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深圳在外研究メモ No.34 深圳開催のWTOグローバルバリューチェーンコンファレンス2017に参加してみた編~サプライチェーンにDigitalizationとChina Effectを入れたらどうなるのか?

10月12-13日に深圳市にてWTOが主催したコンファレンス、2017 Global Value Chain Innovation Development Summitにパネリストとして参加しました。2015年から開催されており、今年はWTOのチーフエコノミスト、Robert Koopman教授が呼びかけ人となっていました。テーマは国際価値連鎖(グローバリューチェーン, いわゆるGVCs) で、私の理解では既存のバリューチェーンに、(1)中国の影響(China Effect)、(2)デジタル化(Digitalization)を入れると何が起きるのか、という点に議論が集中していたと思います。

登壇者は投稿の末尾に載せておきますが、Robert B. Koopman (Chief Economist, WTO)、Gary Gereffi (Duke University)は付加価値貿易論や国際価値連鎖の大家ですし、Pankaj Ghemawat(New York University)は国際ビジネスの議論で著名です。これらのメンバーとGVCsの未来を議論できた、とても贅沢な二日間でした。私はこの分野で全く成果を挙げていないので、たまたま深圳にいたから声がかかったわけで、ラッキーでした。

1.セッションの構成

セッションの構成は、以下の通りです。

(1) NEW TRENDS IN GLOBAL ECONOMY, GLOBALIZATION AND GVCS

(2) SESSION 2: THE GOVERNANCE OF GLOBAL VALUE CHAINS

(3) SESSION 3: HOW TECHNOLOGICAL INNOVATIONS, SUCH AS AI, ROBOTICS AND BIG DATA CAN HELP GVC UPGRADING?

(4) SESSION 4: REGULATORY FRAMEWORKS FOR GVC UPGRADING AND ECONOMIC AND INNOVATION CLUSTERS

最初にセッション1でグローバル化そのものを議論し、セッション2でそのガバナンスの議論をGereffi先生を中心にして、セッション3で技術、とくにAI、自動化、ビッグデータがGVCsにもたらす影響を、そしてセッション4で政府の役割を議論するという流れです。私はセッション3にパネリストとして参加しましたが、当初声がかかった時点でのセッション3は「イノベーションと政府の役割」のようなテーマだったのですが、しばらくしてからAIとビッグデータの役割という点に焦点が変わり、驚いたのですが、結果的には非常に刺激的なセッションになりました。

2.全体を通じた重要な論点

 2日間の中で論点となっていたのは以下の4点だと思います。

論点1. Globalizationが逆流しているようにも見えるがどう考えるべきか?

この論点についてはいくらでもすでに研究があると思うのですが、学者に加えて政策担当者や企業家も登壇したことで、米国トランプ政権の影響やその背景、グローバリゼーションによる受益のあり方の不均一性が論点となっていました。

基調講演をしたPankaj Ghemawat教授は、いくつかのデータから見て、グローバリゼーションが退潮しているとは言えず、特にこの数年間に国境を越えたデータのやり取りが急激に伸びている点を重視していました。従来の貿易や投資関係に加えて、データのやり取りが新たなトピックになっている、ということになります。

論点2.DigitalizationはGVCsにどのような影響を与えるか?

第二の、そして2日間を通して最も頻繁に議論されたのは、経済のデジタル化、そしてAI、ビッグデータ(およびそのプラットフォーマー)、ロボティクス/自動化といった要因が世界の価値連鎖に与える影響でした。明確な議論の方向性が見えなかったことも事実ですが、それだけ様々な意見が提出されていたとも振り返ることができます。Koopman教授が基調講演で、3Dプリンターの発展が、中間財生産のローカル化を通じて、世界の貿易量を大きく減らす可能性があるという研究を紹介していたのは面白かったです。

この論点を特に議論したはセッション3でした。セッション3の論点提供者だったJeongmin Seong(Senior Fellow, McKinsey Global Institute Asia)は、むしろ新しいレベルのグローバリゼーション、とくにデータのやり取りとAI/機械化の影響の広がりが起きると指摘していました。とくにAIの影響は、仕事の性質によって影響を受け、判断が必要ない単純作業ほど自動化されていくため、その影響は特に今後新興国ほど現れるだろうと述べていました。中国におけるイノベーションのパターンについても指摘していたのですが、とても密度の高い報告だったと思います。

この他に印象的だったのは、James K. Lockett(Vice-President and Head of Trade Facilitation and Market Access, Huawei Technologies)が「DigitalからIntelligentへと進む。Smart PhoneはIntelligent Phoneになるだろう。今までは人間がスマートフォンの使い方を学習してきたが、今後はスマートフォンがあなたを学習するようになる(now you learn your phone, but in the future, your phone will learn you)。これは不可避の方向性だ」といった指摘をしたことでした。your phone will learn youは結構なパワーワードで、昼食の時も話題になりました。あとは「データは新しい石油だ」説を皆どう見ているか、などというざっくばらんな議論もありました。HUAWEIのJamesが「石油じゃないよ、適当な比喩じゃない。そもそもデータは物じゃないし。」と言って、それに対してビッグデータ屋さんのBarcoが「データの種類と掘り方(アルゴリズム)次第でしょ。意味のないデータも多いし、整理されていないデータはまあ価値は引き出しにくいけど、腕次第でもある」みたいなやり取りがあって、この議論はもっとじっくりしたかったと感じました。PankajやJeonmingが指摘した「越境データフローの増加」についてはIvanとご飯を食べているときに、「データフローの中心は動画だろうから、ぶっちゃけみんながYoutube見ているだけなのでは」という議論もなかなか面白かったし、このあたりはすこしデータを探してみたいところです。

私はセッション3のパネルセッションでは(1)会議全体の論点の整理をしたうえで(2)日本におけるIndustry4.0を巡る議論の進展(トヨタ生産方式との異同を巡る話など)、(3)深圳まわりで、工場内での自動化やシステムの効率化は見られているが、個別工場を越えたサプライチェーンレベルでのデジタルな同期化は、自分が見た中ではあまり感じられていないこと、を指摘しました。

論点3.China EffectはGVCsにどのような影響を与えるか?

もう一つの重要な論点は、中国の影響で、その中には(1)中国の国内市場から育ってきたAlibabaをはじめとする巨大なプラットフォーマーが与えうる影響、(2)一帯一路の影響も含めて、中国から世界への貿易投資の動きが今度どうなり、何が起きるか、(3)深圳はこの新しい時代にどのような役割を果たすことができる、が含まれていました。正直GVCsのコンファレンスで一帯一路がでてくるとは想像していなかったのですが、OECDの研究所でも議論がされているようです。

論点4.国際機関、政府(地方政府を含む)の役割はどう変わるか?

最後の論点は、Digitalizationの時代にWTOのような国際機関、そして政府はどのような論点に直面し、どのような政策を実施すべきか、という点です。直面する課題の筆頭は、データの管理の問題で、データ利用について規制をすべきか、データ利用による企業の応用をどこまで見守っていくべきか、という点です。そしてデジタル化の時代に、政府はどのようなイノベーション政策や関連政策を実施すべきか、という論点も含みます。深圳市政府は広域地域開発計画(ビッグベイ)によって、サプライチェーンの広域化を図りながらも、人材への優遇政策を実施することで、そして企業のニーズを掘り起こしていくことを重視しているようでした。

Zheng Yanlingさんが総括の挨拶で、「アリババはプラットフォーマーとかエコシステムというけど、結局閉鎖的で、強引にベンチャー企業を買収しているようにも見える。でもアリババが好きな人も、アリババが嫌いな人も、アリババがやっていることを恨むことはできない、なぜなら彼らは技術によって発展を追求しているだけで、彼らには責任はないからだ。好きでも嫌いでもデジタル化、技術の進歩は止まらない。」という趣旨の発言をしていて、中国の現場で、体験している人ならではの切迫した言葉ゆえの説得感がありました。閉会の挨拶のなかでKoopman教授が来年も開催すると言っていたので、また声をかけてもらえるように努力したいと思います。

以下は会議の様子です。

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Pankaj Ghemawat教授によるプレゼン。このタイトルの本がでているらしいです。

 

 

越境データフローが増えていることを強調。

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Koopman教授による、分類別付加価値貿易額の推移の解説。

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Koopman教授が紹介した3Dプリンターが世界の貿易に与えうる影響の図。

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Gereffi教授のプレゼンの目次。DigitalizationがGVCsにどのような影響を与えるかを正面から取り上げて議論をしようとしていたのが印象的でした。

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マッキンゼーのJeongmingさんの報告。個人的に一番刺激的なプレゼンだったと思います。

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自動化って新興国に一番影響与えるんじゃないの、というスライド。単純労働ほど自動化されやすいということを単純に適用したのか、労賃の安さ(相対的な自動化コストの高さ)までを考慮したものなのか気になります。

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セッション3の様子。JamesがHuaweiを紹介しているところ。

 

登壇者は次の通りでした。

2017 Global Value Chain Innovation Development Summit(SHENZHEN)

 

Yi Xiaozhun, Deputy Director-General, World Trade Organization

GU Xueming, President, Chinese Academy of International Trade and Economic Cooperation, MOFCOM

Zheng Yanling, Secretary-General, Shenzhen Logistics and Supply Chain Management Association (SLSCMA)

Session 1:

Robert B. Koopman, Chief Economist, World Trade Organization

Pankaj Ghemawat, Global Professor of Management and Strategy and Director of the Center for the Globalization of Education and Management at the Stern School of Business at New York University and Anselmo Rubiralta Professor of Global Strategy at IESE Business School

Marion Jansen, Chief Economist, International Trade Centre (ITC)

Hubert Escaith, Visiting Scholar at Shanghai University of International Business and Economics (SUIBE) – WTO Chair Programme

Eric Thun, Peter Moores Associate Professor in Chinese Business Studies at Saїd Business School, University of Oxford

Xiao Feng, Vice President, Onetouch Alibaba

Session 2:

Gary Gereffi, Professor and Director of the Center on Globalization, Governance & Competitiveness at Duke University

Deborah Elms, Executive Director, Asian Trade Centre

Hubert Escaith, Visiting Scholar at Shanghai University of International Business and Economics (SUIBE) – WTO Chair Programme

Eric Thun, Peter Moores Associate Professor in Chinese Business Studies at Saїd Business School, University of Oxford

Li Guanghui, Vice President of Chinese Academy of International Trade and Economic Cooperation, MOFCOM

Feng Xiangyang, Director, Futian District Enterprise Development Service Center

Gao Wei, Chairman, Shenzhen Run In-time Supply Chain Management Co. Ltd.

Marion Jansen, Chief Economist, International Trade Centre (ITC)

Session 3:

Zhongxiu Zhao, Founding Dean of Research Institute for Global Value Chains, Vice‑President, University of International Business and Economics, China

James K. Lockett, Vice-President and Head of Trade Facilitation and Market Access, Huawei Technologies

Jeongmin Seong, Senior Fellow, McKinsey Global Institute Asia

Asei Ito, Associate Professor, University of Tokyo

Barco You, CEO Founder Dasudian Technologies

Ivan Uemlianin, Cheif Scientist & Co-founder Dasudian Technologies

Zhang Ye, CEO, AEE Technology

Mia Mikic, Director of Trade and Investment Division, United Nations Economic and Social Commission for the Asia and the Pacific (UNESCAP)

Session 4:

Rihong Liu, Deputy Director General, Policy Research Department, MOFCOM, China

Qu Jian, Vice President of China Development Institute (CDI)

Annalisa Primi, Head of Structural Policies and Innovation Unit & OECD Initiative on GVCs, Production Transformation and Development, Development Centre, Organization for Economic Co-operation and Development (OECD)

Deborah Elms, Executive Director, Asian Trade Centre

Helmut Kergel, Director, European Secretariat for Cluster Analysis

Qiu Pu, Senior Vice President, Eternal Asia

Lu Wenrong, Chairman Assitant, YH Global

 

現地メディア報道:

http://sz.people.com.cn/n2/2017/1013/c202846-30826234.html

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