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深圳在外研究メモ No.3 ニコ技深圳観察会 (2017年4月)第一日目訪問先感想編~Trouble Maker, HAX, and Jenesis

前回に続きニコ技深圳観察会の感想を書きます。スケジュールはこちらに掲載されてある通りです。

1日目の概要:清明節なので、中国では休日でした。このため、訪問したTrouble Maker(外国人向けメイカースペース)、HAX(ハードウェアアクセラレーター)、Jenesis(主に日本市場向けのEMS)のいずれも外資系。外国人として「新しい深圳」にどのように関わっていくことが可能なのか、その共通と多様性を理解するのに最適な日となりました。結論を先取りすると、深圳のサプライチェーンと外国市場をつなげるという共通点と、お金の流れの面でのバラエティが、1日でよく理解できました

1.Trouble Maker~開放的メイカーズスペース

一か所目のTrouble MakerのHenkさんは華強北にかなり開放的なメイカースペースを開設している方です。外国から来たエンジニアやプロジェクトチームを2~3か月の短期から受け入れて、プロトタイピング、量産のサポートすることに情熱を持っているようでした。価格はデスク一つの料金は月1200元から。ビジネスのスキームとしては、メイカースペースの経営で、韓国やオーストラリアにもスペースを開設するべく準備しているとのことでした。様々なプロジェクトに関わっているようで、話に出てきた「Kickstarterで製品が発送されなかった場合の保険サービス」という事業はあると助かるなと思ました。

印象的だった発言は次のような発言です。

 もともとLED関係の仕事で中国には来ていたので、外国から来たチームにアドバイスをすることも多かった。でも一人ではいくら頑張ってもできることが限られているので、ここにプラットフォームを作って、サポートする体制を整えることにした。私もガジェットは大好きで、この場所から製品化されたものもあるが、今後は、環境、健康、医療いった社会や人々の課題を解決するような物を作ることをサポートしたい。パーキンソン病患者向けの、ジンバル付きのスプーンは今のところ試験段階だが、この種のプロジェクトを大事にしたい。

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説明をするHenkさん

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若いエンジニアをインターンとして受け入れるための部屋。エンジニアには無料で場所を提供するものの、できれば入居者の様々な課題にこたえてほしいと依頼しているとのこと。このあたりのスキームも良い意味での緩さが感じられた。

2.HAX~厳選したプロジェクトに出資し、場所とアドバイスを提供

二か所目、HAX。すでにものすごく有名な世界でトップクラスのハードウェアアクセラレーターなわけですが、印象的だったのは説明してくれた共同創業者のベンジャミンさんがオフィスと工房を軽く見せてくれた時に言ったことでした。

 ご覧のとおり、PCが並んでいる普通のオフィスとそして工房があるだけだよ。正直、工房もそんなに拡充するつもりはないね。だって外に工場がいくらでもあるからね。だからここがほかの場所と違うのは、まず人だよ。応募者のなかから徹底的に人を厳選しているから、人の質が全く違う。ほかの政府系のアクセラレーターがやろうとしても、シリコンバレーから応募者がくることはないだろう?あともう一つは、事業化を進めるうえでのアドバイスのノウハウがあることだね。スタートアップが直面する課題に対して、その段階ごとに必要なアドバイスを、フルタイムのサポート役がついてアドバイスをしている。だからHAXが他と違うのは、人の質、そしてノウハウ、この二つだよ。

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ロールモデルとして、「自分でR&D、ここ深圳でプロトタイピングと量産、米国で販売」モデルを紹介するベンジャミンさん。

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事業の各段階でのアドバイスをできる点を強調していました。

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Fujimotoさんのチームも来てくれてお話していただきました。

3.Jenesis~主に日本市場向けの受託生産

三か所目、Jenesis。藤岡さんのお話を伺うのは3回目だったのですが、今回もたくさんの学びがありました。特に興味深かったのは、IoT製品でスタートアップビジネスを始める際に注意すべきことで、要約すると、次のような内容でした。

 私(藤岡)の理解では、スタートアップビジネスにおけるIoTのコツは、デバイス側をシンプルにする、ということだ。資金が限られており、事業化までの時間を短縮することが求められているので、ローコストでよりスピディーに事を進めるための処方箋を考える必要がある。

まずデバイス側に高機能を求めるとコストが高くなってしまうので、なるべくアプリ側で価値をつけていくことが大事になってくる。デジタルサイネージの製品の場合、現在従業員が手動でDVDとかをながして広告しているかもしれない。ここでこちらの提案としては、店員に依存されないコンテンツの一括管理、マックアドレスにつなげると「どこにあって、なにを流すのか」コントロールできるようなソリューションを提案することだ。デバイス側は安いアンドロイドのタブレットを使って、サーバーで一括管理するのがお勧めで、通信もできればコストのかからないブルートゥースでやりたい。その次がWifi、そして最後にSIMカードとなる。ストレージをデバイス側につけることもできるが、SDカードは高くつくので、これも極力クラウドでやったほうが良い。

最短でものを作りたいのであれば、3D CADデータ(外装データ)、プリント基板のガーバーファイル(基盤配線データのことで、高須さん曰く、メイカーフェアーに出展しているような人はだいたい作れる)、PCBAのBOM(Bill of Material。高須さんの解説では「このマイコン、この抵抗、この銅線、と指定しているリストで、ここまで自分のチームでできないと厳しい」)。この三つがあればだいたい60日で量産できる。

IoT製品を実際に作るときに、具体的にどういったアプローチが現実的かという話は聞いたことがなかったので、この藤岡さんの「軽デバイス、重アプリ」路線は大変勉強になりました。

さらに議論は深まります。藤岡さんにとっては1万台オーバーのような端末を受注している中で、同じく手間がかかり、しかしロットの小さなスタートアップの案件をなぜ受注していているのか、という点です。新しいものを作る事が、現場ではこういった「思い」によっても支えられていることがわかります。

 基本的にはスタートアップの案件は、申し訳ないが繁忙期の年末はお断りしていて、いまのような時期にやっている。そのうえで、「人」を見ている。正直、500-600万円のロットの仕事が多いが、その人にいいアイデアがあって、信頼できればやってみよう、と思う。「クラウドファンディングでお金集めちゃった」系の人も多く、若干勘違いしているのではと思うことも少なくない。そこはやはり人として信頼できなければ、こちらからお断りしている。だから、スタートアップの案件については、ボリュームだけを見ているわけではない。

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後半、藤岡さんには不良品率の管理体制の差を詳しく教えていただきました。製品の「選別」についても多くをご教示いただきました。

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清明節でお休みでしたが、わざわざ空けていただいて、ラインを見せていただきました。

4.一日目コメント

三か所を見ると、①いずれも外国人としてビジネスをしていて、②深圳・珠江デルタのサプライチェーンを活用している、ここに共通点があったと言えるでしょう。それぞれ深圳・珠江デルタのサプライチェーンを活用して、外国市場につなげている、という共通点があるわけです。

同時に細かく見れば、事業形態の差も明らかです。その一つはお金の流れです。高須さんの整理では、「HAXは世界のどこにもないものを作るところ」です。HAXは厳選したスタートアップにお金を出資する側です。HAXがプロジェクトを厳選しているに対して、Trouble Makerは極めてオープンな場所で、スタートアップまたはメイカーからお金をとって場所を提供しているわけで、サービス業に近い印象です。全く逆のアプローチと言えます。そしてJenesisはさらにその先の受託生産なので、当然ながらスタートアップも含めて、プロダクト単位で受注しているわけです。そして量産寄りの端末製造も引き受けています。

このように観察会の1日目では、深圳のサプライチェーンと外国市場をつなげるという共通点と、お金の流れでのバラエティが1日でよく理解できました。ハードウェアを作るうえで必要となる部品が揃う深圳を拠点として、多様な出身地、経歴の方がそれぞれのアプローチで、この地を活用しているわけです。1980年代の改革開放直後から、この地域には外国企業が進出してきたわけですが、この時期には「製造のノウハウも設備も部品・部材も基本はすべて持ち込んで生産」でした。極論、外国人が、製造過程をほぼ全般的にコントロールし、指導ていたわけです。これが今日では、HAXを例にとると、「製品コンセプト、設計、回路図、部材リストのたたき台(BOM)まではこちらでやるが、具体的な製造過程については現地工場(外資企業の工場も含む)のほうが詳しい。生産のプロセスにも深くかかわるが、基本は設計にそって現地工場に作ってもらう」、という構造へ変化しているわけです。一日目に見た3か所のアプローチから翻って見ると、深圳・珠江デルタのサプライチェーンの意味を感じることができます。

深圳にきて11日が経過しましたが、インプットの量が尋常じゃなく、アウトプットが間に合わないので、次回は2~3日目をまとめて書きます。(実際昨日と今日はCITEという巨大な展示会を見ました)

※関連サイト

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