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朝にはKICKSTARTERに夢を見、暮れには山寨に死す

Quartzの記事”Your brilliant Kickstarter idea could be on sale in China before you’ve even finished funding it“、そしてabcxyzさんの記事クラウドファンディングで起こっている闇の戦い。資金調達前のアイデアを製品化、販売する中国の製造会社たち」などでにわかに話題の、KICKSTARTERに公開されたプロトタイプが、量産化前にAliExpressで販売されてしまうという件。中国の記事では、こうした事例を「山寨死(Shanzhaisi)」と表現していました。深圳を中心に形成された山寨産業(ゲリラ産業)の、生き馬の目を抜くようなコピー能力が、Eコマースのもとでグローバルに、誰もが見えるようになってきた事例、と感じます。

クラウドファンディングの仕組みについて、自分は詳しくないのですが、KICKSTARTERにプロトタイプを公開する場合、特許などでは守られていないというケースが多いんでしょうかね。そうすると、デザインや機能が比較的シンプルなら、平気でコピーされてしまうということになりかねません。

この現象の背景にあるのは、なんといっても、量産化のノウハウの差でしょう。欧米のメイカーズ/スタートアップがファンドレイズを成功させてから、量産化工場を探して、いろいろ試して、とやっているうちに、深圳ではより短期間でできてしまうわけです。これはまさに携帯電話産業の事例で言われていたことです。

「山寨」産業、これは山賊産業とか、ゲリラ産業などと訳されていますが、現地での聞き取りやった経験からすると、単なる「コピーキャット」で済ませることができない、より大きな生産システムや、現地の業界関係者の態度・雰囲気のようなものもあると思います。ある企業家は、「山寨は精神なんだ」と語ってくれました。ハッカー精神というような感じかもしれません。

山寨の定義としては、英語版Wikipediaに現れる”Shanzhaiism (山寨主義)”の解説が秀逸だと思います。

Shanzhaiism is a philosophical term denoting a Chinese style of innovation with a peasant mind-set. (山寨主義とは、農民的発想に基づく中国流のイノベーションを表す思想的用語である)

peasant mind-setをどう訳すか、難しいところですが、この定義を作った方の言いたいことは確かにわかります。深圳の華強北の明通市場とか、あのあたりを歩いてみると、「農村的電子街」というか、「農村闇市的電子街」の雰囲気が充満しています。実際、現場でビジネスをしている方々も地方から来ている方が多いと思います。

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華強北ゲリラ携帯ビルの雰囲気(2015年9月撮影)

クリスアンダーソンの『メイカーズ』を今、再読しているのですが、改めてとても先見的な本だと感じます。ただ、議論のベースにあるのが、欧米、とくに米国のカウンターカルチャーに根差すハッカー的世界であるということは改めて感じますし、ある意味で、哲学的というか、ポストモダンというか、シェアすることが「美徳」であると考えていると思います。それに対して、中国では零細な企業家が激しく競争している世界で、そこがエレクトロニクスハードウェアのモノづくりの中心地となっています。

前者のクールな”Makers mindset”と、後者のどろどろの”Shanzhaiism”の間には、モジュール部品の活用など、共通点もあると思いますが、思想的には乖離がある。こう感じています。同時に、アメリカ西海岸の郊外のMakers/Startupのメンタリティと、中国農村に根差すようなShanzhaiメンタリティ、これが2010年代に出会い、意気投合し、融合して、IoT製品を作り出している。こう感じています。

関連記事:朝にはKICKSTARTERに夢を見、暮れには山寨に死す, No.2

 

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