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“What’s special about Shenzhen?” session at Keio SFC, 30th Oct 2016

English version is here.

慶大のSFCキャンパスにて開催された現代中国学会にて、企画セッション「中国イノベーションの震源地・深圳」が組まれ、報告してまいりました。寒空のSFC。IMG_20161030_113601.jpg1.丸川先生ご報告

まず第一報告では丸川知雄先生が、セッション全体の問題意識を報告しましたが、そのタイトルは「深圳のなにが「特別」か?(What is ‘special’ about Shenzhen?)」でした。基本的にこの質問が、セッション全体を貫くリサーチクエッションになっていましたね。かいつまんで報告の要点を記します。

1) 深圳は大学教員数は極端に少ないのに、発明特許の出願数が著しく多く、中国国内でも「はずれ値」になっている。中国の各地の大学教員数と特許数の相関関係から導き出される値を理論値とすると、深圳市は理論値の46倍の特許を生み出しており、これは民間企業の研究者によっているということになる。

2) 深圳の特許数の伸び率を見ると、1997年に伸び率に大きな変化が観察される。1997年が一つの画期だったのではないか。

3) 1992年に深圳市に招かれた中国社会科学院の劉国光らの提言書が、深圳市の第9期五か年計画(1996-2000年)に大幅に採択されており、内容を見ると、ハイテク産業振興など、とても先見の明あり

4)Huaweiの従業員も苦労しながら「暫居証」を得て、徐々に政策的サポートを得るようになった。北京と上海と比べても、深圳の特別な条件として、暫住証の発行を挙げられるのではないか。相対的にみて、域外の技術者に寛容、開放的であったことが重要。

 

2.木村さんご報告

第二報告では、木村公一朗さんが、「スタートアップの増加と中国経済の変化―起業を通じた「創新」と「走出去」―」と題して報告しました。

1)  これまで海外市場で活躍する企業にとくに注目してきた。例えばHuawei, ZTE, Lenovo, Haier, Mideaなど。しかし、近年スタートアップの新規企業も成長著しい。これをどう考えればよいか検討が必要。

2) SZOIL, SEEEDなど、スタートアップの成長がみられるが、インターネット技術の普及、米国ベイエリアからの発注の存在、スマホ/タブレットの普及など、深圳特有の条件というよりも、むしろグローバルな文脈のなかで見ていくことが必要。

3) オープンソースのものづくりの普及、クラウドファンディングの普及、スタートアップを支援する会社の登場など、深圳はこの波にうまく乗っているという印象。模倣も多発しているが、HAXによれば、複数の機能を組み合わせたり、ユーザーとのコミュニティをつくることで容易にパクられないようにしている。でも先日のMaker Fair ShenzhenにはMakeblockのパクリがたくさん並んでいた。

 

3.伊藤報告

第三報告として私が、「デジタルドラゴンヘッド・深圳―無人航空機(ドローン)産業の事例からの検討」と題して報告しました。要点は下記の通りです。

1) ドローンは「空飛ぶスマホ」と俗称されるほど、部品がスマホと重なる。中国は2015年に4.5億台のスマホを作っているので、中国がドローンの産地となるのはある意味当然。興味深いのは、単なる産地ではなくて、中国からパイオニア企業DJIが登場したこと。つまり「新興国から新興産業がうまれてきた」という点。このメカニズムは分析必要。

2) メカニズムの背後には、DJIがフライトコントローラーの内製をしながら、珠江デルタのサプライチェーンを活用したことがあった。裾野に基盤部品産業があるので、新しい新興産業・製品にも対応が容易に可能。なおかつDJIのフランク・ワンだけでなく、深圳の若手企業家は、基本的に80年代生まれで、トップ理工系大学を卒業した人たちがたくさん。だから、深圳にとっても、2000年代後半にもう一つの重要な画期があった。

3) DJIは先進国企業を模倣するような「キャッチアップ」もしていないし、また新興国のミドルエンド市場むけに中低価格品を売るという「キャッチダウン」もしていないし、またいわゆるモジュール寄せ集め説でも説明できない(核心部品フライトコントローラーを内製)。とても興味深いパターンである。ただし、企業の登記情報を見ると、DJIは香港からの100%投資企業で、外資企業扱いになる。外資投資への規制の通達を見ると、ドローンの開発製造には合弁で、中国側51%でなければならないと書かれているので、この点はミステリー。

4) 特許の数で言えば、北京のほうが多いわけで、深圳の特徴はやはり電子・IT産業のハブとなっている点に求めるべきでは。個人的には「デジタルドラゴンヘッド・深圳」と呼びたい。

 

4.議論

と、ここまで3人が20分ずつ報告して、議論のセッションに。ここから大いに盛り上がりました。重要な質問をいくつか挙げると下記の通りです。

1) 深圳にはMajors(Huawei, ZTE, Tencent等を想定)、Shanzhai(ゲリラの世界)の二つの世界があったのは知っていたが、今回のセッションでここにMakers/Startupという、もう一つの世界があったことが分かった。ここで問題になるのは3つの世界の間の関係。Shanzhaiから、Makers/Startupにはどういった経路でレベルアップし、またMakers/StartupからMajorsにはレベルアップできるのか?(立命館大学中川先生)

さすがは電子産業専門の中川先生、このコメントはかなり刺激的でした。私伊藤の見解としては、DJIは2006年の創業時はまさに従業員数名でフライトコントローラー(シングルローター向け)を開発販売していたので、まさにスタートアップだったのが、10年で企業価値10億ドルを超えて「ユニコーン」になった事例なので、上の区分で言えば、Makers/StartupからMajorsへの移行に成功した事例だと思います。スマホで世界的に成功しているVivoやOppoの経路を整理することも必要かもしれません。ShanzhaiからStartupはたくさんあるんじゃないでしょうか?

もう一つ指摘できるのは、上の3つの世界以外に存在する巨大な世界です。それは外資中心の加工貿易/OEMの世界です。これはどうもまだまだ存在するらしいです。この世界が2008年のリーマンショックによって大打撃を受けた。これがMakers/Startupの興隆の裏にあったストーリーだと考えています。深圳のきれいなコワーキングスペースとか、メイカーズスペースになっているところも、もともと工場だったわけで、その切り替えのタイミングも大事だったと思います。

他にも興味深い質問がたくさん出ました。

2) キャッチアップもキャッチダウンもしないDJIは、中国企業のなかでは例外的存在では?

3) リチャードフロリダが指摘する、tolerance、寛容さが深圳にも認められるか?

4)深圳は北京から離れているから技術開発の環境がいいのでは?

5) 人工都市だからこそ、既得権益がないのでは?

6) 深圳の変化については、画期というよりも、より漸進的・段階的な変化が生じたのでは?

7) 逆に、イノベーティブな国有企業というのはあるのか?

8) 日本はなぜドローンでまた苦戦しているのか?

9) 深圳の発展が、どう中国の発展につながるのか?

10) 深圳の成長、人口移動、人口の増加によって説明できるのでは?

11) これまで中関村、温州、義烏など事例研究でそれぞれ特殊要因が指摘されてきたが、深圳の場合にはより普遍的な要因やロジックを重視すべきでは。とくに市場メカニズムの機能、そして政府の干渉の有無、この2点がポイントでは?

5.メモ

このセッション、相当面白かったです。特許データ、工業データに加えて、企業の事例からも検討しましたが、なにより議論がかなり盛り上がったのが良かったですね。

深圳は、どの研究者も一度は通ったことのある場所のはずで、色々な記憶や情報をそれぞれの方がお持ちなので、こうやって議論することでかなり整理できました。とくに3~4つの世界の間のインタラクションという形で、深圳を整理していくのは有効な視点だと思いました。コメンテーター中川先生に感謝!

とくに論点となったのは、国家と市場の関係、構造転換のタイミング、そして普遍的要因と特殊要因・制度、でしょうか。丸川先生が指摘されていた地域で生じるPositive feedbackについては、今月、XinchejianのDavid Liさんから聞いた話が面白かったです。彼曰く、デスクトップPCを生産し始めた時代に、当時は来料加工メインだったので、小口の注文を外資企業が話を断っていたが、それに目を付けた中国人経営幹部がスピンアウトして、現地に民営企業の「裾野」が生まれ始めた、ということです。これがMP3/MP4産業、ノキアケータイ産業、スマートフォン産業につながったという説明でした。来料加工の外に、自生的なサプライチェーンがうまれたのはいつなのか、という点も大事かもしれません。

ところで、高須さんの下記の本は木村さんも私も当然参照していますし、このテーマを考える上ではほぼ必読の書なのでは。中川先生も買ってました!

[高須 正和]のメイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (OnDeck Books(NextPublishing))

好評だったので、どうもまたどこからこのメンバーで報告することになりそうです。楽しみ楽しみ。ひとまずのメモまで。

IMG_20161030_113933.jpg

SFCの構内もうろつきましたが、ほぼFablaboな空間があって、軽く10台くらいの3Dプリンター置いてありましたね。授業で何か作ったりしているんですかね?とても興味あります。一回、平日に来てみようかなぁ。

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