深圳市のベンチャー企業の新たな集積地が南山区に生まれており、その中でもソフトウェア産業基地が一つの拠点となってきたことをはすでに何回か取り上げてきました。メイカーフェアー西安の主催者であるKevin率いるMakerNetが、9月に福田区のコワーキングスペースから南山区ソフトウェア産業基地のRocketspace Shenzhenに移転したこともあり、Rocketspaceに最近時々お邪魔しています。
Rocketspaceはサンフランシスコに本拠を置くコワーキングスペース運営会社で、Uberをインキュベートしたという実績を誇り、現在深圳を皮切りに中国国内での拠点拡張を進めています。今回Rocketspace Shenzhenのキーパーソン、Leoの好意もあって、日本のスタートアップやVCの訪問に合わせて小さなイベントを開催してくれました。Rocketspace Shenzhenのスタッフで、今後はRocketspace Beijingの運営を担当するIphieさんが最初にスペースの概況を案内してくれたあとに、5社の関連ベンチャーがプレゼンをしてくれました。
以下はその様子です。
訪問団の様子。オープンスペースでやっているのでだんだん人も増えていきました。
はじめにIphieさんからRocketspaceについての簡単な説明。出張直前にも関わらず企画を受けてくれてありがとうございました。彼女は早稲田大学で4年学んだ方で、英語がとても達者です。
おそらくすごく大事なスライド。”Global Ecosystem”の一言。世界に横展開して、スタートアップをインキュベートする、という方針。Shenzhen Campusは今年6月にオープン。現在19のスタートアップが入居。8か国の出身者、15の産業というダイバーシティがあり、最近は沢山のイベントも開催しています。日本からの入居チームまだない状況で、絶賛募集中とのこと。入居費だいたいいくら、と聞いたら「へへ、それは内緒だな、君たちがどれだけcoolか次第だね!笑」と言われました。Coolな人は是非どうぞ。
最初にプレゼンしてくれたフランスのVRベンチャーⅩⅩⅡ(Twentytwo)のJuian。本国に60名の従業員がおり、深圳には6名。VRを活用したメディア/エンターテイメント系のサービスを提供しており、とくにフランスのテレビ局のVoiceという番組では最大100万人が同時にVRによる歌唱審査員を体験したとのこと。
二社目のMalong TechnologiesのNoraさん。めちゃめちゃ盛り上がりました。6月頃に世界的な画像認識AIコンテストで深圳のスタートアップがグランプリをとったというニュースがあり、その会社には興味があったのですが、話を聞いていくとこの会社でした。画像認識を中心としたAIの開発とそれによるオーダーメイドソリューションの提供を行っており、「AI×EC」、「AI×ファッション」といった切り口で、BtoBのAIソリューションを提供。この写真は画像認識技術を使って、清明上河図を認識した画面で、「人」、「動物」、「乗り物」をそれぞれサークルで囲んで認識していることがわかります。
もう一つ盛り上がったのは、売れている服の画像を処理することで、どの色が過去に流行ってきたかをはっきり示すこの図。「今年は赤が来ています」というトレンドを具体的なデータ、さらには顧客属性ごとに示すことが可能になっています。データベース次第ではこのような処理がすでに可能になっていることを初めて知りました…。
三社目の66iFuelのCuiさんとRocketspaceのLeo。66iFuelは電気自動車向けのパワーステーションのビジネスを行っており、どの車種、どの支払いプラットフォームにも対応するシステムを開発しているベンチャー。CuiさんはTencentで有力なエンジニアであったとのこと。
四社目のMaybeのMengさん。スタンフォード大学、清華大学などの卒業生が立ち上げたディープラーニング用チップセットの開発ベンチャー。MengさんはサンフランシスコのYcombinatorにもいたとのことで、ハイプロファイルな開発陣営で、今後ニーズが見込まれるローカル端末内、しかもスマホではないスマートデバイス端末におけるディープラーニング用チップの開発を行っているとのこと。製造はTSMCと協力しているらしく、あふれ出る自信が印象的でした。
5社目は、360度カメラのKANDAOのLionelさん。かなり時間を押してしまったのであまりじっくりお話を伺えなかったのですが、6つカメラがついた360度カメラで、デプスが取れ、さらにステッチの精度も高いというプレゼンでした。
3社の処理を見比べて、ステッチの精度が高いことを示すLionelさん。
南山区に集まるVR、AI、EV関連スタートアップの一端をRocketspaceで見たわけですが、グローバルなエコシステムのなかで、とくにハードウェアのサプライチェーンに近いことを活かしながら深圳でベンチャーが生まれていることが確認できたと思います。彼らを引き続き追いかけていこうと考えています。
「深圳在外研究メモ No.36 南山ソフトウェア産業基地のRocketspaceでVRとAIベンチャーに出会う編~「深圳市南山区的なスタートアップ」とはたぶんこんな感じ」への1件のフィードバック
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