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深圳在外研究メモ No.27 メイカーフェア西安とBilibili World 2017に参加してみた編

7月は15-16日に陝西省西安市にてメイカーフェア西安(西安国际创客嘉年华)が、21-23日に上海市メルセデスベンツアリーナでBilibili World/VR/Macro Linkが開催されたので、見学してきました。

1. メイカーフェア西安(西安国际创客嘉年华)

メイカーフェア西安は深圳に本拠を置き、柴火創客にも在籍していたKevin(刘得志)が運営するMakerNetが主催しました。Kevinによると、二日間で4~5万人の入場者を迎え、特に子供の来場者の多さが特徴的でした。

そもそもなぜ西安での開催を考えたのかをKevinに聞いてみたところ、次のような回答でした。

深圳は若い都市で、ハードウェアの技術がある。西安には歴史があり、文化があり、そして理系の有力な大学がある。深圳と西安は全く違う都市だからこそ、つなげると大きなものが生まれる可能性がある。僕らは深圳で普段活動してきたが、西安と深圳がつながれば、何か面白いものが生まれると思う。

4月の深圳観察会でKevinと知り合って以来、やり取りをするなかで、日本からの出展予定者が多いこともあり、現地でのサポートを依頼され、設営や準備のボランティアをしたことも貴重な経験になりました。実際にサポートした業務は、①現地大学で日本語学ぶ学生をWechatで面接して、言語レベルを把握し、適切な日本からの出展者に割り振る、②FPVドローンレースを開催するにあたっての設営と当日の運営、③登壇者、出展者、ドローンレース周りの物資などと確認と手配、などなどでした。

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準備段階のホールの様子。

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ロボット漫才の様子。来場者は子供連れが多かったのが印象的です。

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メイカーといっても、伝統工芸系の出展者も多く、また来場者の反応も良い様子でした。

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日本からの出展とライブパフォーマンスを行った明和電機の展示。

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西安市書記を案内するKevin。

 

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ドローンレースの結果。日本から参加した横田敦さん、高梨智樹さんが2位に入賞しました。

 

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日本からも多くの出展者、レース参加者がいました。

現地報道1

現地報道2

 

2. Bilibili World/VR/Macro Link 2017

ニコニコ動画にそっくりなサイトとして有名なBilibili動画(中国では通称B站)。そこが主催する年一回の展示会、Bilibili Worldと関連ライブに参加してきました。位置づけとしてはニコニコ超会議に近いと思うのですが、展示は大きな企業ブースが多く、一部行動を一緒にさせていただいたニコ動のいよかんさんも、スタイルの違いを感じていたようでした。ただ、現場の熱気とスケールは圧倒的で、とくにメインのライブ、Bilibili Macro Linkのチケットはプレミアチケットと化しました。さらに面白かったのは、Bilibiliのライブのチケットを購入するためには、Bilibiliに登録し、さらに制限時間2時間のテストを経て、Level2の会員にならねばならないという鬼畜仕様です。参加するためのハードルを上げて、それでも満員であったことは、中国市場の大きさを感じさせるのに十分でした。

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展示会Bilibili Worldの入り口。

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展示会のブース割。大型の企業ブースが多かったです。

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ゲーム実況ゾーン。

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アトラクションゾーン。

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MAYBELLINE NEW YORKが、コスプレ用のメイク講座をしていました。コスプレ市場マーケティングとでも言うべき、面白い取り組みでした。

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Bilibiliの公式キャラクター33娘(左)と22娘(右)のコスプレとねんどろいど。運営が手配したコスプレイヤーだったようです。

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深圳の展示会でもみたHoloeraが出展していました。Gateboxに似た、ホログラム機器です。

 

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Bilibili VRライブの様子。中文ボーカロイド洛天衣を筆頭とするボーカロイドによるライブです。初音ミクのコアファンで、中国のボーカロイド事情にも詳しいEjiさんと一緒に見たのですが、いい曲が多いものの、多くはプロの作曲家によるもので、いわゆる「野生の」、あるいは「作ってみた」系の楽曲の広がりはまだまだ限られているという評価でした。2233が歌った「双眼Eyes」という曲は初音ミクのTell your worldを感じさせる良い曲でしたが、これもライブで初お披露目という、プロが制作したものでした。

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Bilibili Macro Linkの様子。踊ってみた、歌ってみた系の演出が多かったですが、おそらく一番盛り上がったのは、ソードアートオンライン(中国語では刀剑神域)の楽曲(Crossing field, シルシ, Catch the moment)を歌った、日本のアーティストLiSAさんだったと思います。LiSAさんのブログによると前日は福岡で歌っていたようで、ハードスケジュールのなか素晴らしいパフォーマンスでした。日本からはこのほかにGARNiDERiAさん、大黒摩季さんが出演し、どちらも盛り上がっていました。大黒摩季さんが中国の新作アニメの主題歌を歌っていることを初めて知りましたし、MCでは母親が中国東北部生まれであることに言及していました。

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スタジアムには若干タイムラグはあったのものの、Bilibiliで実況放映されているコメントも流れていました。

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フィナーレ。

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Bilibili Macro Linkの総責任者アーヨウさん(右)。25才らしく、この年齢でこの規模のイベントを総括していることに驚きました。

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終演後のメルセデスベンツアリーナ。上海万博が開催されたエリアにあります。

振り返ってみると、メイカーフェア西安のKevinも、Bilibili Macro Linkのアーヨウさんも、新世代の中国人ということができそうです。若い世代がイベントを統括し、新しい取り組みをけん引していることを実感した2つのイベントでした。

深圳在外研究メモ No.26 メイカースペースSegmakerでイベントを開催してみた編~ドローンミートアップと深圳観察会ワークショップ

深圳の新しいエコシステムとのつながりを深めるために開設されたニコ技深圳観察会Segmaker出張所。ここでこのほど2度ほどイベントを開催したのでメモしておきます。

1.ドローンミートアップ(6月25日)

一つ目は、ドローン業界関係者を集めた情報交換を行うドローンミートアップです。在外研究メモの No.23とNo.24で取り上げた「深圳国際ドローン展2017」に合わせて、日本から来たドローン業界関係者20名と、深圳のドローン業界関係者10名ほど、そして現地で活動をしている方々10名ほどをお招きにして開催しました。

日本側の参加者にはドローン・ロボティクスベンチャーの専門家やベンチャー企業経営者をはじめ、ちょうど展示会に来ていた日本UAS産業振興協会(JUIDA)の千田副理事長などが参加しました。中国側は、ドローンレース業界団体D1の創立者、ドローンのフライトコントローラーの開発者、群体制御を用いたスタートアップの創業者、そしてドローンスクールの経営者、そして深圳衛星テレビのドローン撮影部隊などが集まりました。

期せずして、ドローンの開発者、ソリューション事業者、パイロット養成のプロなど、多方面の関係者が集まり、特に中国側からのプレゼンは大いに盛り上がりました。例えばグループコントロールのスタートアップSkypixのLiu Chuhao氏は、DJIのフランク・ワンの師匠でもある李教授からも投資を受けているベンチャーの創設者で、北京の清華大学のイベントでドローンによる舞台表現をしている企業です。展示会ではおもにハードウェア企業が多く出展していましたが、深圳にはドローン業界の様々なプレーヤーが生まれています。

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開会直後の様子。

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深圳衛星テレビのドローン部隊が撮影した作品を上映。

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最後にグループフォト。

2.深圳ハードウェアスタートアップのエコシステム(7月4日)

二つ目のイベントは深圳観察会発起人の高須正和さん、そして製造請負のJenesisの藤岡淳一さんを登壇者として開催した「深圳ハードウェアスタートアップのエコシステム」。FacebookイベントやWechatでの広報を進めましたが、日本語イベントにも関わらず幸いにも上海や東京からの参加者も得て、ほぼ満員の状態になりました。

このイベントは、前回昨年12月に東大本郷キャンパスで開催したものの延長線上なのですが、後述するように、HAXにいるFujimotoさんも最後では登壇していただき、かなりリッチな議論ができました。

始めに私から深圳の大きな構造変化、とくに下請け加工の場からイノベーションの場となりつつあること、主要な特許データや代表的な企業家の紹介などをして、次に高須さんにご登壇いただきました。高須さんのスライドはこちらにアップロードされています。

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伊藤から若干の概説説明。

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高須さんの議論はまず、そもそもイノベーション自体の在り方が、2000年代半ば以降で大きく変わったという点からスタートしました。量的に測れる性能の工場ではなく、個人やコミュニティが量的には示しえないような好みやセンスで選ばれる製品・サービスがより重要になってきている、という指摘です。

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深圳でそれを体現しているのが、オープンソースハードウェアの低ロットからの試作および受託生産を行うSeeed。いかにSeeedがやっていることが新しいか、それは卓上印刷機が同人誌とそのカルチャーを育て、DTM(卓上音楽編集機)の登場が同人音楽を作り上げたように、デスクトップファブリケーションが広がることで、グローバルでIndieなモノづくりがうまれ、それを支え、育てるSeeedのような企業が登場した、というストーリーでした。

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一方で深圳には模倣の問題も存在。それを中国の企業家がどう見ているのかというセクション。コピー品が出る前に回収しなければならないというRobin Wu(通称シャンジャイ王)の意見と、コピー製品は結局製品の高度な作りこみを放棄しているので、わかるやつにはわかるし別セグメントだ、という上海のRex Chenの意見を紹介。

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続いてJenesis社の藤岡さんご登壇。製造の最前線で観察した深圳サプライチェーンのメリットデメリットをご報告いただきました。

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深圳の成熟しきったサプライチェーンに完全に乗っかる形で事業を展開している、との談。深圳に多数存在する、ソリューションハウスが提供する部品リストやサプライヤーリストを活用し、中華部品(ローカル部品)を活用することで短納期、低価格の製品供給を目指している。

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深圳を中心に形成された成熟したサプライチェーン。1時間以内に、電子部品モジュール、基板、金型、成型、ソリューションハウス、検査、さらに輸送インフラまでが揃う環境にある。

写真がないのですが、一方で、メリットだけでなく、デメリットもあるというお話も強調されていました。とくに、この流行りの大きなサプライチェーンのなかで調達できない尖った性能を持つパーツを利用しようとすると、むしろ輸入関税がかかり高価となってしまうそうです。

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Q&Aセッションでは、ハードウェアアクセラレーターHAXに現役で入居しているWalkies Labの藤本剛一さんにもご登壇いただきました。カナダから応募し、HAXで経験していること、そして実際に深圳でハードウェアを開発するなかで生じている問題点、とくに重要パーツが入手困難な場合も少なくないことなども率直にご報告いただきました。有難うございました。

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2つのイベントを開催してみて、深圳で深圳を多様なバックグラウンドの方々と議論する場所を作っていくことは有意義だなと感じました。在外研究メモNo.19でも若干紹介しているのですが、フィンランド、イギリス、フランス、韓国などの各国が自国のエコシステムと深圳をつなげようとしているなかで、Segmakerを利用して日本とのつながりが深まるのようなイベントを開催していければ、そのうち何かにつながるかもしれません。

講演会告知:深圳ハードウェアスタートアップのエコシステム(深圳硬件新兴企业的生态圈 )

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日時(时间):2017年7月4日18:30-20:30

会場(地点):深圳市福田区華強北賽格広場12階Segmaker(华强北赛格广场12楼赛格众创空间)

主催(主办方):ニコ技深圳観察会Segmaker出張所

事前登録:不要です(不需要登记)

言語:日本語(this workshop will be hold in Japanese, but welcome international friends to join. 这研讨会语言为日语,但非常欢迎国际友人过来参加)

 

登壇者(演讲来宾)

高須正和(teamLab)

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボ/ニコニコ学会β/ニコニコ技術部/DMM.Makeなどで活動、『ニコ技輸出プロジェクト』を開催。『メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。』(インプレスR&D, 2016年)を出版。ブログでも情報を発信:https://medium.com/@tks

 

藤岡淳一(創世訊聯科技(深圳)有限公司 董事總經理)

1996年千代田工科芸術専門学校卒、派遣技術者として家電大手の製造部門で勤務。デジタル機器ベンチャーを経て2011年にジェネシスを創業。2013年深圳工場を設立。イオングループの「格安スマホ」の納品を手掛けるなど、深圳のサプライチェーンの最前線で活躍。http://jenesis.jp/

 

司会(主持人)

伊藤亜聖(東京大学社会科学研究所/深圳大学中国経済特区研究センター)

 

タイムテーブル(时间表)

18:00開場、おいしいフルーツティを用意しております (18点开始入场,喝喝水果茶)

18:30講演会開始(18点半开始演讲会)

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連絡先(联系人):伊藤亜聖

Wechat ID: aseiito

Email: asei@iss.u-tokyo.ac.jp

(地図データなどシェアできるので、できればWechatでご連絡ください)

 

深圳在外研究メモ No.19 海外政府系テックプロジェクトと深圳のつながり編~深圳の、そして中国の新しい経済、新しいエコシステムと自国をつなげようとしているプロジェクトが続々

このブログシリーズで取り上げているように、深圳市が中国のなかでも注目されるテックベンチャーや実験の都市になっています。このことを反映して、国外から深圳への注目度も高くなっており、WIREDの動画Shenzhen: The Silicon Valley of Hardware、The Economistの記事 SPECIAL REPORT “Jewel in the crown: Welcome to Silicon Delta Shenzhen is a hothouse of innovationを筆頭に挙げることができます。

さらにこちらで色々と歩いていると、「国外政府系の出先機関」だけど、いわゆる深圳の下請け工場時代には絶対なかったようなプロジェクトが動いていることに気が付きます。先に結論を書いておくと、総じて、深圳の新しい経済、新しいエコシステムと各国をピンポイントでつなげるという共通性を見出すことができます。自分で見たり、直接当事者からお話を伺えている事例のみ書きます。

1)Sino-Finnish Design Park

深圳市は2013年6月にフィンランドのヘルシンキと姉妹都市協定を結んでいます。これをきっかけに1年5か月後の2014年11月にSino-Finnish Design Parkが開業。深圳市が力を入れるデザイン力を高めるためにこのデザインパークが開設され、国内外のデザインハウスや関連スマートハードウェア企業を誘致し、現在41社が入居が進んでいます。 福田にあるSIDA(Shenzhen Industrial Design Profession Association、深圳市工業設計行業協会)の大きな開発区内にあり、おそらくこの一帯は少し前まで工場または倉庫だったと思われるエリアです。

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55度に中身を保つ保温瓶。展示室には色々なプロダクトが並んでいます。

 

2)KOTRA深圳オフィス

日本で言うとJETROにあたるKOTRAはどうも中国国内の拠点の数が多いようで、深圳にも会展中心のすぐ近くにKOTRA深圳事務所が設立されています。この事務所は2014年12月に開設されており、その事業内容は興味深いです。一つは展示会の開催業務で、これはまあ普通なのですが、もう一つは韓国のAR/VR、ロボティクス、医療、ビッグデータ、画像認識系のスタートアップを深圳に連れてきて、こちらの投資家とのマッチングをやっています。シリコンバレー、イスラエル、シンガポールに続く第四のベンチャーのハブとして深圳を位置づけてサポートを行っているそうです。

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KOTRAの入るビル。

3)La French Tech Shenzhen

ラスベガスのCESでもフランスのベンチャー企業の数が米国、中国に次ぐ数だったことが注目を集めていました(日経記事「ブラブラカーだけじゃない 仏スタートアップが熱い」等参照。)。この背景の一つに言われているのが、フランス政府が推進するフレンチテック(La French Tech)というネットワーキングとアクセラレーション政策です。上記の日経の記事では、スタートアップを外に出して「火をつけ」、メンターとファンドをつけて「アクセラレート」する点が紹介されています。HAXのBenjaminもLa French Techを高く評価していて、観察会で訪問した際にも、失業保険をもらいながらスタートアップをできるし、みんなそれが当たり前だと思っている環境も含めて大事だ、という話をしていました(この点、Benjaminさんのプレゼン資料にも表れています:How to create 1,000 SONY)。

La French Tech深圳プログラムは2016年10月に正式スタートしており、Cecileさんにお話を伺ったのですが、活動内容としては①“Discover the Local Ecosystem”ツアーの開催(次はこれ)、②“École Centrale Graduates“プログラムと呼ばれる元留学生をフレンチテック関連企業を訪問するツアー、③毎月の深圳のバーでのカジュアルなミートアップ、④その他HAXなどでのミートアップやピッチイベントの開催とのことでした。

Ambassadorsと呼ばれるメンターには、HAXのBenjamin、Parrotのアジアパシフィックの代表TCHEN Elise氏、TCLのCHAMBON François氏 、ST MicroelectronicsのLECONTE Damien 氏が名を連ねています。日常的にはWeChatのLa French Tech Shenzhenのグループに100名ほどのメンバーがいるとのことで、ここで様々な情報が交換されているそうです。

Le French TechはHong Kongにすでに拠点があるらしく、そことの協力もしながらイベントの開催を行っているそうですが、香港ではコンサルタント事業が多い一方で、深圳はハードウェア系が強いため、プロジェクトとしては必ずしも一体感があるとは言えないそうです。La French Techの国外での仕組みは、話を聞いても正直まだよくわからなかった(というかかなり自由にやっていそうな感じだった)のでまた今後Cecileさんに教えてもらおうと思います。

Cecileさんご自身はワインを輸入し、それにQRコードやアプリケーションによるワインの特徴や体験を付加するようなアグリテックビジネスを展開しているそうです。

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観察会の時にもHAXのBenjaminは日本で起業する人を増やすうえで、La French Techが参考になると言及していました。

 

4)British Council “Hello Shenzhen” program

英国の文化事業であるブリティッシュカウンシルのプログラムでも、深圳のメイカーズムーブメントのコアメンバーを英国1か月呼び、英国のメイカースペースを訪問するツアーを開催しています。Hello Shenzhenプログラムと名付けられており、深圳側のファンド(深圳市国際交流合作基金, The Shenzhen Foundation for International Exchange and Cooperation)もついて費用がねん出されたそうです。深圳観察会で、柴火創客のVioletさんがこの体験をシェアしてくれたのですが、おおよそ下記の内容でした。

①4週間で3都市(London, Edinburgh, Cambridge)を訪問し、20社のベンチャースタートアップに面会、11のメイカースペースまたは組織を訪問

②深圳のメイカーが技術を重視したスタートアップとしての性格が強いのに対して、英国のメイカーたちはSocial Impactを重視している(例:METTLEという会社は視覚障碍者向けのイヤホンを開発)

 

深圳観察会にてイギリス訪問のプログラムを紹介してくれた柴火創客のVioletさん。

また、2017年5月13日、文化産業博覧会の分科会として、SIDA事務所にて”Hello Shenzhen”プログラム(第二回)の経験シェア会が開催されました。「創客西遊2.0」、つまり「メイカー西遊記2.0」というキーワードが的確で、基本的にはどの参加者もVioletさんと類似した英国と深圳のメイカーズカルチャーの差異を感じていたようでした。ツアー参加者10名のうち、4名はハードウェアメーカーや工業デザインハウスの青年創業者でした。

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深圳観察会にてイギリス訪問のプログラムを紹介してくれた柴火創客のVioletさん。

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“Hello Shenzhen”プログラム(第二回)の経験シェア会の様子。

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柴火創客のVioletさん。深圳+ロンドン+アムステルダム+成都、というフレームで新しいメイカーズの交流プロジェクトを準備中とのこと。パワフルな人達をつなげると、こうした新しいプロジェクトにつながっていく。

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オープンソースハードウェア・ラズパイで作ったロボットを、マインクラフト側でコントロールしてみよう、というプロジェクト。

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車いすを誰でもオーダーメイドのように調整できるようにしようというプロジェクト。英国側のメイカーが強調する”Social Impact”に影響され、こうした新しいプロジェクトに中国側の工業デザイナーが参画。

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「メイカー西遊記2.0」のメンバー。

 

5)そして日本はどうなのか?

ご覧の通り、かなりピンポイントで深圳のニューエコノミーを狙い撃ちにしたようなマッチングプログラムが動いていることがわかります。私も深圳に住みはじめて1か月なので、まだわからない部分もありますが、少なくとも上記のように政府が予算をつけている形で、日本と深圳(または中国)の新しいエコシステムやニューエコノミーをつなげようとしているプロジェクトは聞いたことがありません。このような不作為が深圳だけで起きているのであればまだいいのですが、もし仮にほかの世界のイノベーションの拠点でも生じつつあるとしたら、それは日本にとってはもったいないことだろうと感じます。民間でやればよい、という考えもあり得ますが、上記のような各国のプロジェクトが2014年からの2~3年で急激に動きつつあり、まだどれがベストプラクティスかはわかりません。それぞれの国ごとに状況は異なるので、答えはそもそもないのかもしれません。ただ、新たな越境したスタートアップやメイカーたちのコミュニティが生まれつつあるのを見ることができます。

日本の場合、とくに支援もなく自腹だけで運営されているニコ技深圳観察会がこうしたネットワーキングを担っているのは、正直例外的でもあり、逆にすごい気もします…。また、METIのフロンティアメイカーズ、JETROやJST(科学技術振興機構)は広い意味ではすでにこうした取り組みをやっているともいえますし、すでに日本からも視察にはたくさん来ているようです。

深圳在外研究メモ No.16 3Dプリンター工場見学編~デジタルファブリケーション機器の製造現場はきわめてアナログだった

深圳・香港では展示会が頻繁に開催されています。電子電機系の展示会に行くとロボット、VR、ウェアラブルなどが並ぶ中に3Dプリンター企業の出展ブースも並んでいます。その中で、小さいブースにプリンターを並べ、手に取った精度はなかなかで、しかし製品価格は3,200元(約52,000円)というメーカーがありました。興味をもったので声をかけて仲良くなり、後日工場を訪問しました。

工場は深圳市の北部、龍華の工業団地内の一室にあり、部屋3部屋のうち、1部屋が組み立て、1部屋がオフィス、1部屋が来客対応用でした。

海南大学の大学生が卒業後の2014年に深圳で創業したプリンターメーカーで、現在従業員数は20名ほど。創業者は1990年生まれです。サーボモーターをはじめ、主要な部品はすべて近辺で買い付け、フレームのみを板金で特注し、あとは部屋で組み立てていました。3Dプリンター内部のソフトウェアについては独自の改変を行っているらしいのですが、このあたりの話は聞くことができませんでした。

販路は基本はEコマースで、中国国内は天猫、JD、国外はAliexpressで販売しており、最も数がでているモデルは機械のサイズが420mm*420mm*460mmで、最高精度0.1mm、ノズル直径0.4mm、価格が3,200元です。この価格にして、重量は18kgで、フレームはすべて金属でできていました。製品の中で最も重点を置いている箇所はフレームだということで、重量のあるフレームを使うことで、機器のブレを避けることを目指していました。工場内でも組み立て工程での調整はすべて六角ネジでの調整となっており、あとで知り合いに聞いてみたところ、やはりこの工程が重要だとのことでした。デジタルファブリケーションの代表格である3Dプリンターの生産は、意外にも極めてアナログだということがよくわかりました。

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工業団地、というかアパートの一室に…

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3Dプリンター工場が。むせかえる暑さの中、組み立て作業が進められていました。

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現在の最も「大衆路線」であるモデル。価格のわりに、フレームがしっかりしており、確かにその点は同価格帯の他社製品との差がありそうです。

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最大サイズ、縦1000mmのプリンター。特注で3万元とのことでした。

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共同創業者の李建さん。現在開発中の小型モデルも紹介してくれました。

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持っているネジが明らかに普通とはちがうもので、それを使ってプリンターのヘッドが乗る軸を微調整する工程。ここがずれるとすべて終わりなので、最も重要な工程の一つ

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本体に関わるネジは六角ネジ。

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出荷前には全台で試し打ちを行う。室内には失敗したプリント制作物も結構置いてありました。

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試し打ちの一つはドラえもん。頭の球体部分がきれいに出るかどうかがチェックポイントの一つとのこと。

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応接室に置いてあったサンプル。展示会会場やこうした場所においてあるのは、「成功品」であるということが工場を見るとよくわかりました。カメラのプロトタイプ用のプリント製品なども置いてありました。