせよ、そう、この甲子園予選が行われた場所で、台湾中から新世代のスタートアップが集まるMeet Taipeiが開催されたわけです。Meet Taipeiは2011年から始まり、その主催団体はテクノロジー雑誌「數位時代」とMeetという団体でした。これを台北市の産業発展局、国家発展委員会、科技部、経済部中小企業処など、様々な団体がサポートしているという体制になっています。

4時間ほどしか見れなかったのですが、いくつか印象に残った点を書き残しておこうと思います。第一は、おもにソフトウェアや日用品のデザインなどがメインで、一部、ポータブル3Dプリンタなどのハードウェアもありましたが、深圳のMaker Faireと比べると全体としては少なかったと感じました。第二は、農業や食品といった、いわゆるテクノロジーから遠そうな領域で、有機農業や健康を売りにした出展もあった点が、とても台湾的だなと個人的には感じました。そして第三は、中小企業処や、大学なども含めて、公共機関・教育機関関連のインキュベーションプロジェクトからの出展が目立ったということです。台湾では、工業技術院がハイテク産業の育成の面で重要な役割を果たしてきたという話を聞いたことがありますが、こうしたスタートアップ企業の支援の面でも、公共機関が果たしている役割は大きそうです。

以下では、会場の雰囲気を写真を交えてご紹介します。

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台湾の農作物を越境ECで主に大陸向けに輸出するビジネス。「両岸青年創業支援」というような枠組みがあるそうで、上海とアモイにもオフィスがあるそうです。

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VR用のコンテンツを開発している会社。展示していた作品のなかで面白かったのは、ウイスキーの工場を見学するもので、ウイスキーの販売促進用とのこと。工業学校を卒業後に3Dインテリアデザイナーとして活動し、その後VR用のコンテンツにも事業を拡げたとのこと。端末はHTCのものでした。

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台湾科技大学の「創新育成中心」のパビリオンのなかで、かなりの集客を集めていた、ポータブル3Dプリンター。149ドルでの量販を計画しており、来年にはリリースとのこと。

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女性の創業を支援する「飛雁計画」、まさにFlying Geese Planと書かれていて興味をもって話を伺いました。とくに35~40歳の創業を支援しており、飲食やサービス業が主な事例とのことでした。

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このロゴをデザインしたデザイナーがいったい何を狙ったのか、熱く語っていました。

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フランスへの投資を呼びかけるセッション。「フランス人は意外に働き者ですよ」みたいな冊子を作っていて、なかなか面白かったです。台湾からの投資があるのでしょうか。

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プレゼン会場はこのほかにも2か所あって、企業家によるプレゼンや、賞状の授与などが行われていました。

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訪問団がいくつか来ていたのですが、喪服のグループがいたので声をかけてみたらやはりタイからの視察団でした。タイでも現在スタートアップ支援を進めているようで、その政策を立案実施するために、政府と企業の関係者が来ていました。

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デザイナーズグループ、buyMood。東京デザインウィークにも出展したことがあるそうで、Tシャツやステッカーなど、どれもほしくなるようなものでした。ウェブサイトから買えるとのこと。

Maker Faire深圳が開催された海上世界の歴史については、すでに取り上げましたが、台北でも、実に歴史のある場所が新しいイノベーションやアートの拠点となってきていることを知り、再開発とはかくあるべきだと感じました。また現地ならではの産業基盤を活かして創業しようとする若い世代が、台湾にもたくさんいるということも感じられる展示会でした。普段は大陸のことばかりを勉強していますが、こうした台湾の新しい動きにも視野を広げていきたいと考えるようになった、とても有意義な訪問となりました。

台北訪問記(2016年11月), No.1, コンファレンスのメモ:感じられた厳しい両岸関係、未知数の次期大統領

台北で開催されたInternational Conference on Mainland China’s Institutional Changes and Strategic Trends(「中國大陸之制度變遷與戰略動向」國際研討會)にて報告し、あわせて現地で開催されていたスタートアップ展示会のMeet Taipeiを少しだけ見てきたので、2回に分けてメモを残しておきます。

まずはコンファレンスについて。コンファレンスは全体で4つのセッション(政治、軍事、経済、両岸関係)に分かれていて、2人が報告、2人がコメントという形で進みました。

冒頭で、英語ではMinisterと書かれていたのですが、張小月・大陸委員会主任委員が登壇し、20分ほどかけて両岸関係の現状について流ちょうな英語で、そして慎重にスピーチしたのが印象的でした。大臣のスピーチとなるとどこでもこうなるのかもしれませんが、原稿を一字一句間違いなく読むスタイルでした。両岸関係の厳しい現状が、場当たり的な表現を許さないという印象も受けました。コンファレンス開催期間中にも、台湾の民間TV局の番組では、北京を訪問して習近平講話を聞いて拍手をした元国軍将軍に対して、激しい批判が展開されていました。この問題についてはすでに行政院が対応に乗り出しており、多少こうした状況も背景にはあったかもしれませんが、多くのメディアがコンファレンスの冒頭にはきて、その後、このスピーチについての報道もでています。

張小月主任委員のスピーチの概要は、現在、大陸中国側が交流のドアを閉ざしており、条件をつけず、つまり「1992年コンセンサス」を前提とせずに交流を再開するべきだという内容でした。こう書くととても単純な内容なのですが、これを、中国大陸の計画経済期の動乱(Turmoilと表現しました)、そして改革開放政策への転換、時代の転換のなかでの両岸関係の変化、その変化を基礎づけてきた発想、具体的な交流チャンネル、これら論点ごとに時間をかけて話していました。蔡英文政権になってから、政権間の公式の対話メカニズムが停止しているという、厳しい両岸関係を感じさせる幕開けでした。

政治セッションのプレゼンテーションのなかで一番メッセージ性があったのはBoston UniversityのJoseph Fewsmith先生の報告でした。公開文書に基づいて、そこで使われている表現が歴史的にどのくらいの重みがあるのか、という検討を加えていた点は、まさに長いキャリアを積んでこその視点だと感じました。「中国における最高権力の移譲が制度化されたというのは幻想であろう」、といった指摘は、考えさせられるものでした。

経済セッションでは、中華経済研究院の劉孟俊先生と、私が報告者でした。劉先生の報告では製造業を中心に検討が進み、中国企業の生産額、R&D、M&A、FDIといった各種のデータから、中国企業が新たなレベルに発展しつつある、というのが主要なメッセージでした。この点は自分の報告ともかなり認識が重なるところが多かったと感じました。

私の報告は基本的には職場のニュースレター“The Chinese Economy: Upgraded, Expanded, but not Restructured?”に書いた内容をベースにして、細部を拡充して30分ほど話しました。内容を要約すれば、中国産業の高度化は進むし、海外への関係も深まるが、構造改革が最も難しい課題だ、という主張をしました。

第一の高度化(Upgrading)の評価は劉先生のプレゼンの内容と重なる部分が多かったのですが、劉先生はハイアールや美的による先進国企業のM&Aに注目しているのが特徴的でした。私は最近注目しているドローン産業の事例で、製品開発をけん引している新世代の企業家が層として存在している点を特に強調しました。

第二の拡張(Expansion)については、やはり「一帯一路(One Belt, One Road)」計画を中心に若干の検討を加えました。特に中央アジアのカザフスタンにおいて、一帯一路と現地の「Nurly Zhol政策(光の道政策)」が結合しつつあるという点や、現地での中国投資の歓迎論、そして警戒感について言及しました。報告後の雑談で、特に政治学、国際関係の方からすると、このカザフスタンの箇所が最も面白かったそうです。

第三の構造改革(Restructuring)については突っ込んだ議論が一番難しいのですが、過剰生産能力の解消に向けて、現地報道をベースに検討を加えました。特に注目したのは河北省の鉄鋼産業事例で、「老朽化した生産能力の削減」はされているけれども、「新規生産能力の増設」も続いており、結果として過去5年の間に生産量がむしろ増加してきているというデータを報告しました。先日ある中国の先生からは、ガバナンスを強化しようとする国有企業改革の方向性をもっと理解すべきだというコメントをいただいたのですが、この点についてはまだまだ検討が加えられていません。

コメントでは李先生が、国内での地域統合、とくに首都圏、長江圏、といったレベルでの開発計画の存在にもっと注目が必要だと指摘していました。確かに、劉先生と私の報告では登場しなかった点で、メガリージョンと呼ばれるような地域発展は重要な論点になるだろうと思います。振り返ってみると、個人的には時間が許せば、もう少し両岸における経済交流の現状なども伺っておくべきだったなと思います。

今回のコンファレンスで一番言及された人物は、間違いなく中国大陸の習近平主席だったかと思いますが、二番手はひょっとするとトランプ次期米国大統領だったかもしれません。コンファレンス中の雑談や、フロアとの質疑応答でも、たびたび米国のトランプ大統領が何を考え、何をするか、どう対応すべきか、といった議論が展開されました。この意味で、政治や国際関係を扱っている専門家にとっては、非常に時機を得たタイミングでのコンファレンスとなっていたようです。現時点では直接的には何も言えない段階でしょうが、主催者の総括で指摘されたことは、米国がアジア太平洋地域から得る利益は大きく、これは大統領が誰になっても変わらない、あとは次期大統領がこの利益をどのように考え、守るのか、それ次第だ、という点でした。

こうしてコンファレンスを振り返ってみても、全体として経済に関する議論の位置づけは高くなかったと言えそうです。両岸はいま政治の季節に入っているのだと改めて感じます。