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中国のベンチャー投資、2016年は意外に「冬の時代」だった?清科集団データから見る現状

中国のベンチャー投資が急増しているというニュースは日経新聞はじめ、かなり日本でも認識されてきているように感じます。すこし頼まれたこともあり、中国のベンチャーキャピタル(VC)、プライベートエクイティ(PE)関連のデータを提供している清科集団の公開情報をもとに少し調べてみました。日本語で読めるものがあまりないので、せっかくなのでメモとして残しておきます。

下記の表は同集団が公表している2016年の主要なベンチャーキャピタルのランキングです。ランキングは金額ベースというよりも、運用実績などを含めた総合的な評価となっているようです。金額的にはVCに区分されているところが大きく、3位にランクインしている深圳市創新投資集団の運用額は2000億元、3.2兆円程度とされています。同社は先日のNHK BSの特集でも登場した中国の老舗のベンチャーキャピタルで、1999年に深圳市政府によって設立され、これまでに699社に投資、119社が上場、このほかにもExitを果たした企業が多数あるそうです。このほかにSequoia Chinaは、シリコンバレーのSequoiaが2005年に設立したVCで、24億ドルと40億元を運用しているとの情報があります。ドローン企業のパイオニア、DJIもSequoiaから出資を受けているのですが、HP情報ではどうもこのSequoia Chinaからの出資のようです。ここにはランクインしていませんが、別サイトのランキングですと、日系のソフトバンクキャピタル中国が上位に入っていました。最終的にはいくつかのデータソースからアプローチするのが良さそうですね。

中国の主要VC・PEリスト(清科集団発表, 2016年データ)
ベンチャーキャピタル

(VC)

プライベート・エクイティ

(PE)

「早期投資」
(エンジェル投資)
1 IDG資本(IDG Capital) 鼎晖投资基金管理公司 北京真格天成投资管理有限公司
2 紅杉資本中国基金(Sequoia China) 平安资本有限责任公司 北京创新工场投资中心(有限合伙)
3 深圳市创新投资集团有限公司(Shenzhen Capital) 昆吾九鼎投资管理有限公司 上海阿米巴投资管理有限公司
4 江苏毅达股权投资基金管理有限公司 中国光大控股投资管理有限公司 险峰长青
5 德同资本管理有限公司 腾讯投资(Tencent Capital) 英诺融科(北京)投资管理有限公司
6 达晨创投 建银国际 北京联想之星创业投资有限公司
7 深圳市东方富海投资管理股份有限公司 硅谷天堂资产管理集团股份有限公司 九合摩宝投资管理(北京)有限公司
8 深圳市基石资产管理有限公司 复星资本 深圳市德迅投资有限公司
9 苏州元禾控股股份有限公司 弘毅投资 隆领投资股份有限公司
10 君联资本管理股份有限公司 高瓴资本管理有限公司 宁波梅花天使投资管理有限公司
出所:清科集団「私募通」HP(http://www.pedata.cn/top/2016/index.html)より。

投資額の推移についてはデータソースによって大きな差があるようです。清科集団のデータでは、2015年から2016年にかけては投資額はほぼ1300億元(約2兆円)規模で、微増に留まりました。過去5年間で投資額は倍増しているという事実は変わりませんが、とくに昨年の後半以降にはVCがより利益率とExitを重視するようになったとされ、現地メディアでは「ベンチャーにとって冬の時代だ」という声も報道されています。これだけ金額的に伸びていればいくらなんでも「冬」は言い過ぎのような気もしますが、オペレーションで資金を取り崩していくベンチャーにとっては新規資金の獲得が難しくなったことの影響は大きいのかもしれません。KPMGのデータでは中国のベンチャー投資は3.5兆円で最高額を更新という報道もあるので、この辺りの差が何によって生じているかは、検討が必要そうです。

中国におけるベンチャー投資額の推移(投資額左軸、億元;投資件数右軸、件)

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出所:清科集団データ(http://free.pedata.cn/1440998436939475.html)より。

 現地報道で指摘されるもう一つの傾向は国有資金のVC/PE市場への流入です。下記のグラフは国有系「創業投資ファンド」の数を示したものですが、2015年以降に設立が急増しています。これらの政府系ファンドは直接ベンチャー企業への出資を行わず、他のVC/PEへの出資を通して間接的にベンチャー企業に資金を提供するという仕組みになっています。地方政府系VCや民間・外資ベースのVCは、典型的にはインターネット企業や製造業企業を中心に出資し、IPOや新三板企業としてExitするというパターンで新規産業を育成してきたと言えそうですが、これらの「国有系VC」の登場がどのような影響をもたらすのか、ただのバブルに終わるのか、ベンチャー企業の成長に寄与するのか、今後検討が必要です。

国有系ベンチャー投資ファンドの設立と退出件数

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出所:清科集団「私募通」HP(http://www.pedata.cn/)より。

 また、同じデータで、中国各地主要都市におけるファンド、上場企業、「新三板」企業(店頭登録銘柄)の立地も見ることができ、興味深いです。この機能は清科集団データHPからどなたでも操作できるので、気になった地域があればぜひチェックしてみてください。下記では比較的注目を集めている、北京、上海、深圳の場合です(画質が落ちてしまいすいません…)。

北京市の場合、真ん中の空白部分が故宮博物院と天安門広場で、その東西に数多くのファンドが立地しています。これに対して、紺色の「新三版」企業は主に北西の大学街の周辺、いわゆる中関村地区に数が多く、このほかに南西の「本部基地」団地の辺りにも多くの企業が集中していることがわかります。

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次に上海市の場合、通称「森ビル」の上海環球金融中心が建つ浦東金融街から、西へ、目抜き通りの延安東路・西路沿いに多くのファンドが立地している一方で、投資先の企業はむしろ郊外に多く、とくに漕河涇開発区の辺りにかなり集まっているようです。この近くの虹梅路には日本人学校もあり、日本人が多く住む地域だったと記憶していますが、そのすぐ近くに新興企業団地ができているようです。

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そして本ブログでもたびたび注目している深圳市の場合、東側の香港寄りの地域、福田から羅湖にかけてファンドや上場企業(赤色)が多い一方で、西側の南山区、深圳大学周辺に紺色の新三板企業が多く立地しています。実際、この南山区エリアにはドローン最大手のDJIも本社を構えるなど、ハイテク企業の一大集積地となっています。こうしてデータで確認するとなんとなくわかっていたことが確認できたり、知らない集積エリアが発見できたりと、大変興味深いですね。

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実際に深圳の場合、東の福田エリアには金融街があるのですが、この辺りには下のような「金融投資カフェ」があったりします。普通にスタバよりちょっと安いくらいの金額でコーヒーが飲め、食事もしっかりでるのですが、店内にはピッチスペースがあり、また会議室もあります。平日の午後に行ったのですが、普通に会議室ではベンチャーキャピタリストが集まって投資案件を議論していました。

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深圳でも最も急ピッチで開発が進んでいるエリアの一つが深圳湾エリアで、写真はTencentの新社屋です。数千名が入るようです。この周辺にも多くの投資カフェ、メイカーカフェが並んでおり、その一つ、京東(JD)が運営するインキュベーションカフェに行ったときは、そこで事業構想の講評会が開催されていました。社内の会議のようでしたが、セミオープンのような感じでやっていて、驚きました。
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結局は最後はVC/PEを含めて、いいアイデア、いいプロトタイプ、やる気のある企業家に融資・出資し、アドバイスし、育てていく「エコシステム」があるだろう、それが大事なのだろうと改めて感じます。中国のベンチャー投資については、まだまだ不明なことが多いので、徐々に調べていこうと思っています。

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