在外研究メモのNo.9で、華強北エリアで開催されたレーザーカッターのワークショップに参加したことを書きました。このワークショップに来て現場の講師役を務めていたレーザーカッターメーカーが、東莞市雷宇激光設備有限公司です。今回この会社を訪問できたので、そのメモをまとめておきます。
東莞市沙田鎮にある工場入り口。2010年から2013年にレーザーカッターの貿易を始めたものの、品質の管理に苦労したため、2013年5月に自ら生産に参入。現在、従業員数は25人ほどの小さな工場でしたが、とても若くまた明るい雰囲気の工場でした。基幹電子部品はすべて外部からの購入ですが、アルミフレームの切削加工は自社内でおこなっており、後述するレーザーチューブの検品を全量行うことで、製品の品質を安定化させていることが、この価格帯のレーザーカッターとしての差別化につながっているようでした。
当社の主力製品であるNova、販売価格は約2万元(36万円)。
木材加工の例。
同上。
アクリル加工の例。
5層の加工による毛沢東像。
工場の生産現場。
コントロール系統が入る箇所。サーボモーターとコントロール系統は雷賽智能のものを使用。
前回、3Dプリンター工場を訪問した際にも明らかだったのですが、XY軸をコントロールする軸自体を安定させることが重要で、ここは手作業での調整がものを言います。また、サーボモーター、そしてコントロール系統が深圳東莞エリアで製造されていることの意味も大きいでしょう。木材加工やアクリル加工のように、それほど精度を求められないセグメントでは、もはや現地調達されたサーボモーターとコントローラーで十分な性能が得られます。「XY軸を正確に動かし、それにレーザーを連動させる」というシンプルな課題に安価に応える現場がここにあると感じました。
炭酸ガスチューブ。
工場を見学した中で、案内してくれたKen(副総経理)が最も大事だといったのは、炭酸ガスチューブのエイジングと検査工程でした。Ken曰く、米国産のサイズのレーザーを購入すると10万元(約160万円)かかるそうで、それに対して中国産チューブの価格は1/20以下。寿命は約1/10で、米国産4万時間に対して中国産は4000時間ほどで交換が必要になるそうです。Kenによれば、雷宇の現在の販売先である欧米の工場や、手工芸用の教室、そしてメイカースペースでは、それほど長時間の使用をしない場合が多いため、4000時間の寿命で2年ほど持つそうで、寿命が来たら交換する形でコストを抑えているとのこと。
アルミ部品の加工現場。
ドイツの代理店関係者との写真。販売実績の90%が海外で、ドイツに300台、米国に200台、日本にはまだ3-4台の納入にとどまっています。中国国内でもメイカーズムーブメント(創客)の広がりによってニーズが生まれているそうですが、圧倒的に3Dプリンターへのニーズが勝る状況にあり、こうした教育系市場へのレーザーカッターの普及にはまだ時間がかかりそうです。むしろ東莞ではアパレル生地の裁断用のレーザーカッターメーカーが多数あるとのこと。
記念撮影。ともかく現場の明るい雰囲気が印象的でした。
訪問終了時には、記念撮影したものが木版に彫刻されて、プレゼンしていただきました。
Kenさん、ありがとうございました!
「深圳在外研究メモ No.25 ローカル系レーザーカッター工場を訪問する編~東莞市の雷宇激光を訪問、メイカースペースを支える現場を見た」への1件のフィードバック
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