ニコ技深圳観察会、2日目を振り返っておきます。
1.Trouble Makerの提携工場訪問~ローカル工場に最低限の外資系のテイストを加えた工場
一日目に訪問したメイカースペースTrouble Makerの提携先工場(龙岗)を訪問しました。
従業員60名の工場で、応対してくれたRaffaele Capuanoさん(イタリア人)のお父さんが2000年に設立。ゲーム機のコントローラー(互換系)をつくり、全盛期には工場の従業員数は600名を超えていたとのこと。業務は金型の製造と、それ使ったプラスチック射出成型がメインの事業でしたが、業務の規模は縮小してきたそうです。新しい試みとして、2016年からメイカーズスペーズTrouble Makerの案件に協力するようになった、という流れだそうです。見学時には、金型工が3名、その他は組み立てラインや加工ラインに20名程度でした。
特徴として個人的に感じたことは、第一に、金型工が3人おり、メイカースペースからの案件を金型から制作できること、そして第二に、機械設備はローカル系を活用しているのでコストは押さえられている一方で、加工プロセスでちょっとした包装や配慮をする点に、品質への若干の配慮がみられた点です。率直に言えば、かなりローカル系の中小射出成型工場の雰囲気に近い一方で、イタリア人が管理を行っていることで、欧米市場向け製品に求められる最低限の品質を確保している、と言えそうです。
工場一階の金型加工エリア
二階に設置されていたチップマウンター
はんだ付け
車載ソケットのUSB変換プラグを生産していました
2.Dobot~スピード感溢れるロボットアームスタートアップ
3月に訪問した際にも見学したロボットアームベンチャー、Dobotを再訪できました。そのエントリーにすでに書いたのでここでは詳細は省略しますが、ホビー用のロボットアームから、徐々に工業用のロボットアームに業務範囲を広げるべく、努力しているところだそうです。2015年9月にKickstarterで62万ドルを集め、本格的に始動してからわずか1年半の間に従業員数は80名、うち45名がR&Dだそうです。3月に訪問した時は、60人と言っていたので、すでに人員を拡充しているのかもしれません。
今回の訪問で、Robocup Singaporeに出展し、その場でコンテストを開催しているという話は初めて聞きました。ツアーに一緒に参加したエンジニアの今さんは、「Robocupの競技になることはすごいことだ」と感心していました。6月に日本で、そして12月にバンコクでもDobotを利用したコンテストを開催するそうです。
Robocup Singaporeへのスポンサーシップへの感謝状
プロトタイプ。サイズもずいぶん大きかったです。
実際に動かしてもらいながら見学。ここではペンでの筆記の実演。
3.Makeblock~教育用ロボットのパイオニア、すでにスタートアップを卒業した?
Makeblockを訪問。展示室で、大まかな製品の概要を見るにとどまったので、事業のコンセプト、ポジショニングや、マーケティング(コミュニティづくり)について話を聞きたかったのですが、今回はそこまでいけませんでした。印象としては、応対を見ていると、スタートアップの雰囲気というよりも企業としてのマネージメントが固くできあがりつつあるような気がしました。
Makeblockを使った獅子舞のセット。なかなか味のある演奏でした。
こういった教材まで作っているのは知りませんでした。
4.柴火創客(Chaihuo)~メイカーズムーブメントの火付け役は思想を語る
元KONKAの工場で、いまはおしゃれゾーンと化しているOCTにある柴火創客。おそらく中国で一番著名なメイカースペースと言っても良いでしょう。
バイオレットさんによるプレゼン。MakeとShareから始まるあたりがほかの深圳のメイカーズスペースと大きく異なると感じました(SegMakerなどでは産業の話から始まります)。
科学とアート、専門家と一般大衆、これらをつなぐ存在であり、「他とは違うアイデアを現実の物とする人、それがMaker」と位置づけています。産業化を第一に考える深圳において、特異なアプローチ・思想が如実に現れています。
バイオレットさんがBritish Councilと深圳市国際交流合作基金の共同プロジェクト“Hello Shenzhen” programでイギリスに2週間いった経験をシェアしてくれました。3都市を訪問し、20のスタートアップに会い、11のメイカースペースや組織を訪問したとのこと。
そこからバイオレットさんが感じたことは、深圳のメイカーズムーブメントに比べて、イギリスでは、「社会へのインパクト」を重視し、また、より大衆にむけて発信しているということでした。例えば紹介していたMETTLEという会社は、視覚障害に対してイヤホンで障害物を告知するという製品でした。また、単一の人の製品でも、イギリスでは椅子だったり、環境センサーだったりと、様々なものを作っている点にも驚いたそうです。深圳ではアーティストはアーティスト、エンジニアはエンジニア、となっており、コミュニティが重なっていないことを強く感じたそうで、これが目下開設準備中のXfactoryの狙いになっているようです(三日目に訪問しました)。
三日目に続く。
「深圳在外研究メモ No.5 ニコ技深圳観察会 (2017年4月)二日目訪問先感想編~Trouble Maker提携工場, Dobot, Makeblock, and 柴火創客」への1件のフィードバック
コメントは受け付けていません。