補助線としての『中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国』

『中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国』(https://www.amazon.co.jp/dp/4865811966/)という一風変わった本が出た。ジャーナリストの高口康太さんが声がけ人となって編集したもので、「中国だめだ」と「中国スゴイ」の両極となりがちな現状を、もう少し時系列的、そしてもう少し多面的に描こうとするものだ。

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同書の「はじめに」は下記の高口氏HPに記載されている。少しだけ抜粋する。

中国はわずか数年間で急激な進歩を遂げたのか、それとも遅れた中国のイメージが間違いだったのか。いや、いまの先進国・中国のイメージこそが誤りなのか。「遅れている、汚い、ダサい、パクり、貧しい」というB級中国、「最先端、テクノロジー、イノベーション、金満」というS級中国、果たしてどちらの中国像が正しいのだろうか?
じつは、「どちらでもある」が正解だ。「遅れた/進んだ」という議論は、ある社会は決められたルートを通じて成長するという前提から成り立っている。たとえば、「いまの中国は30年前の日本と一緒」というとき、中国は昔の日本と同じような過程を経て成長していくと考えているわけだ。
ところが実際はというと、発展の仕方はかなり違う。なにせ、追いかける側は先進国がどのような成長をしているのかを知っている。バカ正直にねじ曲がった道を一歩一歩進むのではなく、ショートカットして最先端にいきなり追いつこうと考えるのも当然だ。

出所:http://kinbricksnow.com/archives/52028421.html#more

高口氏が別のところで言及しているとおり、本書『中国S級B級論』は中国屋さんの手による、時系列を念頭においた記述、つまり縦糸の議論だ(中国史の人からは笑われる水準であったとしても)。そこで編者が想定しているのは高須正和さんらの『メイカーズのエコシステム』(https://www.amazon.co.jp/dp/B01AXRCDTU)が描いた、非中国屋の視点からの中国の発見、つまり横糸の議論だ。

二つの議論で強調されるテーゼは異なる。横糸の議論から強調されるのはよりグローバルなトレンドとしてスタートアップの育成の仕組みの拡大であり、テクノロジーの発展と活用の重要性である。縦糸の議論から強調されるのは、中国に革新と後進が同居し、同居するからこそ、その革新は泥臭く大胆なものとなる姿だ。

実際には二つの力が同時に機能している。だからこそ異なるバッググラウンドを持つ人との協働作業が必要になる。

澤田翔氏のnote「ファーウェイへの禁輸措置はAndroidに何をもたらすのか」(https://note.mu/shao1555/n/nd46d5624ad30?fbclid=IwAR0WholhoD8W8Wotzh92K3y-AXjNkpsTWkVjzWnAHJ-4b9UzNpS8iSVaias)はそのごく最近の、そして明らかに中国屋さんには書けないが、中国問題にかかわる記事である。

ニュースには日々、米中摩擦、技術覇権といった大問題が広がる。その震源地(中国とアメリカの両方)を理解することは容易ではない。容易ではないが、事実を収集して、縦軸と横軸からの補助線を引いていくしかない。